見本市に出展して新たなビジネスを広げよう

アジアや中東などの多くの国々でさまざまなテーマの見本市が開催されていますが、その起源はヨーロッパにあります。歴史ある見本市は毎年ほぼ同じ時期に同じ会場開催され、大規模なものは数十万人以上の来場者を有します。今年は新型コロナウイルス(COVID-19)の流行で多くの見本市が中止・延期、またはオンライン開催を余儀なくされていますが、ドイツでは9月以降段階的に見本市を開催できるように動き始めています。今日は世界中で年間6,000以上開催されているといわれる見本市とは何か、どのようにしてみなさまのビジネスに役立てるのかをご紹介します。

見本市とは

見本市とは各企業が新たなビジネスの可能性を探るため、自社製品やサービスを一定期間同じ場所に展示することです。主力製品のみならず、市場に出ていない新たな技術を展示することもあります。見本市は中世のヨーロッパに起源があり、その後産業革命などを経てヨーロッパからアメリカにも波及します。日本で最初に開催された見本市は、1954年に大阪で開催された「日本国際見本市」です。現在では発祥地のヨーロッパだけではなく、世界の至る所で大規模な見本市が開催されています。特に中国は近年、大規模な国際見本市会場を新設し国をあげて大規模な見本市を開催しています。

見本市と展示会の違い

日本では見本市・展示会という単語は区別されることなく使われているようですが、見本市と展示会は正確には異なります。日本貿易振興機構(JETRO)は、見本市について「来場者を原則としてビジネス関係者に限定して (B to B)、商品の売買交渉を目的」とした商談の場と定義しています。それに対して展示会は「企業イメージの向上や新製品の紹介など、 当面の商取引よりもむしろ将来へ向けた企業価値の向上を目的」とした場です。見本市大国のドイツでは見本市は Messe、展示会は Ausstellungと明確に区別します。ドイツの見本市ではいかに参加者のビジネスに貢献するかということを重視しており、来場者はビジネスパートナーを開拓することを目的としてハンターのように会場を歩き回ります。来場者と出展企業とのマッチング行うようなイベントやプラットフォームを準備する見本市主催者もあります。

老舗の国際見本市には10万人以上の来場者が集まることも

老舗の国際見本市には10万人以上の来場者が集まることも

見本市に出展するには

見本市は締め切り前に主催者に申し込みを行います。先に取り上げたドイツでは見本市自体が一つの産業として重要視されており、国や大規模な国際見本市会場を有する自治体(ハノーバー、フランクフルトなど)と一丸となって盛り上げていこうと考えています。したがって見本市出展者は主催者から見れば出展料や宿泊施設の利用、現地の雇用を創出するお客様です。どの企業が出展しても歓迎されます。しかし、すべての出展企業が見本市で思った成果があげられるわけではありません。それではどのようにすればよりよい成果をあげられるのでしょうか。

目的を明確に

多くの出展企業の目的は新たなビジネスの開拓ですが、なぜ出展するのかをよく明確にした方が良いでしょう。上述の見本市と展示会の区別がつきづらいイベントも多く、新たな顧客や販路を広げるのであればそれに適したビジネスパートナーやバイヤーが多数参加しているかどうかをよく確認した方が良いでしょう。見本市を出展することを検討されている場合は、その前年に実際に下見をするのもよい方法です。新型コロナウイルス(COVID-19)の流行や日本との距離の関係から安易に訪れることが難しいという場合は、弊社のスタッフが下見を代行することも可能です。

準備は怠りなく

人気のある見本市は早々に募集を締め切ります。例えばドイツ・フランクフルトで毎年1月末から2月初旬に開催されるクリスマス見本市のChristmasworld 2021は、5月中旬に満席になりました。したがって主催者のホームページをよく確認して乗り遅れることのないように、準備を行いましょう。また、初めて出展される企業の方は何を展示するかということや日々の業務に追われて、来場者とどのように会話をするのか、得られたリードをどのようにビジネスにつなげるのかについて準備不足になることが非常に多いです。英文のカタログやホームページ、名刺の用意だけではなく、来場者へのサンクスメールや見本市終了後のコンタクト方法などをよく考えていきましょう。

また、宿泊先の確保などの実務面での準備も重要です。大規模な国際見本市には何万人もの来場者、出展者やスタッフが参加します。多くの見本市の開催期間前後は近隣のホテルが早い段階から満室になります。会場からかなり離れたところしか空いていない場合は、会場までの交通手段の確保にも気を配らなければなりません。

自らの学びの場として

伝統的な見本市は単なるビジネス機会の創出だけではなく、来場者・出展者が学び合う場としての機能を有しています。そこでは、大中小問わず多くの企業が自社の最新技術や製品、トレンドを出展します。多くの見本市ではその分野のトレンドに関するセミナーなども開かれています。そのため見本市開催期間は自分のブースで来場者対応をするだけではなく会場を歩き回って他社のブースを見学することで、ご自身の学びの場にもなるでしょう。ヨーロッパからの参加者は同業他社とのネットワーキングの場としても活用しています。なお、大規模な見本市会場は見て回るだけで1日かかることも多いため、現地スタッフを雇うなどして出展に余裕を持っておいた方がよいでしょう。

参加者の学びの場ともなる見本市

参加者の学びの場ともなる見本市

まとめ

いかがでしたでしょうか。国際見本市連盟によると、世界で開催される見本市には世界180カ国から、年間でのべ3億人以上の人が参加しているようです。見本市が出展企業にもたらす経済効果は、3000億円以上と言われています。多くの見本市は業種・業界という一つのテーマに沿って開催されるため、効率的なビジネス活動の場となることでしょう。新型コロナウイルス(COVID-19)の流行がおさまった暁には、ぜひ見本市出展を検討してみてください。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ヨーロッパでの見本市出展にご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。下見、出展代行、現地スタッフの手配など各方面からサポートいたします。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

出典
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)2015.「見本市と展示会の話 (改訂版)」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/j-messe/column/pdf/fair_exhibition.pdf
UFI The Global Association of the Exhibition Industry, April 2019. “Global Economic Impact of Exhibitions 2019 Edition”
https://www.ufi.org/wp-content/uploads/2019/04/Global-Economic-Impact-of-Exhibitions_b.pdf

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