存在感を高める太陽光発電 in フランス

太陽光発電

再生可能エネルギーは環境に優しく、温室効果ガスの排出を抑えることが期待できるとして、フランス政府はサステナブルなエネルギー源の研究・開発に懸命である。

再生可能エネルギーは自然に優しいというだけではない。新たな産業領域を発掘、醸成し、雇用を生み出すことも期待されるとして、経済成長と多様化を見据えている。

Les Echos(2023年1月18日)によると、フランス国内で生み出される電力の約60%は原子力発電によってもたらされている。この数値割合は、全土すべての原子力発電所がフル稼働した場合には約75%を占めることとなるのだが、原子力発電に過度に依存することを懸念する政府は、2035年までに50%にまで下げる目標を掲げている。

原子力発電以外を見てみると、風力発電が約7%、太陽光発電が約2%と極端に小さいが、特徴的に水力発電の割合は大きく、約10%を占めている。

フランス政府の政策情報サイト・Vie Publique(2023年6月23日)は2020年、欧州連合が定めた再生可能エネルギーシェア23%を達成できなかった唯一の加盟国がフランスだったと吐露している。
汚名挽回を目指す政府が2050年までの達成を宣言した目標値は、太陽光発電を現在の10倍(100GW超え)、洋上には50基の風力発電所を配備して40GWとするなど、再生可能エネルギーの全体生産量を現在の2倍に押し上げるという。

なかでももっとも注目されるのが太陽光発電であろう。
政府はいわば国策として、人工化されている土地に対し太陽光パネルの設置を強力に推し進める方針だ。
たとえば、一般道や高速道路沿いの土地、鉄道沿線、河川のルートや海岸沿いの荒地、 1,500平方メートルを超える屋外駐車場などがパネルの設置対象となる。今年、これらの表面積の50%以上にソーラーパネルを設置することが法制化され、義務づけられた。

新築、あるいは大幅改修された非居住用建築物(倉庫、病院、学校など)に関しては、太陽光発電屋根の適用率を2023年の30%から2027年には50%にまで段階的に増やす。この措置は2028年以降、旧来の非居住建築物にも拡大適用される見通しで、さらには、公営住宅でも調査が開始されることとなっている。

ソーラーパネルの技術革新は世界中で進んでいるが、中でもとりわけ中国の進歩が目覚ましい。中国は太陽光発電量が多く、研究開発にも余念がない。中国以外では米国、ドイツ、日本などでも技術革新が見られる。
これからの課題は発電効率のさらなる向上と製造コストの削減である。新たな素材の導入、デザインの刷新等々、よりいっそう効率的な発電と貯蓄を可能とすべく、各国が研究・開発に凌ぎを削っている。

ソーラーパネル

ところで、筆者は先日、自宅にソーラーパネルを取り付けた。そのときの様子をご紹介しようと思う。

契約中の電力会社Engieが紹介してくれたいくつかのソーラーパネルメーカーと施工会社の中からInspira Energieというメーカーを選んだ。

施工会社より見積りをもらい、仮契約を済ませた後、施工会社により次の3つの手続きが行われる。
まず最初に、建築家による地形解析調査が入る。影の領域や屋根の傾きなど、明るさの影響が細かく調査され、パネルの設置に適すると判断されると本契約を交わすことができ、支払い方法について説明を受ける。
無事に本契約が交わされると、施工会社は2つの書類を作成し、申請する。一つは市役所に提出する設置許可書、いま一つは設置の指示書である。

筆者宅の場合、南東向きに5枚、北西向きに4枚、計9枚のソーラーパネルを取り付けた。必ずしも理想的な配置とはいえないようだったが、半日で作業は完了した。

設置作業が完了すると、10日から45日後に適合証明書が交付される。これは設置済みパネルが政府によって認定されたものであることを証明し、余剰電力を販売したり、政府からの援助金や補助金を受け取ったりする場合に欠かすことのできない証明書である。多くの場合、画像チェックのみで済むようだが、検査員が実際に来宅するケースもあるという。

適合証明書を受領し、30日から60日の間に電力会社EDF、あるいはEDFの関連会社に余剰電力を販売するための契約を申し込む。契約期間は20年である。フランスでは現在、1 Kwあたり0,13セントユーロで販売することができるようになっている。

いわゆる売電だけでなく、蓄電池を設置していれば余剰電力を蓄電に回すこともできる。余剰電力を優先的に蓄電し、蓄電池がフルになったら売電する。この場合はネットメータリング制度にもとづきクレジットとして計算される仕組みだ。
ただ、フランスでは、パネルの設置は進んでいるものの、蓄電池の普及はそれほど浸透していないと言われている。

ソーラーパネル

言うまでもなく、太陽光発電は地球環境に優しいエネルギー源である。再生可能でクリーンなエネルギー源であり、温室効果ガスの排出を抑制する。だが、一方では、パネルの製造過程における環境負荷や、天候に左右される発電効率の増減が問題視されてもいる。こうしたデメリットをいかに抑え、メリットが際立つようにするかが最大の課題と言うことができる。

執筆者 内田 アルヴァレズ 絢(うちだ・アルヴァレズ・あや)

マーケティングコンサルタント(フランス)

神戸松陰女子学院大学英文科卒、Aix Marseille IIIにてフランス語を学ぶ。
ドイツ及びフランスで15年にわたりキャリアを積み、現在はパリを拠点に日系企業の欧州展開を多角的にサポートしている。
Researching Plus GmbH社のマーケティングリサーチャー&企業コーディネータも務める。

当社は、海外事業展開をサポートするプロフェッショナルチームです。
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