コロナ禍における見本市出展

先月のコラムで見本市についてご紹介いたしました。今年は新型コロナウイルス(COVID-19)の流行で多くの見本市のスケジュールなどに影響が出ています。ヨーロッパでは9月以降開催を予定している見本市は少なくはないですが、仮に開催できたとしても日本からの渡航は容易ではありません。ドイツなど一部の国では日本からの渡航を認めておらず、帰国後も14日間の自主隔離を余儀なくされます(2020年9月1日時点)。本日はこのような状況の中でどのように見本市に出展してビジネスにつなげるかについてご提案いたします。

コロナ禍で海外渡航は容易ではない

コロナ禍で海外渡航は容易ではない

見本市出展の意義

経済産業省では、「見本市(展示会)は単に商品を展示(陳列)する場ではなく、出展者が商談を通じて商品の販売につなげたり、正確な商品情報を伝える場」と定義しています。ドイツでは展示会と見本市は明確に区別されており、見本市については本気の商談の場として機能しています。また、見本市出展について1回で高い効果をあげることは少なく、3回以上連続して出展することが望ましいとされています。多くの来場者(潜在顧客)は毎年その時期に必ずその会場を訪れる人が多いです。1年目は珍しがられ、2年目以降に正式なお付き合いとなることが多く、初回は見積もり依頼のみで正式な発注とならない、もしくは小口発注となることでしょう。

見本市出展の準備

初めて見本市に出展する企業が初回はどれだけ入念な準備をしても当日の運営や顧客フォローなどで失敗することがほとんどです。特に失敗しやすいポイントは以下の点です。

( 1 ) 価格設定の失敗

欧米企業の利益率、送料などをよく考慮しておらずに価格を設定してしまい、「高い」と言われて一蹴される。現地の市場価格や利益率、卸売業者を対象にするのか、エンドユーザを対象にするのかなどよく考えた上で価格設定を行う必要がある。また送料や通関コストなどをよく調べておらずに、見積回答に時間を要して商機を逃すケースもある。

( 2 ) 資料の準備不足

これは見本市出展に限らず、顧客目線での資料が準備されておらず顧客にアピールする資料が作成されていない。国際見本市の場合は基本的に英語のみの資料で問題ないが、単に日本語を英訳しただけではなく、顧客のニーズを理解した訴求ポイントが明確な資料を準備する必要がある。場合によっては日本人以外のデザイナーに依頼し、ネイティブチェックは当然入れる。近年では紙の資料を嫌う顧客も多いので、データでどのように渡すのかなどをよく考えておく。

( 3 ) 顧客データの活用方法

見込み客に大して見本市出展後にどのようにアプローチするのかを考えておらずに、見本市終了後も業務に追われて時間だけが経ってしまう。そしてコンタクトをせずに商機を逃す。また、名刺を持ち歩かない顧客もいるので見込み客データをどのように収集・管理するかについて検討しておく必要がある。

これらの失敗は新型コロナウイルス(COVID-19)流行関係なく、よく見られるありがちなことです。しかし、コロナ禍において見本市に出展する場合、より入念に準備を行う必要があります。

世界中から来場者が集まる見本市

世界中から来場者が集まる見本市

コロナ禍における見本市出展

新型コロナウイルスが流行していますが、新しい市場にチャレンジするということは素晴らしいことです。もうすでに申し込みを済ませており、出展するだけという企業の方もいらっしゃることでしょう。しかし従業員の方が現地に渡航することが難しいため現地在住者を一時的に採用するという企業もあります。しかしそのようなオプションを検討される場合、採用する人材については十分吟味する必要があります。

語学のプロはビジネスのプロではない

来場者(潜在顧客)にとって、出展企業の対応者は十分な商品知識に加えて、価格決定権を有していることが当然であると考えています。したがって、来場者対応は単に英語を含む外国語ができれば誰でも良いというわけではありません。いくら語学ができても業界・商品知識や営業経験のない方にお願いした場合、今後のビジネス展開は期待できないでしょう。大抵の場合彼らは、いい顧客になりそうな見込み客を見抜く目も持っていないため、適切な来場者にアプローチせずに貴社の商機を逃すこともありえます。見本市に出展した限りはそれをどのようにして次のビジネスにつなげていくのかという視点で対応することが重要です。このような対応は単なる語学のプロには期待できません。

見本市は基本的にカオス

いくら入念に準備をしていても想定外のことが発生することが多いです。単にカタログを渡して簡単な質問に答えればよいと考えている企業の方はいらっしゃいますが、後日「この商品とこの商品の見積もりを名刺に書かれたアドレスに送ってくれ」「展示したサンプルを見本市終了後に売ってもらえないか」「航空便と船便の価格の違いは」などといったさまざまな要望や質問があります。特にコロナ禍においては、出展ブースへの来場者リストの記録と主催者への提出や、ブースでの除菌剤の準備などを主催者側から急に要請されることもあります。そのようなことに柔軟に対応してもらえる人材なのか、見本市の来場者数や出展規模などを考慮すると何名であれば対応可能なのかよく検討する必要があります。

また、当日のみ採用した担当者は基本的にはその場のその時間しか対応しません。特に見本市会場や現地企業が手配した通訳やアシスタントはその時間内でしか対応はできません。したがって、時間外の実施報告の作成やもらった名刺の日本への郵送などといった小さなことについても対応は期待できないと考えた方が良いでしょう。

ジェイシーズがお手伝いできること

弊社ではヨーロッパを拠点にしている担当者を抱え、見本市の出展代行だけではなくその後のフォローアップなどを包括的にお手伝いすることが可能です。語学やビジネス経験豊富な人材を複数有するだけではなく、「見本市出展を通じて、お客様のビジネスをどのように拡大するか」という視点に立って多角的にお手伝いいたします。以下はそのサービスの一例ですが、ご興味があれば是非お問い合わせください。

(例)

内容価格(税抜)実施事項
見本市当日担当¥45,000〜
(1名、1日あたり)
語学およびビジネス経験豊富な人材が当日貴社の営業担当として来場者対応を行います
見本市資料作成支援¥50,000〜貴社ご担当者が不在の場合であっても見本市来場者への訴求力ある資料を作成します(ネイティブチェック含む)
見本市下見¥45,000〜来年度以降の出展準備に関する下見や競合他社の価格調査などを行います

その他お客様のニーズに応じて柔軟に対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

出典
経済産業省(2014)「展示会産業概論」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/7.5syo.pdf

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