ヨーロッパで商品やサービスを販売するには(規制編)

前回に引き続き、「ヨーロッパで商品やサービスを販売するには」というテーマでお送りします。ヨーロッパは規制に関しては製品カテゴリによっては、世界で一番厳しい場合があります。今月はCEマーキングやUKCAマーキングなどお伝えします。

避けては通れないCEマーキング、UKCAマーキング

CEマーキングについてはこちらのコラムでもご紹介しましたが、弊社がよくお問い合わせをいただくテーマの一つです。EEA(欧州経済領域:EU加盟国、スイス、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)における法的要件を満たしていることの証明です。安全性や環境保護に関するEU指令にもとづくものであり、EEA内で販売する製品において貼付が義務付けられます。製造がEEA外のものも対象になります。もちろんCEマーキングの対象外の製品もたくさんありますが、販売する製品がCEマーキング貼付対象かどうかをまず確認する必要があります。また、製品によっては第三者認証期間による認定を受けなければなりません。さらに、EU指令に基づく国内法は国ごとに異なりますので、製品によっては特定の国については別規定がある場合もあります。

イギリスのEU離脱に伴い導入されたのがUKCAマーキングです。医療機器など一部の製品群に別規定があるものの、基本的にはイギリス版CEマーキングとお考えください。したがってEUおよびイギリスで上市される場合は、CEマーキングおよびUKCAマーキングの両方を並べて貼付することになるでしょう。現在CEマーキングのみ取得している製品についてはUKCAマーキングの取得が必要ですが、このEU離脱に伴う移行期間はもともと今年の12月末まででしたが、新型コロナウイルス流行の伴い1年延期となりました。また、EU加盟国のアイルランドと国境を接するイギリス領の北アイルランドについては、別規定もありますので注意が必要です。UKCAマーキングについてはこちらをご覧ください。

ヨーロッパで製品を販売するためにはさまざまな規制をクリアする必要がある
ヨーロッパで製品を販売するためにはさまざまな規制をクリアする必要がある

ヨーロッパへの食品輸出はかなり大変

ヨーロッパへの輸出でもっとも大変なのが食品です。高級日本食やスイーツ、お茶などをぜひ販売したいというお客様はたくさんいらっしゃいますが、EUはおそらく世界で一番食品に関する規制が厳しいです。仮にある調味料を輸出する場合、調味料の成分すべてがどの工場で製造されているのかをきちんと把握する必要があります。そして、その工場がEUの基準をクリアしたEU HACCP認定施設で製造されることが求められます。

さらに、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、本年4月より混合食品(動物および植物由来の原料の両方を用いた加工食品)のEUへの輸出規制が一段と厳しくなりました。これまで混合食品に含有される動物性加工済原料についてはEU認定施設で製造されていることは義務ではありませんでしたが、これが義務化されました。温度管理が必要もしくは肉製品に該当する動物性加工済原料については、公的証明書も必須です。日本食品のソースなどの調味料は動物性加工済原料を含むことも少なくないため、注意が必要です。

また、食品についてもEUという枠組みを超えて各国で規制が大きく異なる場合があります。特定の品目の輸入可否などは各国の裁量で決められることも少なくありません。現地の状況について確認が必要となるでしょう。混合食品と判定されるか否かも輸入国の規制に照らし合わせた判断が求められます。

EUへの食品輸出はかなりハードルが高い
EUへの食品輸出はかなりハードルが高い

今回もヨーロッパでの商品・サービスの販売の規制について少しお話ししました。ヨーロッパの規制はものすごく厳しいです。CEマーキングなどはEU以外の国々でも導入を検討されていますし、グローバルスタンダードとなる場合もあります。なおCEマーキングを自己宣言のみで貼付してよい製品であれば、自社で実施することも可能です。各種規制は多いですが、ヨーロッパでの製品・サービスの販売を長期的な視野でぜひご検討ください。

出典など
European Union (2019). EUR-Lex – 32019R0625 – EN – EUR-Lex. Available at: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32019R0625
GOV.UK. (2021). Businesses given more time to apply new product safety marking. Available at: https://www.gov.uk/government/news/businesses-given-more-time-to-apply-new-product-safety-marking.
農林水産省 (2021). EUへの対応:農林水産省. Available at: https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/EU.html.

執筆者

浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(欧州統括)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

当社は、海外事業展開をサポートするプロフェッショナルチームです。
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