アメリカの隣国「カナダ」とはどういう国か?

「カナダから輸入するすべてのモノに25%の関税をかける」「アメリカ第五十一番目の州にする」等々、トランプ大統領の過激な言動が隣国カナダを惑わしています。アメリカと陸続きの隣国でありアメリカ最大の貿易パートナーでもあるカナダは今、国民が一致団結して「反トランプ」の旗印を鮮明にしています。ところで、そんなカナダという国は、そもそもどんな国なのでしょうか。今回は、知っているようで知らないカナダについての基本情報をお伝えします。
人口約四千万人の、世界で二番目に大きな国土を持つ国
カナダは人口4,012万人の、世界で二番目に大きな国土を持つ独立国家です。創立日は、イギリスからの独立を果たした1867年7月1日です。アメリカの独立記念日は7月4日ですが、カナダでは毎年7月1日を「カナダデー」(Canada Day)として祝っています。
国の成り立ちはアメリカに近いですが、フランスと長らく国土を争ってきた歴史の関係で、英語とフランス語が揃って公用語として使用されています。政体は立憲君主制で、イギリス国王が国家元首という扱いになっていますが、実質的にはカナダ国民によって選出される首相が国家元首を務めています。
カナダは、10の州(Province)と3の準州(Territory)によって構成されている連邦国家です。連邦政府は議院内閣制を採用しており、与党の代表者などが首相を務める構造になっています。

豊富な天然資源を持つ資源大国
カナダと言えば、世界第二位の大きさを誇る広大な国土に眠る豊富な天然資源を思い浮かべる人が多いでしょう。中でも特に豊富なのが石油と天然ガスで、石油埋蔵量はベネズエラ、サウジアラビアに次いで世界第三位、天然ガスの生産量も世界第五位で、世界で最も有望な採掘地域を有しているとされています。
石油や天然ガスに加えて、亜鉛、ニッケル、銅、鉛などのベースメタルの主要生産国でもあり、ウラン鉱石、コバルト地金、アルミニウム地金、白金鉱石などの埋蔵量も世界の上位にランクインしています。さらにリチウムやニッケルといった、電気自動車のバッテリー生産に必要な鉱物を一国だけで産出できる唯一の国とされています。
また、森林資源も豊富で、世界全体の森林面積の9%を有しています。カナダの森林認証面積(持続可能であると認定された森林面積)は1億8500万ヘクタールで、世界全体の35%に相当します。森林国としてはロシア、ブラジルに次いで世界で三番目の大きさを誇っています。
さらに、カナダは水資源も豊富です。カナダは世界有数の水力資源国であり、国民一人当たりの水資源量は日本の23倍に相当します。豊富な水資源とともに、カナダでは水力発電が電力供給における大きな役目を果たしています。

カナダの人口構成、主要都市、言語
約4000万人のカナダの人口構成ですが、マジョリティが白人で全体の69.8%となっています。次いで南アジア人(7.1%)、カナダ先住民(5.0%)、中国人(4.7%)、黒人(4.3%)、フィリピン人(2.6%)、アラブ人(1.9%)、ラテンアメリカ人(1.6%)となっています。白人がマイノリティに転じつつあるアメリカと比べて、白人の比率が依然として高い水準になっています。
カナダの主要都市ですが、最大人口を誇るのがトロントで、279万人です。次いでモントリオール(176万人)、カルガリー(130万人)、オタワ(101万人)、エドモントン(101万人)、ウィニペグ(74万人)、ミシサガ(71万人)、バンクーバー(66万人)となっています。人口の9割近くがアメリカとの国境沿いのエリアに居住しているとされています。
カナダの公用語は英語とフランス語ですが、地域によって使われている言語が異なります。ブリティッシュコロンビア州やアルバータ州などの比較的西寄りの旧イギリス植民地のエリアでは、フランス語が生活レベルで使われることはほとんどありません。しかし、ケベック州などの旧フランス植民地のエリアでは、今でもフランス語が主たる公用語として使われています。

温厚で物静かなカナダ人
カナダ人の国民性ですが、一般的なアメリカ人に言わせると、カナダ人はアメリカ人とは性格がまったく違うそうです。筆者から見ても、カナダ人はアメリカ人よりもおとなしく、多くのアメリカ人のように自己主張をしない人が多いように見えます。総じて温和な人が多く、カナダの主要都市でも治安が良い理由になっているように思われます。なお、カナダはアメリカと違い、銃の所有や使用が法律で厳しく禁じられています。
また、カナダ人はアメリカ人よりも「移民ウェルカム」の人が多いとされています。カナダは広大な国土のわりに人口が少なく、今もなお移民の流入による人口増加を期待している国でもあります。人種差別の少なさは、そんなカナダ国民を象徴する国民性のひとつになっているようです。
自己主張をあまりしない温厚な性格のカナダ人ですが、トランプ大統領のカナダに対する一連の言動については大いに怒りをあらわにしています。これまでにアメリカ製品のボイコット運動にまで発展しつつありますが、おとなしいカナダ人を怒らすと一体どうなるのか、最後まで注目したいと思います。

前田 健二(まえだ・けんじ)
上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。