ヨーロッパで商品やサービスを販売するには(輸管・税務編)

先月先々月に引き続き、「ヨーロッパで商品やサービスを販売するには」というテーマでお送りします。輸出管理や税務などについてはヨーロッパに限らず配慮しないといけません。今月は輸出管理、税務について取り上げます。なお筆者は税務の専門家ではありませんので、詳細は各国の税理士資格を持つ税理士にご照会をお願いします。

輸出管理

筆者が新卒で入社した会社では定期的に輸出管理に関する監査がありました。担当顧客および取扱商品は国内かつITシステム品(ハードウェア含む)でしたが、半年に一度必ず監査があったことを覚えています。この輸出管理がもっとも重要な理由は、適切な輸出を行わないと国家の安全保障に関わる危険性があるからです。民生品として輸出を行う場合であっても、武器や軍事転用可能な貨物・技術はたくさんあります。何らかの形で貴社の輸出品がいわゆるならず者国家やテロリストなどに渡る可能性はゼロではありません。日本では「外国為替及び外国貿易法」に基づき、輸出管理を行っています。もし適切な輸出管理を行わずに輸出を行った場合、外為法に基づき刑事罰や行政制裁を受けるばかりではなく、貴社の社会的信用の失墜などビジネスへの影響は計り知れません。

この輸出管理は「リスト規制」「キャッチオール規制」に分けられます。前者は軍事転用される可能性が高い輸出品目や技術がリスト化されたものです。これは国際的合意に基づくもので、そのリストにあるものを輸出するには経済産業大臣の許可が必要となります。後者はリストにはないものの、用途が軍事用途である、もしくは購入者が兵器などの開発を行っている場合には、輸出の許可が必要になるというものです。詳細の情報は経済産業省のホームページなどに詳しく書かれていますので、そちらをご確認ください。

なお、輸出管理対象は単なる製品の輸出だけではなく、サンプルや見本市・展示会などのための海外への持ち出し、Eメールや会議などを通した技術情報の提供など幅広く含まれます。したがって、常日頃から適切な輸出管理を行うことができるよう、社内のチェック体制の整備や従業員への意識づけなどが重要です。

万が一自社製品が武器などに転用されると取り返しがつかないことに

万が一自社製品が武器などに転用されると取り返しがつかないことに

税務に関してもEU内で異なる

ある国との間で輸入・輸出を行う場合は、適切な手続きを取ることで関税の減額もしくは免除を行うことができる場合があります。税率は販売価格に反映されますので、弊社のお客様の関心が高いトピックでもあります。EUへの輸出入に関しては、対象外の品目もありますが基本的に日EU間のEPA(Economic Partnership Agreement; 経済連携協定)を活用可能です。活用にあたっては「日本で最終生産・加工されている」 「EPAで定められた原産品の基準をクリアしている」 ことが必要です。そしてそれらを証明する根拠資料(特定原産地証明書)の提出が必要です。

EU(欧州連合)は人、モノ、サービスなどの自由な移動が認められている単一市場で、このEPAはEU加盟国に対して適用されます。ただ、税に関する考え方は国ごとに異なります。付加価値税(VAT)の税率や品目に関する考え方も加盟国ごとに大きく異なりますし、VAT還付手続き方法や可否もそれぞれの国によります。仮に同じ商品・サービスの取引をEU内の別の国で行う場合、例えばドイツとイタリアから同じ品目をそれぞれから輸入すると、ドイツとイタリアの取引先から異なる情報提供依頼や要望が来ることがあります。

二重課税の阻止を目的とした租税条約も国同士の契約です。例えばEU加盟国であるドイツとフランス、日本間それぞれで租税条約を締結されており、その内容はその国ごとに異なります。同じ品目であっても国によって税率や課税の有無が異なることもあります。したがって、税に関するご質問は必ずその国の税務資格を有する専門家(ドイツならドイツ、フランスならフランスでの資格を有する税理士)にお尋ねください。免税・減税の恩恵に授かる場合、契約書や請求書などの記載を工夫することも必要です。

EUとはいえ税に関する考え方は国ごとに異なる

EUとはいえ税に関する考え方は国ごとに異なる

よい法務・税務の専門家の選び方

これは国内取引においても言えることですが、取引をする相手方任せにせずに自社で専門家を雇うことが重要です。弁護士や税理士などの専門家はお金を払ってくれるクライアントのために仕事をします。取引先に頼らず身銭を切って、自社の立場に立って適切な助言をしてくれる専門家を選ぶことが大切です。安全な方法としては日系企業と取引経験がある、自社の業種に詳しい専門家を選ぶとよいでしょう。しかし、日本語ができる、日系企業に慣れているからと言って必ずしも貴社にとってよい弁護士・税理士とは限りません。またどの都市においても日系企業対応を行っている専門家は限られているため、縄張り争いや派閥などの彼らのお家事情もあります。したがって、いくつかの専門家の話を聞いたり、弊社のような中立的な立場でセカンドオピニオンをくれる第三者に意見を聞いてみたりすることも一つの手段です。ただ、彼らはタイムチャージで仕事をしていますのでダラダラと何度も打ち合わせをすることを嫌い、明確に時間単位で請求を行いますので、きちんと事前準備を行い自社の要望を整理して対応することが重要です。これは、相手が仮に日本人(例:ドイツで税理士資格を有する日本人)に対しても同様です。

今回は輸出管理と税務に関してお話ししました。税務についてはコストに跳ね返るため、皆様の関心は非常に高いですが、輸管は忘れられがちです。ビジネス以上に我々の生活や国防に関わることですので、日頃から気にかけていただけますと幸いです。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに、新型コロナウイルス流行下においても皆様のヨーロッパでのビジネスをサポートしております。お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

出典など
財務省 (2021). 我が国の租税条約等の一覧. https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/tax_convetion_list_jp.html
経済産業省 (n.d.). 安全保障貿易管理**Export Control*安全保障貿易の概要. https://www.meti.go.jp/policy/anpo/gaiyou.html
経済産業省 (n.d.). EPAとは – EPA/FTA/投資協定(METI/経済産業省). https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/about/
外務省 (2016). 輸出管理レジーム. https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/regime/index.html

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