ヨーロッパ人の英語力

ヨーロッパ人はみな英語ができるとお考えの方もいらっしゃいますが、決してそうではありません。日本人の多くのビジネスパーソンよりは英語ができるのは間違いありませんが、すべてのビジネスパーソンが高いレベルの英語力を有していると限りません。また、世代や従事している業種・職種によって大きく差があります。今日はヨーロッパ人の英語力についてお話ししたいと思います。

ヨーロッパで話されている言語

EU(欧州連合)の公用語は24言語とされていますが、少数言語を含めるとその倍以上になると考えられています。EU加盟国のみを対象にした調査によると、65%の人が2カ国語を話すことができると回答しています。ロシアを除くヨーロッパで「母語」として最も話されている言語はドイツ語であり、全体の2割がドイツ語母語話者であると考えられています。ただし「共通語」としてもっとも普及しているのは英語であり、EUにおいては5割程度の人が英語で高いレベルのコミュニケーションをとることができるようです。ちなみにイギリスがEUから離脱したため、英語がEUの公用語から外れるのではないかという話があります。しかし、その普及度合いやアイルランドとマルタにおいて英語が第二公用語に指定されていることを考慮すると、便宜上英語はEUの公用語として残るのではないでしょうか。

ドイツ語はヨーロッパ言語界においても存在感を示している

ドイツ語はヨーロッパ言語界においても存在感を示している

ヨーロッパビジネスは本当に「英語」だけで大丈夫なのか

このような状況を踏まえて、ヨーロッパビジネスを英語だけで乗り切ろうとされるお客様は多いですがそれは場合によります。あくまで私見になりますが、以下のようなケースは英語のみでとりあえずは何とかなると考えています。

( 1 ) 国際見本市の出展やその後のフォローアップ

ドイツを中心にヨーロッパでは国際見本市が開かれていますが、その場合は英語が公用語ですので問題ありません。来場者も英語でビジネスを行う前提です(見本市出展についてはこちらをご参照ください)。特定の国や市場を対象とする地方見本市については現地語が必要となるでしょう。

( 2 ) 以下のすべてに当てはまる国をターゲットとしてビジネスを行う

多言語が公用語とされている
人口が2,000万人未満
非旧共産圏
特に人口が2,000万人を超えると、日本ほどではないにせよガラパゴス化する傾向があるように思います。そういう国では英語のリソースが手に入りづらかったり、ビジネスパーソンの英語があまり上手くなかったりということが起こります。また旧共産圏については一定の年齢層以上では英語が通じにくいと感じます。

( 3 ) 現地拠点を設立しない

現地拠点を設立する場合は現地のさまざまな法律などを理解して行う必要があるので、現地語が不可欠です(現地拠点設立についてはこちらをご参照ください)。

自国の言語や文化に誇りを持つフランスの首都・パリ

自国の言語や文化に誇りを持つフランスの首都・パリ

ヨーロッパ人の英語力を過信しない

冒頭で申し上げた通り、多くのヨーロッパのビジネスパーソンは日本人よりも英語は堪能です。しかし、ビジネス上のコミュニケーションをとる上で不安を感じることは少なくありません。お互いノンネイティブ同士で会話をする場合、誤解も生まれやすくなります。またこれは英語力の問題ではないですが、文化的コンテクストが異なるため言語はわかるが本当の意味が通じていないということはよくあります。性格的に自己主張はするが人の話をよく聞かない人もいます。あるイギリス人英語講師は「イタリアやスペインの生徒は間違いを恐れずによく話すから英語ができるように聞こえるが、日本人以上に文法上の誤りも多い」とのことです。したがって、相手が英語に堪能であっても(堪能そうに聞こえる場合であっても)、正しくコミュニケーションが取れていると過信せずに打ち合わせ後に議事録を送るなど齟齬がないかをよく確認しましょう。また英語や現地語で契約を締結する場合は、弁護士などの専門家を入れて確認するようにしてください。契約書については独特の表現があり、少しのミスがビジネスに大きく影響します。ヨーロッパは基本的に契約社会です。

最後になりますが、日本企業は専門性に秀でた人材を多く抱えています。それは言語以上に大きな武器です。ビジネスにおいて言語は一つのツールにすぎません。語学のハンディを気にしすぎることなく、自信を持ってビジネスに臨んでいただければ幸いです。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ビジネスニーズに合わせた現地語に堪能なスタッフや弁護士などの専門家のご紹介だけではなく、貴社の外国語教育も支援いたします。お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

出典
Europa – European Union Top page
https://europa.eu/
Keating, D. (2020). Despite Brexit, English Remains The EU’s Most Spoken Language By Far. Forbes.
https://www.forbes.com/sites/davekeating/2020/02/06/despite-brexit-english-remains-the-eus-most-spoken-language-by-far/#7158c370412f
European Commission – Europeans and their Languages
https://ec.europa.eu/commfrontoffice/publicopinion/archives/ebs/ebs_243_en.pdf

無料ご相談フォームはこちら