ルーマニア・ビジネスの魅力

今月はヨーロッパからは、ルーマニアについて取り上げます。先月取り上げたモルドバの隣国でモルドバとも関係が深い国です。モルドバはEU非加盟国でこれから加盟をめざしている国ですが、ルーマニアは2007年に隣国のブルガリアとともにEUに加盟しました。在留邦人も300名ほどで日本と関わりが決して強いとは言えませんが、さまざまな産業において魅力のある国です。今日はルーマニアでのビジネスの魅力をご紹介します。

ルーマニアとは

ルーマニアは東ヨーロッパに位置しており、ウクライナ、ハンガリー、モルドバ、セルビアおよびブルガリアと隣接しています。面積は日本の本州とほぼ同じ約23.8万平方キロメートルで人口は約1,976万人です。一部ハンガリー系やドイツ系の住民はいるものの、8割以上がローマ帝国の末裔のルーマニア人であり歴史的背景から現在もイタリアとの関係が強いです。ラテン系で計画変更などもよく発生するけれども、比較的まじめな国民性が特徴です。旧共産圏ということもあり女性の社会進出も進んでいます。1989年まではチャウシェスクによる独裁政権が取られていましたが、同年12月のルーマニア革命後は民主化され市場経済が導入されました。

観光地としても有名な国民の館(ルーマニア・ブカレスト)

観光地としても有名な国民の館(ルーマニア・ブカレスト)

ルーマニアの経済と主要産業

2018度のGDPは約2,400億米ドル(世界46位)となっています。EUの中でも安定した経済成長を続けており、ここ数年のGDP成長率は約4%です。もともとルーマニアは農業国でしたが、天然資源に恵まれています。近年ルーマニア政府は経済外交を重視しており、アジア諸国との関係強化が進んでいます。また、近年は他国同様IT産業に力を入れており、ITエンジニアには所得税を課さないなどといった大胆な政策をとっています。UiPathなどのIT系のスタートアップ企業の台頭も著しいですが、世界的なIT企業であるGoogleやAmazon、Microsoftなどもルーマニアに研究や開発の拠点を設けています。日系企業の中でもNTTデータが2013年にクルジュ=ナポカの企業を買収しました。

ルーマニアでビジネスを行うメリットと注意すべき点

ルーマニアで特筆すべき点としてはEU加盟国であるということに加えて、物価の安さとITインフラの発達が挙げられます。物価の安さはその賃金に現れています。平均賃金はヨーロッパ/EUの中でブルガリアと並んで最低レベル(月80,000円程度)と言われています。また近年IT産業に力を入れていることもあり、ブロードバンドは発達しておりその質は世界第4位と言われています。

その反面、賃金に関しては業種によって最低賃金が厳しく定められています。その規制は職種関係なく運転手や清掃員などの事務スタッフ含め徹底されます(注:人材流出の多い建設・ITなどの分野では、所得税や社会保険の低減率などが優遇されることもあるようです)。また、高度なITインフラを有しているものの、電気・ガス、水道、道路といったその他の社会インフラが未発達の部分もあります。特に地方では道路などが未整備の地域が目立ちます。

さらに、異文化理解という点についても配慮が必要です。上述の通り計画変更が多いため、コストについてもそれを見越しておく必要があります。またルーマニア人は積極的に他のヨーロッパをはじめとして海外に進出していてネットワークの強さに特徴があります。この傾向はIT分野で強く見られます。しかしそのネットワークをうまく活用できるかどうかがビジネスのキーになるとも言えるでしょう。

日系企業がルーマニアで活躍を期待されている分野

ルーマニアはEU加盟国でありEU諸国に加え、隣国のウクライナやモルドバなどとのつながりが強い国です。しかし、ヨーロッパだけではなく日本を含めたアジア系企業にも大きく期待しています。これまで述べてきたIT産業はもちろんのことですが、インフラ整備についても期待が大きいようです。日系企業においてもIHIが「ブレイラ地区の吊橋・道路の設計・施工プロジェクト」を受注しました。大きなプロジェクトは価格だけではなく技術的な信頼性も重要視されることも少なくありません。したがって、これまで日本国内だけではなく各国で豊富プロジェクト実績がある日系企業にとっては活躍の場となるのではないでしょうか。また、この受注に関しては、IHIのこれまでの実績に加えて、優良な地元企業とのアライアンスがキーとなったようです。案件によっては、現地の優良企業と手を組むことを考慮した活動を行う必要があるでしょう。

ルーマニアもEUの一員とはいえまだまだ発展が見込まれる国の一つです。ビジネスの進出先としてルーマニアもぜひ検討してみてください。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ルーマニアやヨーロッパでビジネスにご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

出典
外務省「ルーマニア基礎データ」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/romania/data.html
日本貿易振興機構(ジェトロ)「ルーマニア概況」(https://www.jetro.go.jp/world/europe/ro/basic_01.html
The Moldovan Investment Promotion Agency(http://invest.gov.md/exportatorii)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ブカレスト事務所主催「ルーマニア60分ウェビナーシリーズ」(2020年6月10日、17日開催)
Ookla, LLC “Speedtest Global Index” (https://www.speedtest.net/global-index

無料ご相談フォームはこちら