【アメリカ人の生活】アメリカでの生活に欠かせない「クレジットスコア」とは?
前回の記事で、現在アメリカで若者やクレジットスコアが低い人などを中心にBNPL(Buy Now Pay Later, 今買って後で支払う)の利用が拡がっていることを紹介しました。クレジットスコアが比較的低い人でも利用できる可能性が高く、かつクレジットスコアに影響を与えないことなどが大きな理由ですが、そもそもクレジットスコアとは何でしょうか。今回は、アメリカでの生活に欠かせない「クレジットスコア」について解説します。
比較的最近導入されたクレジットスコア
クレジットスコア(Credit Score)とは、ローンやクレジットなどの金融サービスを利用する人に関するその人の信用情報および信用スコアのことです。アメリカでは比較的近年導入が始まり、1989年の金融データ分析会社FICO(Fair, Isaac, and Company)が開発したFICOスコアの登場をもってアメリカでの本格的なクレジットスコアの運用が始まったとされています。
FICOスコアは、アメリカ政府が1995年にフレディマック(Freddie Mac, 米連邦住宅金融抵当公庫)傘下の金融機関に対して、貸し倒れが相次いだ住宅ローンの審査での利用を義務付けたことからモーゲージローン金融機関を中心に利用が拡がり、今日までにクレジットカード会社などを含む他の多くの金融機関によって利用されています。
クレジットスコアは、利用者のローンやクレジットなどの利用状況や返済履歴などをベースに算出されるため、金融取引以外の信用ベースの取引シーンでも多く使われています。アメリカでは現在、銀行などの金融機関やクレジットカード会社などに加えて、保険会社、電気や水道などの供給業者、賃貸住宅の管理会社、人材採用中の企業などによっても利用されています。
300点から850点の間で信用スコアを算出
クレジットスコアは、利用者のローンやクレジットなどの利用状況や返済履歴などをベースに、300点から850点の間で信用スコアを算出します。300点が最低で、850点が最高です。信用調査機関にもよりますが、クレジットスコアは概ね以下のような評価基準が設定されています。
300点~579点(Poor, 危険)
580点~669点(Fair, 概ね良し)
670点~739点(Good, 良し)
740点~799点(Very Good, とても良し)
800点~850点(Excellent, 最高)
一般的には、クレジットスコアが600点を下回ると多くのシーンで「危険」領域に踏み込みつつあると判断されるようです。賃貸住宅の契約締結、携帯電話の利用契約締結、水道や電気の利用申込、自動車ローンの利用申込などといった、普段の暮らしに関わる各種の手続きについては670点以上のクレジットスコアが確保出来ていれば問題なさそうです。
クレジットスコアはどのようにして決まるのか
では、クレジットスコアはどのようにして決まるのでしょうか。FICOは、クレジットスコアを算出するファクターとして、具体的に以下を挙げています。
・過去の返済・支払履歴
過去に借入や割賦支払などを利用した際の返済・支払履歴です。返済遅延、破産申立て、返済条件変更、差し押さえなどの事実はここに反映され、スコアに影響を与えます。
・現在の借入・与信枠利用額
現在の借入やクレジットカードなどの与信枠利用額です。借入が過多であると判断されるとスコアに影響を与えます。
・クレジットヒストリー
これまでに利用してきた借入金などのクレジットヒストリーです。事故を起こさず、完済したケースが多いほどスコアにプラスの影響を与えます。また、無事故のクレジットヒストリーが長いほどスコアにプラスの影響を与えます。
・利用してきたクレジットの種類
これまでに利用してきたクレジットの種類もスコアに影響を与えます。リボルビング払いなどを利用し、事故がないケースなどでは特にプラスされます。
・クレジットスコアの照会状況
ローンやクレジットカードの利用を申し込むと、金融機関がクレジットスコアを照会し、その事実が記録に残されます。金融機関によるクレジットスコアの照会件数があまりにも多いと判断されると、クレジットスコアにマイナスの影響を与えます。
クレジットスコアは、特に過去の返済・支払履歴を重く評価するようで、過去に相応の回数の借入や割賦支払などを行い、事故を起こさなかった人を高く評価する傾向にあるようです。一方で、過去に金融商品を利用したことが少なく、事故を複数回起こしてしまった人などについては、厳しく評価するようです。
クレジットスコアを上げるには?
自動車ローンの利用から賃貸住宅の入居申し込み、あるいは求人企業への応募など、クレジットスコアが低いと生活そのものが成り立たなくなる現在のアメリカですが、クレジットスコアが低い人がスコアを上げるには、一体どうすればいいのでしょうか。
最も重要なことは「各種の支払いを確実に行う」ことです。クレジットスコアは、家賃の支払い状況、割賦金の支払い状況、公共料金の支払い状況など、生活で行われる各種の支払い状況を細かくモニタリングしています。特に家賃、携帯電話料金、保険料などの事故情報は即時に反映されます。「各種の支払いを確実に行う」ことがクレジットスコアを上げる最大のポイントです。
第二のポイントは「債務残高を減らす」です。特にクレジットカードのリボルビング払いを利用している場合、リボルビング払いの空き枠を出来るだけ広げる必要があります。あるフィナンシャルプランナーは、クレジットカードの空き枠率を最低でも50%程度維持するようアドバイスしています。また金利が高いクレジット債権がある場合は、優先して返済するようにすべきでしょう。
第三のポイントは「クレジットヒストリー」を維持することです。例えばクレジットカードの場合、利用額をすべて支払い、債務を返済してしまったとして口座をクローズしてしまうと、そこでクレジットヒストリーが終了してしまいます。たとえ使っていないとしても、口座が存在する限りは「温存」しておく方がベターです。
また、ローンやクレジットの申し込みを過度に行わない、金利が高い金融商品などはできるだけ使わないことなどにも注意する必要がありますが、やはり最大のポイントは「各種の支払いを確実に行う」ことです。アメリカにお住いの方には、これをしっかりと守っていただいて、ご自身のクレジットスコアを高めていただければと思います。
前田 健二(まえだ・けんじ)
上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。