ヨーロッパでの新型コロナウイルスのワクチン接種
日本でもようやく本格的なワクチン接種が始まりましたが、ドイツ在住の筆者は先日新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンを接種しました。ここ1ヶ月ほどヨーロッパの新型コロナウイルスの感染状況は比較的落ち着いており、各国が緩和政策に踏み切っています。ワクチン接種が進んでいることもあり、ポスト・コロナの状況が見えてきています。本日はワクチンに関する情報について簡単にお伝えできればと思います。なお記載情報は2021年6月7日時点の情報となりますので、最新情報は各国政府機関などが公表している情報をご確認ください。
ワクチン接種を行うかどうか
欧州委員会では入国の14日以前にワクチン接種を完了した人の入国について緩和する方向で協議に入っています。さらにEU(欧州連合)ではEU市民及び在留者にデジタルIDを発行して、域内渡航自由化に活用する動きがあります。これは新型コロナウイルスワクチンの接種歴、過去の感染からの免疫の有無、直近のPCR検査結果で陰性であったことなどをスマートフォンで表示できる仕組みのようです。またEU域外からの渡航者についても、同等の証明を提出することを求められる可能性があります。新型コロナウイルスのワクチンについては副反応などに懸念を持たれて、接種に躊躇される方も少なくはないと思います。ワクチン接種自体は個人のご判断だと思いますので、それについては言及しません。しかし、ここ1年から2年くらいは「新型コロナウイルスの予防接種もしくは免疫の有無、感染していないことの証明」が、ヨーロッパ上陸の1つの条件になろうかと思います。
ワクチン接種を行った場合の注意点
次に海外へ渡航される可能性がある方が、ワクチンを接種される場合についての注意点です。日本でも新型コロナウイルスワクチンを接種した場合接種証明書が発行されるようですが、まずこれについては絶対なくさないようにしてください。また厚生労働省のホームページを拝見すると日本語で記載されているようですが、もし仕事で海外に渡航する方がいらっしゃいましたら、トラベルクリニックなどを訪問して英文に翻訳してもらう方が無難だと思います。ちなみにヨーロッパでは新型コロナウイルス流行前から手のひらサイズのワクチン手帳にワクチンの接種履歴を記録する習慣があり、筆者もワクチン手帳を保有しています。日本でも母子手帳に幼年期のワクチンの接種履歴を記録しますが、ヨーロッパではそれと同じように成年後に接種したワクチンを記録しています。内容は接種日、接種したワクチンの種類、ロット番号、接種場所、接種した医者のサインなどです。特に新型コロナウイルスに関してはワクチンの接種歴が諸外国入国の必須条件となる場合もありますので、その場合は海外渡航時に原本(日本語)と英訳が必要になるかもしれないとお考えください。
どのワクチンを接種するか
最後に新型コロナウイルスワクチンの種類について述べたいと思います。まず新型コロナウイルスの緊急用ワクチンとしてWHO(世界保健機関)に認可されているワクチンがあります。その中でも各国・地域が承認するワクチンがあります。例えば日本で承認されているものは、ファイザー、武田/モデルナ、アストラゼネカ社のもので、ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセンファーマ)が申請中です。EUにおいては上記の4つが承認済で、アメリカにおいてはアストラゼネカは未承認です。この4つ以外でWHOに承認済のワクチンとしてはインドや中国のワクチンもあります。ロシアのスプートニクVなどWHO未承認のワクチンもあります。
ワクチン接種後に他国に渡航する場合、その国で接種したワクチンが認可されているか、もし認可されていない場合であっても新型コロナウイルスのワクチンとして認められているかが重要です。日本だけではなく、「ワクチン接種済とみなすかどうか」の基準は各国で決められます。さらに、「どのような状態(ワクチン接種済、感染歴があり回復していることが証明できる、直前のPCR検査で問題がないなど)であれば入国できる」「どのような状態であれば、隔離などの措置が不要である」については、各国の判断で決められます。EUの場合は最終的な判断は加盟国により異なります。
日本に関しては日本に在住されていて日本でワクチンを接種する予定の方についてはファイザー、武田/モデルナのいずれかを接種なさると思います。これらについては多くの国に入国するのに認可済みワクチンとして認められると思います。しかし、もし海外赴任されている従業員の方が現地で接種する場合や海外の取引先の方、海外からの新規採用者の方、実習生の方に来日いただく場合、その方が接種したワクチンの種類によっては「日本政府が承認したワクチンではないので未接種」扱いとされる可能性がゼロではありません。まだまだ海外との往来が自由ではありませんが、ここ数年は各国での対応が異なると思いますので、海外渡航をされる際は渡航先および日本の最新の規制をよくご確認いただくことをお勧めします。
出典など
– European Commission (2021). Commission proposes a trusted and secure Digital Identity for all Europeans. [online] Available at: https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_2663.
– European Commission (2021). Coronavirus: Commission proposes to ease restrictions on non-essential travel to the EU while addressing variants through new “emergency brake” mechanism. [online] Available at: https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_2121.
– European Commission (2021). Safe COVID-19 vaccines for Europeans. [online] Available at: https://ec.europa.eu/info/live-work-travel-eu/coronavirus-response/safe-covid-19-vaccines-europeans_en.
– 厚生労働省 (n.d.). ワクチン接種の証明書は発行されますか。|Q&A|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省. [online] Available at: https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0069.html.
– 厚生労働省 (2021). 新型コロナワクチンの有効性・安全性について. [online] Available at: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_yuukousei_anzensei.html.
– Our World in Data (2021). Coronavirus (COVID-19) Vaccinations – Statistics and Research. [online] Our World in Data. Available at: https://ourworldindata.org/covid-vaccinations.
– U.S. Food & Drug Administration (FDA) (2020). COVID-19 Vaccines. [online] Available at: https://www.fda.gov/emergency-preparedness-and-response/coronavirus-disease-2019-covid-19/covid-19-vaccines.
– World Health Organization (WHO) – Prequalification of Medical Products (IVDs, Medicines, Vaccines and Immunization Devices, Vector Control). (2020). Coronavirus Disease (COVID-19). [online] Available at: https://extranet.who.int/pqweb/vaccines/covid-19-vaccines.
浜田真梨子(はまだ・まりこ)
執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(欧州統括)
大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。