【2026年11月実施】アメリカ中間選挙の最新動静

本記事配信日から約5週間後、アメリカ中間選挙が実施されます。アメリカ下院議員(任期二年)定員の435名と、上院議員(任期六年)定員100名の三分の一を選出するとともに、一部の州の州知事選挙なども行われる大規模な国政選挙は、アメリカ政治の今後を決めるだけでなく、世界にも大きな影響を与える一大イベントです。選挙まで残り約5週間となった現時点での最新動静をお伝えします。

下院議員選挙は民主党有利

まず下院議員選挙ですが、おおかたの世論調査が民主党有利の数字を示しています。リアルクリアポリティクスの最新世論調査は、民主党が225議席から235議席を獲得し、下院議会におけるマジョリティを共和党から奪還する可能性が高いと示しています。一方の共和党は現在の議席数220議席から10議席程度を失い、210議席へ減少する可能性が高いとしています。

民主党は下院においてマジョリティを確保するためにあと3議席を獲得するだけでよく、有権者の投票マインドが民主党に傾いている傾向を鑑みるに、民主党による下院でのマジョリティ奪還はほぼ確実であると思われます。

中間選挙においては、伝統的に現職大統領の所属政党が議会選挙で不利になるのが一般的でしたが、今回もそのトレンドが踏襲されそうです。現在共和党は上下両院を押さえていますが、下院という牙城のひとつを失うことになるのは間違いなさそうです。

ワシントンDCにあるアメリカ議会議事堂

低迷するトランプ大統領の支持率の影響

下院議員選挙での共和党苦戦の最大の理由は、低迷するトランプ大統領の支持率です。中間選挙はアメリカ大統領の評価選挙(Referendum on the President)と呼ばれていて、現職大統領に対する有権者の評価を直接反映する選挙です。トランプ大統領の支持率は、ロイター・イプソスによる最新の世論調査では33%となっており、低迷を続けています。他の世論調査でも、CNN34%、YouGov35%、AP-NORC33%となっており、支持率低迷を裏付けています。

トランプ大統領の支持率低迷の最大の理由が、アメリカ国民の生活コスト上昇とトランプ政権の対応の不十分さです。トランプ大統領の生活コスト上昇対策への不支持率は71%に達しており、多くのアメリカ人が不満を表明しています。多くのアメリカ国民は、トランプ大統領が常時口にする「食料品の値上がりは間もなく終わるだろう」「ガソリン価格もあと数週間程度で値下がりに転じるだろう」といった発言を単なるリップサービスと見なしており、実効性が伴っているとは考えていません。

アメリカでは現在、家賃、食費、エネルギーコスト、健康保険や自動車保険などの保険料といった基本的な生活コストの値上がりが続いており、多くの国民が現政権の無策ぶりに号を煮やしています。現政権が中間選挙までに決定的に有効な対策を実施し、実際に生活コストの上昇に歯止めをかけることができなければ、共和党の下院議員選挙での敗北は避けられないでしょう。

支持者を前に演説するトランプ大統領

上院議員選挙は「五分五分」か?

一方の上院議員選挙においては、現時点では「五分五分」の見方が多いです。オンライン予想市場のKalshiによると、上院議員選挙において共和党有利52%、民主党有利48%とほぼ互角か、共和党やや有利の状況となっています。現時点での上院での議席数は共和党53議席、民主党47議席となっており、民主党がマジョリティを奪還するには4議席の「純増」が必要で、現状では実現がやや困難であると見られています。

しかし、民主党は前回の記事でご紹介したジェームズ・タラリコ氏地盤のテキサス州を始め、ノースカロライナ州、ジョージア州、メーン州などでも優勢が伝えられており、4議席の「純増」が全く不可能であるとは言い切れません。上院議員選挙でも、有権者の現職大統領に対する評価が直接影響することは確実であり、トランプ大統領の支持率低迷が続くか、またはさらに悪化した場合、上院での民主党勝利と言う一大ハプニングが起きる可能性が高まるかも知れません。

アメリカ上院のオフィシャルシール

共和党が上下両院で負けるとトランプ大統領の弾劾も

仮に共和党が上下両院で負けた場合、トランプ大統領がレームダック化することは確実です。トランプ大統領が伝家の宝刀としている「トランプ関税」も、法制化のために上下両院を通過させることが極めて困難になり、恒久的な運用はほぼ不可能になります。また、連邦予算案を通過させることも困難になり、議会通過のための玉虫色の対応を余儀なくされた予算案を上程せざるを得なくなるでしょう。

トランプ大統領にとってさらに恐ろしいのは、上下両院を民主党に握られることで、トランプ大領領に対する弾劾決議の可能性が現実のものとなることです。トランプ大統領を弾劾して罷免するためには上院議員の三分の二以上の賛成票が必要ですが、トランプ大統領の不人気ぶりが続いた場合、共和党からも相応の造反者が出てくる可能性が高まります。上下両院のマジョリティを確保した民主党の勢いに乗じようとする共和党議員が相乗りする可能性はゼロではありません。中間選挙の結果は、色々な意味でトランプ大統領の今後の運命を決めることになるのは間違いないようです。

執筆者

前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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