どうなる?ブレグジット – イギリスのEU離脱

2020年1月31日をもってイギリスはEU(欧州連合)を離脱しました。そして本年12月31日までが移行期間となっています。移行期間終了後の貿易や入国管理などの各種協定ついては、それまでの間にEUおよびイギリス政府との協議によって決められます。現時点では新型コロナウイルス(COVID-19)の流行などもあり、話し合いがうまくいっていません。 しかし、その移行期間の終了はあと1ヶ月に迫っています。本日はイギリスのEU離脱についてお伝えします。なお記載情報は2020年11月26日時点の情報となりますので、最新情報はEUおよびイギリスの各政府公表している情報をご確認ください。

そもそも離脱交渉はどうなっているのか

まずEUの離脱後の交渉はEUとイギリスの代表団にて話し合いが行われ、合意後にEU、イギリス各国の議会の承認を得て正式合意となります。EUとイギリス間の交渉は今年の3月から10月初旬にかけて9回行われてきましたが残念ながら合意に至りませんでした。この離脱交渉は物品貿易、エネルギー、漁業、ガバナンスなどの11の分科会に分かれており、分科会レベルで合意することはなく全体の見通しが立って初めて合意となります。年内妥結をめざして再開されましたが、本当に年内に妥結するのかについては悲観的な見方をする人は少なくありません。検討項目の多さや複雑性を考慮すると本来であれば数年単位で協議されるものであり、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行がなかったとしても無謀であるという声は多く聞かれます。筆者はイギリスの金融機関やイギリスに欧州法人を有するITサービスを利用していますが、今年の夏以降「拠点をEU内の他国へ移転した」というメールを受け取ることが増えました。

これからの関係性について不安が残るEUとイギリス
これからの関係性について不安が残るEUとイギリス

日系企業への影響

このイギリスのEU正式離脱後に発生することとして、日系企業への影響としてはどのようなことが考えられるでしょうか。EUの大原則の一つである「モノの移動の自由」「人の移動の自由」が鍵となりそうです。これを利用してイギリス含めたEU内で自由に製品・サービスを販売されている日系企業も少なくはないと思います。しかし、今後はEUとイギリスを分けて考える必要があります。

( 1 ) 輸入に関する認証手続き

EUは域外からの輸入に対して厳しい規制を課しています。弊社でもよくお問い合わせをいただくのがCEマークですが、このCEマークは来年の1月1日以降、イギリスではUKCAマークに変更になります。現時点のCEマークは一部を除き2021年12月末まで経過措置があるためイギリス国内でも現在のCEマークが有効ですが、2021年中にUKCAマークの取得する必要があります。また、イギリスの認証機関で認証を受けたCEマークは無効となるのでEUを含むEEA内の第三者認証機関に移転するか、新たに認証取得が必要になります。内容の差異は現時点では大きくないようですが、今後法改正が行われて大きく変更になる場合もあります。また製品区分によってはCEマーク以外の認証が必要な場合もありますので、よくご確認ください。

( 2 ) 関税

他国から他国へモノを輸出する場合は、自由貿易協定(FTA)が締結されている場合を除き関税が発生します。これは2021年1月1日以降のEU・イギリス間も例外ではありません。新たにUKグローバル・タリフという関税率が適用されます(移行措置として6ヶ月程度繰延ができる場合も)。日本を含めたFTA締結国や一般関税特恵制度対象国を除き、全世界に対してこの関税率が適用される予定です。税率が下がる品目も少なくはないようです。

( 3 ) EU人を雇用しているイギリス法人、イギリス人を雇用しているEU法人

また、「モノの移動の自由」以外でも「人の移動の自由」についても配慮が必要です。特にイギリスに現地法人を有している日系企業は注意が必要です。これまでは労働ビザを取得することなく自由に雇用できていたイギリス国内のEUを含むEEA人、EEA内のイギリス人の雇用が難しくなる場合もあります。イギリスは世界でも有数のビザが取得しにくい国であり、EU人に対しても例外ではなさそうです。雇用主からのオファーや英語力などの必須項目に加えて、年収や学位などの項目で必要ポイントを満たす必要があります。EU域内でイギリス人を雇用している場合はさらに注意が必要です。本コラムでも何度か述べておりますが、ビザや滞在許可の発給権はEUではなく加盟国にあります。したがって、ドイツとフランスに法人がありそれぞれでイギリス人を雇用している場合、2021年1月以降の雇用についてはドイツおよびフランスのそれぞれの移民法に照らし合わせて対処する必要があります。各国の移民法弁護士に必ずご確認ください。

イギリスが輝きを取り戻す日はいつになるのか
イギリスが輝きを取り戻す日はいつになるのか

今後のヨーロッパビジネスに向けて

欧州の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行悪化もあり、交渉がうまくいっていない状況です。現在特に問題となっているのは、11項目のうち「オープンで公正な競争条件」、「漁業権」、「紛争解決などのガバナンス」の3点です。今週も交渉が行われましたが、オンライン会議であったため思ったような進捗が期待できなかったようです。来週再度交渉が行われる予定であり、イギリス側はクリスマス前に妥結、クリスマス直後に各議会を招集して承認することをめざしているようです。しかしこの状況は薄氷を踏むが如しといっても過言ではありません。漁業権という日系企業には一見無関係の事項に見えますが、先ほど申し上げたとおり、「分科会レベルでの合意はない」ため一つでも合意が至らないと「合意なき離脱」が発生する事態となります。日本でも第3波が到来しており思うようなビジネス活動ができていない企業様も多いと存じますが、必要最低限の準備を怠ることなく来年に備えていただければ幸いです。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ヨーロッパでビジネスを展開したい場合はぜひご連絡ください。企業様、個人事業主様関係なくご相談に応じます。

出典
Department for International Trade, United Kingdom (2020). UK tariffs from 1 January 2021. [online] GOV.UK. Available at: https://www.gov.uk/guidance/uk-tariffs-from-1-january-2021.

European Commission (2020). Negotiation rounds on the future partnership between the European Union and the United Kingdom. [online] European Commission. Available at: https://ec.europa.eu/info/european-union-and-united-kingdom-forging-new-partnership/future-partnership/negotiation-rounds-future-partnership-between-european-union-and-united-kingdom_en.

Financial Times Ltd (2020). Brussels frustrations grow as Brexit talks remain deadlocked. [online] www.ft.com. Available at: https://www.ft.com/content/fa7180b8-d7d7-4d06-abaa-6e34a710dfe8.

在英国日本国大使館、在英日本商工会議所、ジェトロ・ロンドン事務所 (2020). ブレグジットセミナー.

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) (2020). 【ウェビナー】英国のEU離脱(ブレグジット)セミナー.

執筆者

浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

当社は、海外事業展開をサポートするプロフェッショナルチームです。
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