新たなヨーロッパビジネスの玄関口 – モルドバ(第2回)

2020.06.10

今回は前回に引き続いて東ヨーロッパに位置するモルドバについて特集します。第2回は実際にモルドバでビジネスを行うメリットや課題について取り上げます。

モルドバでビジネスを行うメリット

モルドバでビジネスを行う最大のメリットは原価の低減です。特に人件費や節税といった利点があります。モルドバ人の平均年収は322,000MDL(モルドバ・レウ)であり、これは日本円に換算すると200万円以下です(2019年時点)。12%という安価な法人税もモルドバでビジネスを行ううえで享受できるメリットです。これは多くのEU加盟国や他の近隣諸国と比べて圧倒的に安価です。また社会保障費も18%であり他国と比較して圧倒的に安価です。さらに国が支援する工業団地やITビジネスパークでビジネスを行うと、さらなる節税が可能であるようです。したがって拠点を設立して現地の人を雇用するというタイプのビジネスであれば、モルドバでビジネスをするメリットは大いにあるでしょう。
市場へのアクセスという観点ではEU加盟国のルーマニアや旧ソ連圏と地理的に近いので、モルドバで生産したものを安価に輸出することが可能です。モルドバ自体はEU加盟国ではありませんが、EUとは自由貿易協定を締結しています。したがってモルドバ で生産したものをEU加盟国に輸出する場合はコスト面で優位性を確保できるでしょう。
また、ITインフラ環境に関しても非常に高いレベルを誇ります。国のほぼ全域で4G回線を利用することができ、世界第6位の安価で高品質なブロードバンド環境が行き渡っています。IT関連については国が最も注力している分野の一つですので、人材の確保も容易です。

優れたITインフラを有するモルドバ

優れたITインフラを有するモルドバ

モルドバでビジネスを行ううえでの課題

しかしモルドバでビジネスをすることは容易ではありません。まずは言語の問題があります。公用語が英語ではなく、モルドバ(ルーマニア)語です。また、これまで日系企業の進出実績も必ずしも多くないため、相手方の日本文化の理解を含めて言語・文化的な観点で配慮すべき点は多いと考えられます。
汚職の問題も深刻でありトランスペアレンシー・インターナショナルによる腐敗認識指数においても、183ヶ国中120位となっています。「選挙では票が何らかの形で操作されていて、民意が反映されない」と感じている国民も多く、現在でも大統領選挙などの大きな選挙の際には日本などの国から監視員が派遣されています。この汚職の問題はEU加盟の大きな障壁の一つです。

モルドバ政府・企業は日系企業に大きく期待している

モルドバ政府・企業は日系企業に大きく期待している

モルドバが日系企業に期待すること

モルドバにとって貿易相手国はルーマニアを筆頭にEU加盟国が中心であり、ロシアなどの旧ソ連圏がそれに続きます。日本はモルドバにとって世界第23位の貿易相手国となっていますが、近年複数の日系企業がモルドバに進出しています。特に自動車部品関係企業の進出が大きく注目されており、2016年にフジクラがモルドバの首都キシナウの工業団地「エキスポ・ビジネス・キシナウ」に自動車用ワイヤハーネス(組み電線)の工場を設立しました。また、翌年には住友電工のドイツ子会社もモルドバに自動車部品工場を設立しました。
自動車が日本からの輸入の過半数を占めていますが、モルドバが進出を期待する日系企業は自動車産業にとどまりません。ヨーロッパにおいても日本のデザインは高く評価されており、モルドバの繊維業界も日本企業との協業を望む声は少なくありません。さらにモルドバは日本のアニメ産業にも大きく着目しており、モルドバ政府からも本業界には期待の声が上がっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。モルドバは多くの日本人にとって未知の国であり、ビジネスを行ううえで明確なイメージを持つことができない方も多いと思います。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行下であってもモルドバのモルドバ中小企業育成機構(ODIMM)と日本貿易振興機構(JETRO)主催でビジネスウェビナーを開催するなど、モルドバ自体が日本企業とのビジネスを期待していることは事実です。そのウェビナーにおいてはモルドバの経済・交通大臣が冒頭でスピーチするなど日本企業への大きな期待をうかがうことができました。ヨーロッパ進出や拠点設立を考えている企業のご担当者の方には、ぜひモルドバも候補の一つとして考えていただければ幸いです。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。モルドバやヨーロッパでビジネスにご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

出典
外務省「モルドバ 共和国基礎データ」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/moldova/data.html
在モルドバ日本国大使館「モルドバ共和国概観(2017年9月)」(https://www.md.emb-japan.go.jp/files/000285698.pdf
The Moldovan Investment Promotion Agency “ICT & BPO SECTOR OVERVIEW Republic of Moldova”
Corruption Perceptions Index(CPI):Moldova(https://www.transparency.org/en/cpi/2019/results/mda
日本貿易振興機構(ジェトロ)ブカレスト事務所、モルドバ中小企業育成機構(ODIMM)主催「モルドバ投資環境ウェビナー”BUSINESS BRIDGES JAPAN-MOLDOVA”」(2020年5月21日開催)