ヨーロッパの新型コロナウイルス(COVID-19)の現状(その3)

今月もヨーロッパの新型コロナウイルス(COVID-19)の現状についてお伝えしたいと思います。日本でも大きく報道されている通り、6月15日をもってヨーロッパ(EU加盟国、シェンゲン協定加盟国、イギリス)の国境管理が終了し、移動の自由が復活しました(スペインに関しては6月21日に終了予定)。本日はその後実際にヨーロッパ域内を移動した人の話と合わせてお伝えします。そのなお記載情報は2020年6月17日時点の情報となりますので、最新情報は各国政府機関などが公表している情報をご確認ください。

ヨーロッパの国境管理終了

新型コロナウイルス(COVID-19)流行に伴い3月中旬から始まった、3ヶ月にもおよぶヨーロッパ諸国内の国境管理がついに終了しました。ただ手放しで往来を許可しているわけではなく、各国政府は感染拡大防止のため自国民に対して不要不急の外出を極力控えるように呼びかけています。例えばドイツでは、国境管理終了のアナウンスとともにEU加盟国、シェンゲン協定加盟国、イギリス以外の全世界に対する渡航警告を8月31日まで延長することを決定しました。特に毎年夏に数週間に及ぶ長期休暇を取得する自国民に対して、バカンスとして人気のトルコ、北アフリカ、東南アジア、アメリカなどについてもいつ渡航できるかは不明であると釘をさしています。イギリスでは国境管理終了にさきがけて6月7日に翌日からアイルランドなどを除くイギリス国外からの入国者については滞在情報の事前登録の義務付けや、14日間の自主隔離措置を取ることを決定しました。フランスもほぼ全土でレストランやカフェなどの営業再開を許可するなど通常生活再開に踏み切りましたが、ウイルスとの闘いが終わったわけではないとして公共交通機関でのマスク着用などの予防措置を継続しています。

ヨーロッパ域内を渡航した人の話

今回国境管理終了後に世界で指折りの利用者数を誇るロンドン・ヒースロー空港から、ヨーロッパ大陸の別の国に渡航した方の話を聞くことができました。その方は6月17日にロンドンからヨーロッパの某都市に移動したあるヨーロッパ人のビジネスパーソンです。国境管理は終了したものの、ヒースロー空港内はドラッグストア以外の免税店はすべて閉まっており、これまでに見たことがないくらい閑散としていたそうです。ヒースロー空港は普段は1日あたり200,000名の利用者がいますが、現在は5,000名ほどです。出発便もターミナル5において1日たった20便ほどであり、まるで日本の地方空港かのようです。またすべての航空会社で乗客のマスク着用が義務付けられており、機内サービスも必要最低限しか提供されません。しかし、国境管理が終了したため飛行機はオーバーブッキングだったとのことです。

閑散としているロンドン・ヒースロー空港の構内

閑散としているロンドン・ヒースロー空港の構内

大幅に減便されているロンドン・ヒースロー空港からの出発便

大幅に減便されているロンドン・ヒースロー空港からの出発便

目的地に到着後もすぐに飛行機を降りることはできません。その国や自治体が定めるルールに従って目的地における滞在先住所や飛行機内での座席位置の記入などを行います。入国審査においても、通常時はヨーロッパ人であればパスポートを見せるだけで何も問われることがありませんが、渡航先や渡航目的などに関する具体的な質問をされたそうです。その後は問題なく入国することができたそうですが、検疫・隔離措置に関する情報が日々変わるため入国できるまで非常に不安であったとのことです。新型コロナウイルス(COVID-19)の流行状況による行動制限などは、その前日に決定されることもあります。フライトのキャンセルも頻繁に発生しうるため、航空会社からのアナウンスについても注意する必要があります。

今後の日本人のヨーロッパ渡航について

6月17日現在、長期のビザや滞在許可証を持たない日本人のヨーロッパ入国は原則認められていません。早くて7月1日から一部の国や地域からの入国が認められる可能性もありますが、一斉解禁にはならないと考えています。例えばすでに現地の大学などから入学許可を有している学生など、明確な渡航理由がある人を優先することが考えられます。また、ヨーロッパの多くの国が陸続きで移動の自由が認められているため、どの国からの入国を許可するか、制限するかという判断は各国の慎重な話し合いと合議により決定されます。

また、仮に認められたとしてもその検疫・隔離措置は各国ごとに決定されるため入国後すぐにビジネス活動を行うことができるとは限りません。たとえば、イギリスでは上述の通り、原則イギリス外からの入国者については14日間の隔離および行動制限が課されています。ドイツではロベルト・コッホ研究所が指定した高リスク国・地域からの入国者については14日間の隔離および行動制限が課すことにしています。そのため、このような検疫・隔離措置が行われている状況での入国はお勧めできません。新型コロナウイルス(COVID-19)の状況は日々変わりますので、いつも以上にスケジュールに余裕を持ってビジネスを行うことをお勧めいたします。

新型コロナウイルス(COVID-19)下でヨーロッパのビジネスを行っている方や、お困りの方はいらっしゃいませんか。ジェイシーズでは現地担当者ともに皆さまのご相談に応じますので、お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

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