2021年のヨーロッパビジネス予測

2020年は新型コロナウイルス(COVID-19)の流行でヨーロッパのみならず世界中が大混乱に見舞われましたが、年が明けてもその状況は変わっていません。ヨーロッパに関しては、ご存知の通り年末から第2波が猛威をふるっています。また2020年1月31日をもってイギリスがEU(欧州連合)を離脱し、12月31日の移行期間が終了しました。年末に滑り込みでなんとかEUとイギリスの離脱協定合意に漕ぎ着けたものの、2021年はヨーロッパにとって波乱の幕開けとなりました。今回はその2021年のヨーロッパビジネスについて予測したいと思います。

新型コロナウイルスの流行状況(2021年1月12日時点)

昨年の秋以降ヨーロッパ各国で第2波が到来し、10月、11月以降各国で外出制限などを含むロックダウンが再度始まりました。特に年末にイギリスで新型コロナウイルスの変異種が確認されてからは、ヨーロッパ大陸が一斉にイギリスとの国境を封鎖するなど一時はパニックとなりました。現在では物流面での往来は再開するなどやや落ち着きは取り戻しているものの、ヨーロッパ大陸各国からのイギリスへの往来はかなり限定的です。イギリスは1月5日から罰金を含む厳しいロックダウンが導入され、ドイツの防疫措置(いわゆるロックダウン)は1月末まで延長されました。フランスやイタリア、スペインなども州ごとに差はありますが夜間外出制限を年末より継続しています。ワクチンの接種が年末順次始まっていますが、オランダなどのように接種計画自体が遅れている国もあり、落ち着くまでにまだまだ時間はかかりそうです。

不確実なヨーロッパビジネス
不確実なヨーロッパビジネス

ヨーロッパの経済予測

欧州委員会は2020年秋の経済予測として、「EUの経済は2020年には7.4%縮小するものの、2021年には4.1%、22年には3%成長する」と発表しました。また、経済が完全に復興するには2022年までかかると予測しています。この復興予想はヨーロッパ経済を牽引するドイツも同様の予測をしています。しかし、これはあくまで2020年秋時点での予測であり、その後再度新型コロナウイルスの第2波が到来したため、下方修正される可能性があります。失業率もやや上昇することが予想されています。また、新型コロナウイルス対策の補助金などの支出増加および税収の減少などから各国の財政悪化が懸念されています。

新型コロナウイルス関連の影響に加え、イギリスがEUから離脱したことに伴う制度変更なども日系企業には大きな影響を与えると考えられます。「どうなる?ブレグジット – イギリスのEU離脱」でも記載しましたが、CEマークは2021年12月31日までイギリス国内でも有効ですが、今後もイギリスでの継続した販売を実施する場合はそれまでにUKCAマークの導入を行う必要があります。また、EU側ではCEマーク取得にあたりイギリスの第三者認証機関を利用した場合は、EUが認定した認証機関に変更する必要があります。また関税手続きに時間を有する可能性があるため、例えばヨーロッパ大陸で生産した製品をイギリス国内で販売している場合は通関手続きが増えますのでご注意ください。

新型コロナに加えてイギリスのEU離脱の影響も考慮する必要がある2021年
新型コロナに加えてイギリスのEU離脱の影響も考慮する必要がある2021年

2021年のヨーロッパビジネスに向けて

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行はヨーロッパだけではなく、日本経済にも大きな影響を与えています。そのような状況もあり、弊社のお客様においてもヨーロッパビジネスを保留にされる企業様は実は少なくありません。ただ、以下の観点で2021年は何もしないということは、2022年以降の商談に非常に好ましくない影響を与える可能性が高いです。

(1) イギリスのEU離脱対応に間に合わない

上述のとおりUKCAマークのような移行期間を設けられているものもありますが、UKCAマークの取得やEEA(欧州経済地域)内の第三者認証機関への変更については時間を要します。この作業は日系企業のみならず世界中の企業が同様の対応を行う必要があるため、相当数の企業が殺到します。ギリギリになってからの対応では2021年12月末に間に合わず移行期間を超えてしまい、新規申請対象として行うことになり時間・コスト増となる可能性もあります。ただでさえ新型コロナウイルスの流行で、現在のヨーロッパでは各種事務は日本以上に滞りがちです。既にEUやイギリスで製品の販売を行われている企業様におかれましては、至急ご対応を開始されることを強くお勧めいたします。

(2) 商談準備に時間がかかるが、2022年に始めるのでは遅い

弊社では「もう販売する製品はできているのですぐにでもヨーロッパで販売したい」というお問い合わせを受けることが多いですが、新型コロナウイルス流行やイギリスのEU離脱の影響がなかったとしても、ヨーロッパで商談を進めるのには時間がかかります。現地のニーズに合わせる必要や、ヨーロッパの場合は販売国・地域の絞り込みなどの前段階の調査に時間を要するケースが多いです。製品・サービスにもよりますが地に足をつけてしっかり販売したい場合は、市場調査や製品の改良などで最低1年はかかる場合が多いです。仮に2022年に景気が回復した場合であっても、すぐに売れることにはなりません。したがって2022年に販売を開始したい場合は、2021年から少しでも良いので準備されることをお勧めいたします。

新年早々あまり明るい話題ではありませんが、皆さまの健康にまずはご留意いただくとともに2022年、2023年のことを考慮した上でビジネスをご検討いただければと存じます。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ヨーロッパでビジネスを展開したい場合はぜひご連絡ください。企業様、個人事業主様関係なくご相談に応じます。

出典
European Commission (2020). Autumn 2020 Economic Forecast: Rebound interrupted as resurgence of pandemic deepens uncertainty. Available at: https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_2021.
Government Digital Service (GDS), the United Kingdom (2021). National lockdown: Stay at Home. Available at: https://www.gov.uk/guidance/national-lockdown-stay-at-home.
Presse- und Informationsamt der Bundesregierung, Deutschland (2021). Bund und Länder vereinbaren Verlängerung der Einschränkungen. Available at: https://www.bundesregierung.de/breg-de/aktuelles/bund-laender-beschluss-1834282.
在イタリア日本国大使館 (2021). ゾーン別措置(概要:2021年1月9日現在). Available at: https://www.it.emb-japan.go.jp/itpr_ja/covid_19_misureGAR.html.
在スペイン日本国大使館 (2021). 新型コロナウイルス. Available at: https://www.es.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_001124.html.
在フランス日本国大使館 (2020). よくある質問:コロナ関連FAQ. Available at: https://www.fr.emb-japan.go.jp/itpr_ja/coronavirus-faq.html.
日本貿易振興機構(ジェトロ) ロンドン事務所 および 同海外調査部 (2020). 移行期間終了後の英国ビジネス関連制度 UKCA マーク. Available at: https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/europe/uk/referendum/report_2.pdf.

執筆者

浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(欧州統括)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

当社は、海外事業展開をサポートするプロフェッショナルチームです。
ご相談は無料です。お気軽にご連絡ください。

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