「ザ・ラムジーショー」の相談者に見る、普通のアメリカ人の経済感覚

前回の記事で、保守系アメリカ人が絶賛する財務アドバイザーのデイヴィッド・ラムジー氏と彼がホストを務める「ザ・ラムジーショー」をご紹介しました。市井のアメリカ人がラムジー氏に財務アドバイスを求める「ザ・ラムジーショー」の人気は高く、YouTubeでの動画再生数も高止まりで推移しています。今回は、その「ザ・ラムジーショー」に実際に寄せられた相談を二つほどご紹介し、普通のアメリカ人の経済感覚をお伝えしたいと思います。

総額11万ドルのクレジットカード債務を抱えた中年男性の相談

多くのアメリカ人が直面している財務問題にクレジットカード債務があります。金融調査会社エクスペリアンレポートによると、2023年第3四半期末時点のアメリカ人一人当たりのクレジットカード債務残高は6501ドル(約97万5150円)で、アメリカ全体では総額1.13兆ドル(約169兆5000億円)の巨額に達します。当然ながら、毎月のクレジットカードの支払に苦しむ人が多く、中には最低返済額(Minimum payment)だけを支払って債務不履行を免れている人も少なくないようです。

ミズーリ州スプリングフィールドでハウスリフォーム業を営む51歳の男性は、事業の売上が落ち込んだ5年前からクレジットカードを恒常的に使うようになり、現在までに総額11万ドル(約1650万円)の債務残高を抱えるに至っています。事業はこれまでに持ち直しつつあるものの、売上の年商15万ドル(約2250万円)から経費を引くと利益がほとんど残らないそうです。保有資産は時価15万ドルの自宅で、それには銀行の抵当権11万ドル(約1650万円)が付いています。どうしたらいいかと言う男性の相談に対し、ラムジー氏は次のように答えます。

まず、本件では破産を申し立ててはいけない。破産すると自宅を失うからだ。自宅には多少なりとも資産価値があるので、破産によって債権者へ引き渡すのは得策ではない。それよりも、あなたの技術を活かしてハウスリフォーム業の売上を増やし、今後3年から5年かけてすべてのクレジットカード債務を返済すべきだ。債務残高が11万ドルであれば、3年で毎年4万ドル(約600万円)ずつ返済すればいい。5年では2万2千ドル(約330万円)だ。決して支払えない額ではないだろう。

返済中の3年間は、あなたにとっては毎日地獄のように働かざるを得ない時になるだろう。それでも、あなたはそれをしなければならない。私なら、自宅を失うくらいなら死ぬ気で働いてクレジットカード債務を返済する方を選ぶだろう。あなたは、自分の借金は自分で稼いで返さなければならない。

38万5千ドルの学生ローンを抱えた年収5万ドルの新卒女性の相談

多くのアメリカ人が直面している別の財務問題に学生ローンがあります。教育関連調査会社エデュケーション・データイニシアティブによると、2023年度末のアメリカの教育ローンの総債務残高は1.727兆ドル(約259兆円)の巨額に達し、1人当たり3万9981ドル(約599万7150円)の教育ローンを抱えています。当然ながら、教育ローンの支払に苦しむアメリカ人は多く、実際に支払いができなくなる人が後を絶ちません。

マサチューセッツ州ボストンで暮らす29歳の女性は、非営利団体で女性の社会進出支援の仕事をしています。大学院で精神医学を専攻し、臨床心理士の修士号を取得した彼女は総額38万5千ドル(約5775万円)もの巨額の教育ローン債務を負っています。一方で、彼女の年収は5万ドル(約725万円)しかなく、どうしたらいいかという相談です。その彼女の相談に対し、ラムジー氏は次のように答えます。

まず、5万ドルという現在の収入が安すぎる。7年と言う時間と38万5千ドルという巨額のコストをかけて取得した臨床心理士の資格に見合わせるには、最低でも6ケタ(10万ドル)以上の収入が必要だ。逆に言うと、38万5千ドルもの債務を負った人間は、年収5万ドル程度の安月給の仕事に就いてはならないのだ。

また、公的職務について教育ローン債務の支払いを免除してもらえる連邦救済制度への参加なども考えてはならない。連邦救済制度などというものは政権によって政策が変わる、恐ろしくあてにならないシロモノだからだ。自分で借りたお金は自分で稼いで返済するのが基本だ。だから、私があなただったら、膨大な時間とコストをかけて取得した臨床心理士の資格を最大限に活用して、出来る限りお金を稼ぐ方法を模索するだろう。

あてにならない政府の支援制度の申込みなどに時間を使わず、そんな暇があればお金になる仕事を探し続けなさい。ER(救急救命室)でアルバイトをするもよし、人材不足に悩む地方の病院で働くもよし。とにかく、苦労して取得した資格を最大限に現金化できる仕事を、可能であれば複数見つけ出して始めることが必要だ。

当たり前のことを当たり前にアドバイスへのノスタルジア

ラムジー氏のアドバイスは、数十年前の一般的なアメリカ人家庭においては当たり前になされていたアドバイスに聞こえます。クレジットカードは借金であり、出来る限り使うべきではない。教育ローンも借金であり、返済できる見込みが立たなければ借りるべきではない等々、昔であれば当たり前だった経済規範が、現在のアメリカではもはや当たり前ではなくなってきています。ラムジー氏の人気が改めて高まりつつあるのも、多くのアメリカ人の古き良き経済規範回帰を求めるノスタルジアが作用していると、筆者にはどうしても思えてならないのです。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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