ヨーロッパでの現地拠点設立に関する注意点

2020.08.26

ヨーロッパでの市場開拓などをめざして現地拠点の設立を検討される日系企業は少なくありません。その進出形態は駐在員事務所、支店、現地法人とさまざまな形があります。拠点を設立すること自体は難しくはない国も多いですが、設立前に十分な調査を行う必要があります。特に設立した現地拠点に日本から駐在員などを派遣しようと考えている場合はビザや滞在許可などをよく調べる必要があります。今日はヨーロッパに現地拠点設立をする上で考慮すべきいくつかの観点についてご説明します。

たとえEU加盟国であっても国ごとに法律は異なる

まず前提として頭に入れていただきたいのは、すべての法律は国によって大きく異なります。たとえ欧州連合(EU)加盟国であっても、フランス、ドイツやオランダなどそれぞれの国によって会社法や移民法などは大きく異なります。ドイツのように州や都市によって法律が異なる国もあります。したがって安易な情報をうのみにせずに、現地の専門家などに依頼して詳細を調査しましょう。インターネット上では日本語や英語で書かれている情報もありますが、古くなっているケースや法律の改正に対応していない情報も多数みられます。したがって現地語で最新情報を入手することが必要でしょう。

ヨーロッパの金融センター・フランクフルト

ヨーロッパの金融センター・フランクフルト

海外拠点の設立形態の違いをよく理解しよう

まず海外拠点の設立形態についてそれぞれの違いを理解しましょう。以下の図にある通り、現地拠点の携帯は駐在員事務所、支店、現地法人の主に3つに分けられます。これらは活動範囲や法的責任、法人税務などに違いがあります。なおご注意いただきたいのはこれらはあくまで一般論であり、国によって詳細が異なる場合も多々あります。例えば、EUの中には駐在員事務所での研究・開発活動、建設工事などの一部の事業への参画を認めていない国もあります。それ以外でも現地での商用銀行口座の開設可否や撤退時に解散の容易さなどそれぞれの形態に違いがあります。これらは国ごとに大きく異なりますので、よく注意する必要があるでしょう。

図:現地拠点の設立形態の違い

図:現地拠点の設立形態の違い

ビザや滞在許可について

初めて海外拠点を設立される企業の方がよく誤解される点として、海外拠点を設立すれば従業員を簡単にその国に派遣できるということです。海外拠点設立とビザ・滞在許可は別物です。ご理解いただきたい点としては、基本的にヨーロッパの多くの国は「海外からの投資は大歓迎だが、人の派遣はご遠慮いただきたい」と考えています。EUの統計をつかさどるユーロスタット (Eurostat)によると、EU内の失業率は新型コロナウイルス(COVID-19)流行前の2020年2月に6.4%となっています。これは日本の同時期の2倍以上に上ります。どこの国も自国民およびEU市民の雇用が最優先です。雇用の機会が増えることは大歓迎ですが、我々非ヨーロッパ人を本国から派遣することは「現地人の雇用を奪う」ものと見なされ、基本的には歓迎されません。

また、ビザや滞在許可の考え方は国によって大きく異なっています。たとえば駐在員事務所ではビザが下りにくいが、支店や現地法人ではビザが下りやすい国があります。そしてその逆のパターンの国もあります。中には企業が海外からの赴任者を受け入れること自体をライセンス制としている国もあります。この移民関連の法律も国ごとに大きく異なります。また、ほとんどの日本人は旅行や商用でビザに苦労したことがないためビザや滞在許可を軽視しがちですが、これらは海外拠点を設立する前に詳細を調査する必要があります。実際にビザや滞在許可のことを何も調べずに海外拠点を設立したものの、従業員のビザが下りずに計画変更を余儀なくされたという例は少なくありません。

ドイツのeAT(電子滞在許可証)

ドイツのeAT(電子滞在許可証)

スムーズに海外拠点を設立して、ビジネスにつなげるには

海外拠点設立には、設立自体の事務手続きやビザ・滞在許可以外にも、派遣する従業員の給与や税務、保険や健康管理など複数のことに配慮する必要があります。また家族を帯同する場合は家族のケアなども重要事項です。したがって、初めて海外拠点を設立する場合は現地のことに熟知した設立コンサルに依頼する方が賢明です。海外拠点設立という大きなプロジェクトについては、弁護士事務所や会計事務所だけではなく「包括した視点」で進めていくパートナーが必要なケースが多いです。単に日本と法律が異なることや言語の問題だけではなく、現地の弁護士や会計士などは基本的に自分の専門外のことについては一切配慮しません。したがって、海外拠点設立時に企業側が配慮すべきポイントを見落とすこともよく発生します。特にヨーロッパは国や州によって法律が大きく異なりますので、現地のことに熟知した専門家に依頼して現地拠点設立を進められることを強くお勧めいたします。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ヨーロッパでの現地拠点設立にご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。拠点設立からビザや滞在許可の取得、生活立ち上げにいたるまで各方面からサポートいたします。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

出典
Eurostat (European Statistical Office), May 2020. “Euro area unemployment at 7.4% EU at 6.7%”
https://ec.europa.eu/eurostat/documents/2995521/11054062/3-02072020-AP-EN.pdf/ce573d1a-04a5-6762-5b56-cb322cbdc5ac#:~:text=The%20EU%20unemployment%20rate%20was,were%20unemployed%20in%20May%202020.
総務省統計局『労働力調査 (基本集計)2020年(令和2年)2月分』
https://www.stat.go.jp/data/roudou/rireki/tsuki/pdf/202002.pdf
Bundesamt für Migration und Flüchtlinge, “Elektronischer Aufenthaltstitel (eAT)”
https://www.bamf.de/DE/Themen/MigrationAufenthalt/ZuwandererDrittstaaten/Migrathek/eAufenthaltstitel/eaufenthaltstitel-node.html