保守系アメリカ人が絶賛する財務アドバイザー、デイヴィッド・ラムジーとは?

国民の分断と対立が進みつつある現在のアメリカで、保守系アメリカ人が注目、絶賛するある財務アドバイザーの人気が高まっています。各種の投資活動も実践しているデイヴィッド・ラムジー氏は、歯に衣着せぬストレートフォワードな物言いが視聴者の共感を誘い、ホストしている番組がテレビやYouTubeで大注目となっています。今回は、注目の財務アドバイザー、デイヴィッド・ラムジー氏をご紹介します。

人気沸騰中のトークショー「ザ・ラムジーショー」

アメリカを形成する文化のひとつに「トークショー」があります。「トークショー」とは、ホストがゲストを招いての特定トピックの会話を視聴者が楽しむショーのことで、アメリカでは古くからラジオを中心に数々のトークショーが放送されてきました。なお、アメリカでは、今でもラジオ文化が強く残っていて、日本以上に国民がラジオに親しみ、各種の番組に熱心に聴き入っています。

「トークショー」は、政治、経済、家庭、仕事、教育といった、様々なテーマのトピックを扱っています。その中でも近年改めて注目を集めているのが、財務アドバイザー、デイヴィッド・ラムジー氏がホストを務める「ザ・ラムジーショー」(The Ramsey Show)です。「ザ・ラムジーショー」の歴史は古く、1992年から放送されています。近年はネットラジオやYouTubeが普及し、同番組がラジオ以外でも放送されるようになり、若い世代を中心に再び人気に火が付きました。「ザ・ラムジーショー」は、「アメリカ人がもっともよく聴くラジオ番組トップ5」に選出されています。

経済的挫折を経て財務アドバイザーに

デイヴィッド・ラムジー氏は、1960年10月にテネシー州アンティオケに生まれました。幼少の頃よりビジネスに興味を持ち、18歳の時には独学で不動産取引免許を取得して不動産ビジネスを立上げています。テネシー大学ノックスヴィル校で財務学と不動産を専攻し、大学を卒業するまでに不動産投資で相当の資産を築いています。

ところが、26歳の時に投資した400万ドル(約6億円)相当の不動産物件を巡って金融機関とトラブルになり、借入金の返済を求められます。手持ちの現金をほとんど不動産投資に投じていたラムジー氏には返済するためのお金がなく、やむなく自己破産を申請、1988年に破綻してしまいます。

どん底の数年間を経て、ラムジー氏は所属している教会の教会員の若いカップルに財務アドバイスを与えたことをきっかけに財務アドバイザーの仕事を始めることを思いつき、ただちに財務コンサルティング会社「ランポ・グループ」を立ち上げます。1992年には初の著作「経済的平和」(Financial Peace)を出版し、財務アドバイザーとしての歩みを本格的に開始します。さらに同年にはナッシュビルのラジオ局WWTNの番組に出演したことをきっかけにラジオでの知名度が上がり、同年末までには「ザ・ラムジーショー」の先駆けとなるラジオ番組の放送が始まっています。その後「ザ・ラムジーショー」の人気はうなぎ登りで上がり続け、現在に至っています。

歯に衣着せぬ物言いが人気に

そんな「ザ・ラムジーショー」の人気の理由ですが、最大の理由はラムジー氏の「歯に衣着せぬ物言い」でしょう。アメリカではドナルド・トランプ氏の人気が依然として高いですが、その理由のひとつとして挙げられるのが、トランプ氏の本質を突いた発言、歯に衣着せぬ物言いであると言っていいでしょう。「アメリカを再び偉大な国にする」「不法移民は全員祖国へ送り返す」「対価が得られない軍事同盟には参与しない」等々、多くの保守系アメリカ人が常日頃感じていることを公衆の場で堂々で発言してくれる。トランプ氏の発言は、多くのアメリカ人の溜飲を下げているのです。

ラムジー氏も同様です。クレジットカードの機能と効用を完全に否定して「債務からの解放を導く財務アドバイザー」を自任するラムジー氏の主張はシンプルでストレートフォワードです。借金まみれなのに車をローンで買おうとしている相談者に対しては、「馬鹿なことはやめなさい。あなたはすでに経済破綻しているのですよ、車をローンで買うなんて言語道断だ」とコメントし、クレジットカードを10枚以上も保有し、毎月の返済に困窮している相談者に対しては、「クレジットカードの奴隷になるのはやめなさい。現金収入の範囲内で生活し、クレジットカードの利用をただちにストップしなさい」と、多くのアメリカ人があまりアドバイスしないような内容をずばずばとアドバイスする。ほとんど毒舌とも言える厳しい物言いですが、それがかえって多くの保守系アメリカ人の賛同を呼んでいるのです。

かつては当たり前だった価値観が異常になる時代?

ラムジー氏が人気を集めていることの背景には、こと経済的価値観においては、かつては当たり前だった価値観が異常になる時代をアメリカが迎えているという現実があるのかもしれません。かつてのアメリカでは、ベンジャミン・フランクリンのようなクラシカルな碩学が説く経済的規範が広くあまねく社会に広がっていました。クレジットカードは借金であり、可能な限り現金を使うべきだと、フランクリンならすべてのアメリカ国民に説いたことでしょう。それが、現在のアメリカでは、クレジットカードを限度額いっぱいまで使い切り、返済についてはできる範囲で行えばよしとする「新たな価値観」が跳躍し、広まりつつあるのです。ラムジー氏は、現代のアメリカにおいて、古典的経済価値観を延べ伝える伝道師の役割を担っていると言ってもいいかも知れません。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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