【テレビ離れ?】アメリカ人のメディア視聴に関する最新情報

NHK放送文化研究所が実施した調査によると、日本ではいわゆる「テレビ離れ」が進んでおり、特に10代後半から20代の若年層の約7割が平日にテレビをほとんど見ないとされています。実際に29歳以下の単身男性の約40%がテレビを保有していないそうです。日本では若年層を中心に「テレビ離れ」のトレンドが定着しつつありますが、アメリカの事情はどうなっているのでしょうか。今回はアメリカ人のメディア視聴に関する最新情報をお伝えします。

アメリカ人は平均で1日に10から11時間をメディアに消費

オンライン調査会社のクリック・インテリジェンスによると、直近のアメリカ人は平均で1日に10から11時間を何らかのメディアに使っているそうです。なおメディアを視聴するプラットフォームとしては、従来型テレビおよびコネクテッドテレビ、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス、パソコンなどのデジタルプラットフォームなどが挙げられます。

「一般的なアメリカ人」が具体的にどのメディアプラットフォームを使ってどのメディアを視聴しているかについては、「マルチタスキング」(一度に複数のメディアを同時に視聴すること)や「フラグメンテーション」(利用実態の細分化)などにより、一概には言えないとしています。

一方で、利用者が多いメディアとしてはNetflix(アメリカ人の64%が利用)、YouTube(63%)、インスタグラム(58%)、TikTok(同56%)、Amazonプライムビデオ(同49%)、フェイスブック(同38%)などとなっています。

Netflixを視聴する視聴者

テレビ番組の視聴者数は激減

経済誌フォーブスは、直近のアメリカにおけるテレビ番組の視聴者数激減を報じています。ABCの朝の人気情報番組「グッドモーニング・アメリカ」の2024年~2025年シーズンの平均視聴者数は260万人で、10年前の2015年~2016年シーズンの490万人から46%も減少したそうです。CBSのライバル番組「CBSモーニングス」の2024年~2025年シーズンの平均視聴者数も194万人と、10年前の367万人から47%減少しています。

多くのアメリカ人が毎晩欠かさず視聴する夜の名物番組「ザ・トゥナイト・ショー」の平均視聴者数も130万人と、10年前の360万人から64%も減少しています。

3大ネットワークの看板ニュース番組も同様に視聴者数の減少に見舞われています。CBSの「CBSイブニング・ニュース」の平均視聴者数も10年で41%減少し、NBCの「NBCナイトリー・ニュース」の平均視聴者数も10年で30%減少しています。いずれもYouTubeなどでも配信していることを考慮したとしても、数字を大きく下げていることには間違いないでしょう。アメリカでも日本と同様に、もしかするとそれ以上に、深刻な「テレビ離れ」が起きていることは確実と言っていいでしょう。

アメリカの朝の人気情報番組「グッドモーニング・アメリカ」

「テレビ離れ」の原因は「コードカッティング」?

ところで、アメリカで起きている「テレビ離れ」の原因は、いわゆる「コードカッティング」であるとされています。コードカッティング(Cord-cutting)とは、地上波・衛星・ケーブルテレビなどの従来型のテレビの視聴から、NetflixやAmazonプライムビデオ、Rokuなどのインターネットストリーミングサービスへ乗り換える行為のことです。従来型のテレビの電源コードをハサミでバッサリ切って、コネクテッドテレビやスマートフォン・タブレットなどでのストリーミング配信に乗り換えるイメージです。

ある調査によると、アメリカの全世帯の46%がこれまでにコードカッティングを行い、ストリーミングサービスなどへ乗り換えたそうです。また、地上波・衛星・ケーブルテレビなどの従来型のテレビを今もなお継続して視聴している世帯は、全体の30%に留まったそうです。

コードカッティングは現在のアメリカ全体で進行しているトレンドであり、今後治まりそうにありません。これまで一般的だったテレビ受信機は、ごく近い将来に固定黒電話と同じような運命を辿ることになるのは間違いなさそうです。

従来型のテレビ受信機

コードカッティング2.0が進行中?

なお、現在のアメリカではコードカッティングに続いて、新たにコードカッティング2.0が進行中であると言われています。コードカッティング2.0とは、コードカットして従来型のテレビからストリーミングサービスなどへ乗り換えた人が、今度はストリーミングサービスの有料サブスクリプションを見直しするなどしてサービスを辞めたり別のサービスへ乗り換えたりするムーブメントのことです。

コードカッティング2.0における最大の乗り換え先はFASTと呼ばれるサービスです。FASTはFree Ad-Supported Streaming Televisionの略で、広告表示が標準の無料ストリーミングサービスのことです。具体的にはTubi、Pluto TV、Roku Channelなどが挙げられますが、無料という大きなインセンティブにつられて多くの人が有料ストリーミングサービスから乗り換えています。

一方、FASTへの乗り換えを防ぐべく、有料ストリーミングサービスの方も防戦体制を強化しています。Netflixはライブスポーツコンテンツやオリジナルコンテンツなどを強化し、コンテンツのパワーでFASTに対抗しようとしています。

アメリカのメディアは今、コードカッティング2.0を含めた大きな地殻変動のさなかにあります。各ソーシャルメディアも参戦し、混戦模様がしばらく続きそうですが、今後も動向に注目したいと思います。

執筆者

前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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