イギリス発UKCAマーキング(UKCAマーク)とは

先月はEU(欧州連合)、正確にはEEA(欧州経済地域)加盟国で製品を販売するのに必要となるCEマーキング(CEマーク)について取り上げました。イギリスではEU離脱に伴い、このCEマーキングの適用はなくなりました。しかし、CEマーキングに代わる新たな指標として「UKCAマーク」が導入されました。今回はUKCAマークについて取り上げたいと思います。なお、記載情報は2021年3月17日時点の情報ですので、最新の法令などは各自でご確認ください。

UKCAマーキングとは

UKCAマーキングとは、UK Conformity Assessed Markingの略です。これを一言で申し上げるとCEマーキングのイギリス版です。イギリスで製品を上市する際にする際に、イギリス政府が指定する製品群に対しては本マーキングの適用が義務付けられます。実際にこれまでCEマーキングが必要だったほとんどの商品をカバーしています。現時点で適合項目などはEUのCEマーキングとはほぼ変わらないと言っても良いでしょう。ただし、医療機器や鉄道、建設関連製品については別規定があります。

一部の製品についてはCEマーキングと同様に第三者認証機関の審査が不要であり、自己適合宣言を行うことでUKCAマーキングを利用することができます。自己適合宣言を行うことができる製品リストはこちら(英語)をご確認ください。しかしUKCAマーキングを取得する際に第三者認証機関を利用する場合は、当然イギリスの認定を受けた機関を利用する必要があります。また、これまで現地に認定代理人をEU内に置かなければならなかった製品については、イギリス国内にも代理人を置く必要があります。なお、UKCAマーキングとCEマーキングのラベルを両方合わせて貼付することは可能です。

UKCAマーク

UKCAマーク

北アイルランドには要注意

UKCAマーキングという書き方をしていますが、この適用範囲はグレートブリテン島に位置するイングランド、スコットランド、ウェールズです。アイルランドと国境を接する北アイルランドは別規定があります。イギリスとEU間の離脱合意の際に北アイルランドについては、例外的に今後もEU法が適応されるということが決まっています。したがって北アイルランドではこれまで通りEU法で認められているCEマークなどが利用されます。しかし、第三者認証が必要となる製品が北アイルランドで販売される商品で、かつイギリスの第三者認証機関による認証を行う場合は「UKNIマーク」というものが利用されます。ただしこの北アイルランドに対する特例は当該製品を規定するEUやイギリスが法改正を行った場合は変更になることもあります。

今後はイギリスの法律に応じてUKCAマークの規定も変更される

今後はイギリスの法律に応じてUKCAマークの規定も変更される

UKCAマーキングの対応を急ぐべき理由

このUKCAマーキングの対応については急ぐに越したことはありません。それは以下の3点の理由からです。

(1) CEマーキングからの移行期間は2021年12月末まで

このUKCAマーキングの移行期間は2021年12月末までです。現時点ではCEマーキングを利用してイギリス国内で販売することは可能ですが、今年中に対応する必要があります。それまでに間に合わないと2022年1月からイギリスでの製品販売はできません。先月も記載しましたが、CEマーキングからUKCAマーキングへの置き換えは日本企業だけではなく全世界の企業が対応を求められています。EU内で製造してイギリスに輸出している日本企業も少なくはないでしょう。特に第三者認証機関の利用を求められる製品については、各機関に世界中から依頼が殺到していますので、お急ぎください。

(2) CEマーキングとUKCAマーキングは現時点ではほぼ同じ

さらに、このUKCAマーキングについては現時点でほぼCEマーキングと同様です。CEマーキングの際に利用した書類などを活用することも可能だと考えます。今後イギリス国内の法改正やEU内の指令改正などを経て、UKCAマーキングおよびCEマーキング自体に違いが生まれる可能性は高いです。したがって、イギリス国内で販売する可能性がある製品については今すぐに対応するのがコスト面でも望ましいといえます。また第三者認証機関を利用している場合は、当該機関にて自動でUKCAマーキングへの対応を行ってくれるケースもあるようです。

(3) コロナの影響もあってすべての対応が遅れている

またイギリス政府は新型コロナウイルスの流行もあり、すべての事務が遅れています。つい先日、物流関連規則については本年6月末までの予定であった移行期間の延長することが発表されました(これについてEUは反発)。このような事務手続きの遅延は公私企業問わず各所で起こっているという情報がありますので、早めに行動される方がよいでしょう。この新型コロナウイルス流行下でヨーロッパ展開を見合わせる、イギリスからヨーロッパ大陸市場に展開を考えていたがそれを延期するという話も聞かれます。しかし、CEマーキングもUKCAマークも現状ではすぐに取得できるものでないので早めにご準備を進めた方がよいでしょう。

CEマーキング同様、UKCAマーキングについても最終的な製品の責任は製造者自身にあります。弊社と販売業者様からのお問い合わせをいただくこともありますが、製造企業様と密な連携を取りながら対応いただければと思います。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。CEマーク、UKCAマークに関することも、お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

出典
Deutsche Welle (www.dw.com) (2021). Brexit: EU takes legal action against UK over Northern Ireland | DW | 15.03.2021. [online] Available at: https://www.dw.com/en/brexit-eu-takes-legal-action-against-uk-over-northern-ireland/a-56873761
GOV.UK. (2020). Using the UKCA marking. [online] Available at: https://www.gov.uk/guidance/using-the-ukca-marking.www.jetro.go.jp
独立行政法人日本貿易振興機構 (ジェトロ) (2020). 英国のEU離脱と離脱後の欧州ビジネス環境の変化 | 英国 – 欧州 – 国・地域別に見る – ジェトロ. [online] Available at: https://www.jetro.go.jp/world/europe/uk/referendum/

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