アメリカのUberドライバーは、一体いくらくらい稼いでいるのか?

アメリカでは現在、約300万人から500万人がUberドライバーの仕事をしており、年間9,300万人に対してライドシェアリングサービスを提供しています。アメリカ人の仕事として一般化したUberですが、実際にUberドライバーはいくらくらい稼いでいるのでしょうか?Uberで稼ぐポイントなども含めて現状をお伝えします。

アメリカ人の一般的な仕事となったUberドライバー

アメリカでUberの利用が進んでいます。改めて言及するまでもありませんが、Uberは2009年に、カナダのコンピュータープログラマーでスタンブルアポンの創業者ギャレット・キャンプと、アメリカの起業家トラヴィス・カラニックが共同で立ち上げたライドシェアリングプラットフォームです。

ある年の大みそかの夜、タクシーを借り切って車内でパーティーをしながら街中を走り回ろうという話で盛り上がった際、タクシーを借りるよりも一般人が運転する車を時間制でシェアさせてもらえればコストを下げることができるとキャンプが気付きました。キャンプのそのアイデアはやがて、スマートフォンを使って車の所有者と利用者をつなぐマッチングプラットフォームとして実現し、現在のUberになりました。

Uberは現在、市場シェア71%を持つ世界最大のライドシェアリングプラットフォームに成長しています。Uberは特に、ライドシェア希望者が多い都市部を中心に利用者を増やし、アメリカ人の新たな移動手段としての地位を固めつつあります。そして、Uberドライバーの仕事をする人の数も、Uber利用者の増加とともに増え続けています。Uberは、アメリカ人にとっての「稼ぐ手段」としても確立しつつあります。

増え続けるUberドライバー、ニューヨークではついに規制も

ところで、Uberドライバーとしてお金を稼ぐのは簡単です。Uberドライバーとして登録するには、有効な運転免許証と1年以上の運転歴があればOKです。車を持っていなくてもUberからレンタルすることもできますし、自動車保険もUberが提供するものを利用できます。

Uberドライバーの登録はUberのウェブサイトで行い、オンラインで個人情報などを登録します。登録が済むとドライバー専用のアプリをスマートフォンにインストールして稼働開始となります。ユーザーもスマートフォンにアプリをインストールし、ライドシェアのリクエストもスマートフォンで行います。ユーザーのアプリに利用可能なドライバーがGPS表示され、ユーザーが利用したいドライバーを指名します。ドライバーが受け取る報酬はUberが管理し、走行距離や稼働時間帯などに応じてドライバーに支払われます。

ところで、ニューヨークではUberドライバーに登録する人の数が増加し、市の中心部で慢性的な渋滞を起こすなど社会問題化しているそうです。業を煮やした市当局は、市内で営業できるUber車両の数を規制するなどの対応を始めているそうです。同様の動きは、Uberドライバーの数が増えているシカゴやサンフランシスコなどの他の都市でも始まる可能性があるそうです。

一般的なUberドライバーの収入は?

さて、気になるUberドライバーの収入ですが、一般的なUberドライバーは一体いくらくらい稼いでいるのでしょうか。ワシントンDCに拠点を置くシンクタンクのエコノミック・ポリシー研究所がまとめたところによると、一般的なUberドライバーがユーザーから受け取る平均金額は、一時間あたり24.77ドル(約3,220円)だそうです。それからUberが手数料として8.23ドルを徴収するので、Uberからドライバーへ支払われる金額は16.54ドル(約2,150円)となります。

時給2,150円であれば悪くないように見えますが、そのあとにカラクリがあります。Uberでは車両にかかる費用や保険料、ガソリン代などはドライバーもちです。よってそれらの費用も控除する必要があります。車両にかかる費用を一時間あたり4.78ドルとし、さらに社会保険料や健康保険料などの費用を控除すると、実質的な手取り額は一時間あたり9.21ドル(約1,197円)にまで下がります。それからガソリン代も支払うとなると、手取り額はさらに下がります。

なお、Uberは稼働時間によってレートを上げたり、評価の高いドライバーにインセンティブを払う仕組みなども提供しているので一概には言えません。上の数字はあくまでも「一般的なUberドライバーが稼ぐ額」です。Uberドライバーの中には、レートが上がる週末や夜間に集中的に仕事をしたり、プロ野球の試合やコンサートなどのイベントに合わせて稼働して大きく稼いでいる人も存在します。需要の見込める時間帯やオケージョンに合わせて稼働することが稼ぐポイントのようです。

Uber Eatsを兼業するケースも

アメリカ人の稼ぐ手段として利用が進むUberですが、都市部を中心にドライバー間の競争が激しくなってきているようです。本業のUberでの稼ぎが減少したドライバーの中には、飲食店の料理を配達するUber Eatsを兼業する人が少なくないそうです。Uber Eatsもまた、週末や夜間に注文が増えるので、上手にやればそれなりに稼ぐことができるようです。

いずれにせよ、お金を稼ぐ手段としてのUberが手軽に始められるからといって、楽に儲けられるということにはならないようです。Uberドライバーの中には、懇切丁寧なサービスを心がけ、ユーザーから高い評価を受けてリピーターを着実に増やしている人もいます。また、医療や介護施設などの利用者の送迎に特化し、収入を安定させている人もいます。

ところで、Uberドライバーを「副業」でやっている人は少なくありませんが、Uberドライバーを「副業」でやっている人が、Uberドライバーを「本業」でやっている人に勝つのは難しいかも知れません。Uberドライバーとして稼ぐには、他の職業と同様に、相応のスキルや経験、そして高い労働倫理が求められます。どの仕事をするにせよ、楽をして儲けることは難しいようです。

執筆者

前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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