アメリカの新型コロナウィルスパンデミックの現状

感染ペースが拡大しているアメリカ

アメリカで新型コロナウィルスの感染ペースが拡大しています。本記事執筆時点(2020年7月1日)でのアメリカの新型コロナウィルス感染者数は272万7853人に、死者数は13万122人にそれぞれ達しています。現地時間の6月29日の一日当たりの感染者数は4万5千人を記録し、パンデミック始まって以来最大の数字となっています。

トランプ政権のパンデミック対策タスクフォースを率いる感染症の権威アンソニー・ファウチ博士は、新型コロナウィルスの感染ペースが現状を維持した場合、年内の感染者数が現在の倍に達する可能性があると警告しています。

マイク・ペンス副大統領はホワイトハウスの定例記者会見で、アメリカの新型コロナウィルスのパンデミックはピークを越え、収束に向かいつつあるとしていますが、そうした強気の発言とは逆に、パンデミックは今後さらに悪化する兆しを見せ始めています。

経済再開した多くの州で感染が再拡大

気になるのは、パンデミックが収束しつつあるとして経済を再開した多くの州で感染が再拡大していることです。特にカリフォルニア州、テキサス州、アリゾナ州などで新規感染者数が史上最多を更新し、ロサンゼルス郡などの人口の多い地域で一部飲食店が再度営業禁止に追い込まれています。多くの専門家は、ロックダウンを解除し早々に経済再開に踏み切った州で人々が新型コロナウィルスに晒され、現在の感染再拡大に至ったと推測しています。

以下に主要な州の新型コロナウィルス感染状況です。

カリフォルニア州

6月29日に一日当たり新規感染者数が史上最多を記録した同州では、ガヴィン・ニューサム知事が即日でロサンゼルス郡、フレスノ郡、キングス郡、インペリアル郡などの7つの郡でバーの営業を禁止にしました。特にロサンゼルス郡の新規感染者数が多く、カリフォルニア州の新規感染者の三分の一がロサンゼルス郡の住人となっています。なお、アルコール類を提供するレストランなどの一般の飲食店は通常通り営業しています。

テキサス州

カリフォルニア州と同じく現地時間の先週に一日当たり新規感染者数が史上最多を記録したテキサス州は、グレッグ・アボット知事が直ちに州内のバーの営業を禁止にしました。また、飲食店の営業も定員を規制されるなど影響を受けています。テキサス州内の医療機関へは新規感染者が殺到し、テキサス州が当初想定していた医療キャパシティを超える事態になっています。

アリゾナ州

アメリカの新たなパンデミックの中心地になりつつあるアリゾナ州では、ダグ・デューシー知事が現地時間の先週月曜日に州内のバー、スポーツジム、映画館、ウォーターパークの営業を禁止する知事令を出しています。デューシー知事は、「アリゾナ州民は立派で責任ある態度をとり続けてきたが、今後よりアグレッシブな行動をとる必要がある。(新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために)今、それを行う」とコメントし、州民により強い対応をとることを促しています。

フロリダ州

感染拡大が収まらないフロリダ州でも、州内のパーにアルコール飲料の提供を禁止する州令が出されています(営業自体は禁止されておらず、テイクアウトでの販売は可能)。フロリダ州の新型コロナウィルス感染者数は15万2434人に達し、イリノイ州を抜いて全米第五位となっています。

Photo by: gotpap/STAR MAX/IPx 2020 3/16/20 Casinos world-wide continue to close and take precautions against the Coronavirus. (Las Vegas, Nevada)

ネバダ州

感染拡大が続くネバダ州では、スティーブ・シソラック知事がフェーズ2の期間を7月末まで延長する知事令を出しています。フェーズ2では、教会、ヘアサロン、バー、スポーツジムなどの定員が制限されています。また、ネバダ州では州民に外出時のマスク着用を義務付ける州令も出されています。

ワシントン州

アメリカで最初のパンデミックが始まったワシントン州では、ジェイ・インスレー知事がフェーズ3からフェーズ4への移行を遅らせる知事令を出しています。フェーズ3では、50名以上集まる集会の禁止や、飲食店や劇場の定員に制限などが課せられています。ワシントン州政府は、「州内における感染者数の増加や、その傾向が当面とどまる可能性を鑑み、現時点ではフェーズ4への移行は不可能であると判断する」との声明を発表しています。なお、フェーズ4はいかなる制限も課せられない最終フェーズです。

アメリカ経済の本格的な再活動はいつになるか

上記の通り、現在のアメリカでは半分以上の州で新型コロナウィルス感染が拡大または再拡大しており、収束からは極めて遠い状況にあります。ニューヨーク州やニュージャージー州などのパンデミックの当初の中心地は感染のピークを越え、経済活動も「コロナ前」の状況に戻りつつありますが、感染拡大地域からの旅行者へ14日間の自己隔離を求めるなど、影響は未だに残っています。

専門家の中には、現在の第一波が収束する前に第二波が始まる可能性を指摘する者もあり、今後も注意が必要です。アメリカ経済の本格的な再活動がいつになるかについてはわかりませんが、筆者の予想では、年内はまず無理だと思います。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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