ロシアのウクライナ侵攻がヨーロッパに与える影響

本年2月24日にロシアがウクライナに侵攻しました。日本でも大々的に連日報道されていますが、ヨーロッパはロシアやウクライナと陸続きであるということもあり、侵攻直後から大きな影響が出ています。今月はロシアのウクライナ侵攻がヨーロッパに与えている影響について簡単にですがお知らせします。本情報は2022年3月25日時点の情報です。状況は日々変わりますので、その点をご理解ください。

物価の上昇・品不足

先月から3月中旬まで日本に一時帰国しておりましたが、ドイツに戻ってきてまず驚いたのが物価の上昇です。戻ってきた翌日にスーパーマーケットに買い出しに出かけましたが、物にもよりますが体感的に10%くらい物価が上がっているような気がします。具体的には生活必需品である牛乳、野菜、肉類などです。知人の話によると、侵攻直後はトイレットペーパーやパスタなどの品切れが相次いでいたようです。ウクライナ侵攻開始から1ヶ月経った現在でも都心部の住宅街に近いスーパーでは、食用油や小麦粉類などの品切れが見られるとのことです。

ウクライナにとってドイツは中国に次ぐ第2位の貿易相手国であり、自動車や機械類をドイツから輸入する反面、穀物・油や電子機器類を輸出しています。ドイツとロシアに関しては、ロシアはドイツの対外貿易全体の2.3%程度の貿易相手国ですが、原油・エネルギー関連が194億ユーロ(約25,200億円)を超えています。ウクライナ侵攻直後はウクライナ、ロシアとの貿易で直接的に影響のあるものの価格上昇や品不足が見られている、と言えそうです。

ウクライナの国旗の青は青空、黄色は小麦を表しているという

ウクライナの国旗の青は青空、黄色は小麦を表しているという

エネルギー価格の上昇、全てのビジネスへの影響

経済制裁に先立ち、ドイツがロシアとの天然ガスパイプラインのNord Stream 2プロジェクトを停止しました。ドイツは多くの天然ガスをロシアに依存していましたが、エネルギー政策の転換を求められます。EU(欧州連合)全体で2030年までに55%の温室効果ガス削減を目標としていますが、戦争の長期化により施策の変更が求められる可能性もあります。ドイツの場合電力自由化が進んでおり、各人が電力会社を選んで契約ができますが、侵攻後に新規顧客の申込受付を停止した電力会社もあるようです。

また、短期的にも影響は出ています。侵攻後、ドイツのガソリン・ディーゼル価格が20%近く上がったようです。これは一般ドライバーだけではなく全ての物品の輸送コストに影響し、上述のような物価の上昇につながっています。日本からの空路は現在中国・カザフスタン経由もしくは北極回りとなっており、航路が大きく伸びていることからコスト面でも大きな影響が考えられます。私の帰独便もいつもよりも4時間ほど余分に時間がかかり、とても長かったです。おそらく今後、燃油サーチャージも上昇し航空券の値上がりも起こると考えられます。

CO2削減などの政策への長期的影響も考えられる

CO2削減などの政策への長期的影響も考えられる

ロシア市民・ビジネスへの影響

私の知人でご家族にロシア系の方がいらっしゃる方がおり、「今回の件で、電話や西側のコミュニケーションアプリ(Skype、WhatsAppなど)は使えなくなるかもしれない、テレグラム(ロシアのメッセージアプリ)を使ってほしい」と言われたようです。ソ連が崩壊して30年経つがマフィアが国家を牛耳っている状況は変わらず、今回の戦争も国民へは事後報告で一般市民は虐げられるばかりだとおっしゃっていました。メディアではロシア国民の7割以上がプーチンや今回のウクライナ侵攻を支持しているというが、本当のところは怪しいとのことです。

またビジネスをされている企業の方も輸送だけではなく送金手段が止められているため、代金回収が容易ではない、今回の支払いは第三国を経由して回収できたが長期的には難しいかもしれないという声を多く聞かれます。

今後のウクライナ侵攻について

最後にビジネスとは直接関係ありませんが、今回のウクライナ侵攻について軍人の知人に報道されていることは正しいのか、軍人としてどう思うか意見を求めました。彼はとあるNATO(北大西洋条約機構)の加盟国で20年以上軍隊に所属しており、これまでNATO軍としてアフガニスタン、イラク、ソマリアなどに赴任した経験があります。

ロシアは明らかに読みが甘かったとしか言いようがない。そもそも、彼らの戦闘教義は50年前から変わっておらず、今回のような両軍が対等に睨み合うような対称型の戦争経験はこの50年の間にほとんどない。チェチェンや2014年のクリミアでもこのような形態は取っていない。これはNATO軍も同じで、ゲリラ戦のようなテロとの戦いが多く今回のような実戦経験はない。軍部も現場の兵隊も慣れていない状況で、戦闘という観点から難しい、市街戦に持ち込んだのは実に愚かである。ただNATOが参戦することは考えづらい上に、プーチンの頭の中は本当にわからないのでどうなるか予想がつかない。何が起こりうるかは本当にわからない。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに、皆様のヨーロッパでのビジネスをサポートしております。お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

出典など
Bücker, T. (2022). Was das vorläufige Aus von Nord Stream 2 bedeutet. [online] tagesschau.de. Available at: https://www.tagesschau.de/wirtschaft/weltwirtschaft/nord-stream-2-russland-deutschland-gas-101.html.

Conte, N. (2022). Visualizing Ukraine’s Top Trading Partners and Products. [online] Visual Capitalist. Available at: https://www.visualcapitalist.com/visualizing-ukraines-top-trading-partners-and-products/#:~:text=International%20trade%20was%20equal%20to.

Schallenberger, L. (2022). Diesel erstmals teurer als Benzin: das steckt dahinter – und zu dieser Uhrzeit tankt ihr am günstigsten. [online] Business Insider. Available at: https://www.businessinsider.de/wirtschaft/verbraucher/diesel-erstmals-teurer-als-benzin-zu-dieser-uhrzeit-tankt-ihr-dennoch-am-guenstigsten-a.

Statistisches Bundesamt (2022). Facts on trade with Russia. [online] Federal Statistical Office. Available at: https://www.destatis.de/EN/Press/2022/02/PE22_N010_51.html.

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