【アメリカの隣国】カナダの経済について

前回の記事で、アメリカの隣国カナダについての基本情報をお伝えしました。世界第二の広大な国土を有し、豊富な天然資源に恵まれた肥沃な国のカナダですが、EU主要国に匹敵する経済力を持つ経済大国でもあります。今回は、貿易データなどを含めたカナダの経済の基本をお伝えします。

世界第九位の経済大国・カナダ

IMF(国際通貨基金)がまとめたレポート「ワールド・エコノミック・アウトルックデータベース」(World Economic Outlook Database, 2024)によると、2023年度のカナダのGDPは2.117兆ドル(約317兆5500億円)で、世界第九位です。一人当たりGDPは55,890ドル(約838万3500円)で、世界第19位です。2022年度のGDPの年間成長率は3.4%で、現在もそのペースを維持しています。

2020年度のカナダの年間貿易額は、輸出が6370億ドル(約95兆5500億円)、輸入が6310億ドル(約94兆6500億円)です。主たる貿易相手国はアメリカで、輸出額の76.9%をアメリカが占めています。以下、EU(4.6%)、中国(3.7%)、イギリス(2.4%)、日本(2.3%)と続いています。貿易面においてカナダは、アメリカと一蓮托生の関係にあると言っていいでしょう。

カナダの主な輸出品目は原油および原油製品で、全体の26%を占めています。以下、自動車および自動車部品(10%)、工業機械(7.2%)、プレシャスメタルなどの天然資源(5.8%)、電子機器および部品(3.1%)、プラスチック(2.8%)、医薬品(2.0%)などとなっています。

カナダの主要国内産業

カナダの主要国内産業は、1位が不動産業(不動産販売・賃貸・リース)で、2023年度の市場規模2660億カナダドル(約27兆1320億円)となっています。

次いで製造業(1960億カナダドル、約19兆9920億円)、原油・ガスなどのエネルギー産業(1600億カナダドル、約16兆3200億円)、金融および保険(1520億カナダドル、15兆5040億円)、建設(1500億カナダドル、約15兆3000億円)、医療および社会福祉(1490億カナダドル、15兆1980億円)、行政サービス(1420億カナダドル、約14兆4840億円)、科学・技術サービス(1350億カナダドル、約13兆7700億円)、教育(1100億カナダドル、11兆3220億円)、小売業(1060億カナダドル、10兆8120億円)となっています。

石油や天然ガス、各種の天然鉱物などの資源に恵まれたカナダですが、経済は意外とサービスセクターがリードするサービス産業主導型経済となっています。それを裏付けるように、カナダの労働人口の四分の三は、何らかのサービス産業に従事しています。

比較的良好な経済が維持できている一方、失業率は直近2025年2月時点で6.6%と、やや高めの水準で推移しています。

カナダ経済を牽引している州は?

アメリカと同様、複数の州で構成された連邦国家のカナダでは、特定の州が経済を牽引しています。

筆頭はオンタリオ州(州都トロント、人口1562万人)で、GDPに占める割合38.16%(2023年度時点、以下同じ)となっています。次いでケベック州(州都ケベックシティー、人口885万人、19.75%)、アルバータ州(州都エドモントン、人口468万人、15.42%)、ブリティッシュコロンビア州(州都ヴィクトリア、人口553万人、13.97%)と続いています。10の州と3の準州で構成されるカナダですが、経済面では上位四州で全体の87.3%を占めています。

好調な経済を背景に、上位四州では移民や他州からの人口流入が続いています。特にアルバータ州の人口増加が顕著で、2022年から2023年までの一年間で人口が4%増加しています。アルバータ州は、州都エドモントンや隣接都市カルガリーなどへの移民増加や他州からの移住者が引き続き増加しており、今後もさらなる人口増と経済拡大が期待されています。

カナダと日本とのつながり

カナダと日本とのつながりですが、両国の関係は1928年のカナダ政府による日本への外交使節団の派遣に端を発しています。二つの世界大戦を経験しつつ、両国は人的交流などを含めて外交・経済的結びつきを強めてきました。今日、カナダは日本が主導するCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)に加盟するなど、日本にとって切り離せない重要なパートナーとなっています。

貿易面では、カナダから日本への輸出が158億ドル(2023年度、約2兆3700億円、以下同じ)、日本からカナダへの輸出が207億ドル(約3兆1050億円)となっています。カナダから日本への主な輸出品目は、石炭・液化天然ガスなどのエネルギー資源、銅・鉄・ニッケルなどの天然鉱石、小麦・豚肉・牛肉・大豆などの農産物、医薬品、木材などの森林資源となっています。一方、日本からカナダへの主な輸出品目は、自動車、工業機械、医療機器などの精密機械などとなっています。

カナダは、ワーキングホリデービザを取得できたり、起業を目指す人に対して起業ビザを発行してくれるなど、日本人がビジネスをしやすい環境が整った国であると言えるでしょう。日本人を含む外国人に対して、不動産物件取得に一定の制限がかけられるなどの突発事情が発生することはありますが、アメリカと比べてもビジネス立上げの自由度は大きいと思われます。生活コストや人件費も相応に安く、投資コストも相応に抑えられる可能性が高いでしょう。

執筆者

前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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