ドイツに駐在が決まったら〜ドイツのビザ・滞在許可申請に関する基礎知識

日本国籍保有者を含む、非EU市民がドイツに長期滞在する場合、在日ドイツ大使館・総領事館(以下「在日大使館・領事館・領事館」)もしくはドイツ国内の外国人局(以下「現地外国人局」)にてビザもしくは滞在許可の取得が必要となります。今日はドイツのビザ・滞在許可の最新事情についてお伝えします。

また、以下の前提になります。

  • 国籍により申請方法は大きく異なるため、あくまで日本国籍を保有している方を対象とした内容となります。
  • 既にドイツに法人(駐在員事務所含む)が存在して、そこに駐在するという前提です。新規立ち上げの場合は少々フローが異なります。

なお、記載情報は2025年7月31日時点の情報であり最新情報はその都度確認が必要ですので、ご承知おきください。

(前提)ビザと滞在許可の違い

一般的には全て「ビザ」と呼ばれることが多いですが、厳密にはドイツ入国前に在日大使館・領事館で取得するものを「ビザ(Visum)」と呼び、現地外国人局で取得するものを「滞在許可(Aufenthaltstitel)」と呼びます。本稿でも両者を区別して表記します。

ビザ・滞在許可申請の一般的な流れ

個々の状況に応じ、フローが異なる場合がありますが、一般的な流れは以下の通りです。

1) ビザ・滞在許可の種類を決める

     ↓

2) 在日大使館・領事館で申請するか現地外国人局で申請するかを決める

     ↓

3a) 在日大使館・領事館で申請する場合
渡独予定時期に間に合うよう、余裕をもって在日大使館・領事館に申請

        OR

3b) 現地外国人局で申請する場合
渡独後、住民登録を済ませ、遅くともビザなし滞在期限が切れる前に現地外国人局で申請

在日大使館・領事館での申請の場合

在日大使館・領事館での申請方法は「窓口での直接申請」と「オンライン申請」の2つに分かれています。現在窓口での直接申請は事前の予約が必須となりますが、現状予約を取ることが非常に困難なため、ほぼ不可能であるといわざるをえません。一方オンライン申請の場合、予約は不要ですが、申請可能なビザ種類が限られていますが、多くの企業の方が申請する一般的な就労ビザの多くはオンライン申請が可能です。

在日大使館・領事館で申請する場合、発給されるビザの期間は最短で3か月、最長で12か月となっていることにも注意が必要です。それ以上ドイツに滞在する場合は、ビザの期限が切れる前に現地外国人局で延長する(滞在許可へ切り替える)必要があります。発給される期間は事前には分かりませんが、最近は1年以上の滞在の場合、12か月で発給されることが多いようです。

観光や短期滞在は容易だが、長期滞在の道のりが長い・ドイツ
観光や短期滞在は容易だが、長期滞在の道のりが長い・ドイツ (unsplashより)

現地外国人局での申請の場合

現地外国人局での申請の場合は、ビザなしでドイツに入国し、ビザなし滞在期限が切れる前に現地外国人局で滞在許可を申請する流れとなりますが、詳細な申請方法は管轄外国人局によって大きく異なります。なお、管轄は現地の勤務先ではなく、住民登録地で決まりますのでご注意ください。例えばベルリンの企業に勤務するが、ポツダムに住む場合の管轄外国人局はポツダムとなります。

また、現地外国人局申請の場合、住民登録をしていなければ滞在許可を申請することができません。住民登録とは日本の自治体に住民票を入れる手続きのようなもので、多くの方はお住まいを見つけてから大家さんから入居証明等の必要書類を持参して住民登録を行います。ドイツの主要都市は住宅難に見舞われており、高収入の方であっても物件探しに何ヶ月も有する場合があります。また、多くの自治体で住民登録を行う場合にも予約が必要となります。現地の役所の仕組みや予約方法を確認しておくとともに、ビザなし滞在期限前に外国人局へ滞在許可を申請できるように時間の余裕を持つことも重要です。

在日大使館・領事館申請と現地外国人局申請の比較

これまで述べたとおり、在日大使館・領事館申請と現地外国人局申請はどちらも一長一短であり、メリット・デメリットを比較した上で、どちらが最適かをお選びいただく必要があります。

在日大使館・領事館申請

a. メリット

  • 渡独日から(ドイツ法人からの給与受け取りを含む)就労が可能。
  • 一部書類を除き、英語の書類も認められる。
  • ドイツの住居が決まっていなくても申請可能。

b. デメリット

  • ビザ発給までの期間が読めないため、かなり事前に準備を開始する必要がある。
  • ビザ発給が渡独予定日に間に合わない可能性もあり、その場合は渡独日をずらす必要がある。
  • 窓口申請はほぼ不可能のため、オンライン申請対応のビザ種類しか申請できない。質問なども原則不可。
  • 最長でも12か月しか発給されないため、1年以上滞在の場合は必ず現地外国人局での延長が必要となる。

現地外国人局申請

a. メリット

  • 書類準備の時間的余裕が増える。
  • 一度に複数年分の滞在許可をもらえる可能性があり、延長の手間が省ける。

b. デメリット

  • 住民登録がないと申請できないが、住民登録可能な物件を探すこと自体に時間がかかる。
  • (ドイツ法人からの給与受け取りを含む)就労予定の場合、原則滞在許可が下りるまで仕事をすることができない。
  • 管轄外国人局によっては、ドイツ語の書類しか認められない。
  • 面談時、担当官がドイツ語しか話してくれない場合がある(その場合、通訳を連れて行く必要がある)。
  • 滞在許可申請後、審査中にビザなし期限を過ぎた場合、滞在許可証を取得するまでドイツからの出入国ができなくなる(ドイツ国内の滞在継続は可能)。
書類大国ドイツ
書類大国ドイツ (unsplashより)

必要書類の一例(就労ビザの場合)

在日大使館・領事館申請および現地外国人局申請において、一般的な就労ビザ取得必要となる代表的な書類は以下の通りです。どちらで申請されるかによって書類が異なります。

  • 労働内容説明書(指定のフォーマットに雇用形態や内容、条件などを細かく記入したもの)
  • 労働契約書(出向先のドイツ現地法人等との間の雇用契約書)
  • ドイツの健康保険(日本の保険は不可)
  • 学位証明(英文可)
  • 申請者ご本人の履歴書

原則ドイツ語での作成が必要となるので、ドイツ語話者のサポートが必須とお考えください。また、現地申請の場合も都市によって異なることがあります。ただ必要書類は変更になることも多いですし、帯同家族については別の書類が必要となります。

まとめ

在日大使館・領事館申請、現地外国人局申請のどちらにおいても一定のリスクがあり、ベストな方法は駐在されるご本人によって異なります。申請者本人の状況に応じ、どのリスクを取るかを決める必要があります。また、最近は在日大使館・領事館も、現地の各外国人局もオンライン化が徐々に進んでおり、必要書類や申請方法がよく変更になっています。最終的には、直接ドイツ語で問い合わせを行うことをお勧めします。

なお、ドイツの役所は外国人局にかかわらず返信に何週間も待たされることや、数ヶ月連絡がないということもよくあります。時間に余裕を持つだけではなく、専門家との協業を強くお勧めいたします。

執筆者

浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(欧州統括)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

当社は、海外事業展開をサポートするプロフェッショナルチームです。
お気軽にお問い合わせください。

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