海外調査にAI、ChatGPTは活用できるのか

昨年11月末に人工知能チャットボットであるChatGPTがリリースされました。特に今年の春以降は、(私の周りだけかもしれませんが)日常の雑談においてもAI、ChatGPTという言葉を聞かないことはないように思います。このChatGPTやAIを調査に活用することができるのかを実際に試してみましたので、お知らせします。

ChatGPTの情報源と限界

ChatGPTはあくまで生成AIであり、オンライン上の公開情報に基づいて応答を生成します。調査対象がオンライン上で入手可能な情報に関連している場合にのみ、ChatGPTを活用できます。そのため、非公開情報や限られた情報へのアクセスはできません。ドイツでよくある「役所の担当官次第」のような曖昧な情報は出てこないです。

また、ChatGPTの生成情報は2021年9月時点のものであり、最新情報ではありません。技術や規制の変化など、現在の状況や最新の情報については確認が必要です。ChatGPTは過去の情報を基にしているため、情報の正確性や最新性を確保するためには、他の情報源や専門家の意見と併用する必要があります。特に規制に関してChatGPTに質問をした場合、彼らからもあくまで一般情報であり、正確ではない可能性がある、という前提で回答が返ってきます。

また、あくまでChatGPTはチャットボットであるため、正確な回答を得るためには正しい仮説や知識に基づいた質問を入力されている必要があります。したがって質問内容に対する仮説や知識がないのであればChatGPTを活用することは難しいでしょう。

飛ぶ鳥落とす勢いのChatGPT

飛ぶ鳥落とす勢いのChatGPT

欧州における規制の多様性

欧州においては、仮にEU(欧州連合)加盟国であっても、各国で規制が異なることが多いです。EU加盟国間でも法律や規制の違いがあり、特定の国での規制に基づいて調査を行う必要があります。ChatGPTは一般的な情報を提供できますが、具体的な国や地域の規制に関しては、個別の情報源や専門家の意見を参考にする必要があります。特にChatGPTは英語以外の情報にはやや弱いところがあるので、ドイツ語やフランス語などで書かれている情報源の質についてはやや劣るイメージです。

またChatGPTなどAIの安全な活用方法についてはEU議会でも議論されています。イタリアでは一時期ChatGPTへのアクセスを禁止したこともあります(その後解除)。そもそも欧州においてはCookieに関する規制が厳しく、ホームページ自体にさまざまな作り込みがされているケースが多いです。スクレイピングなどを活用して情報取得を行った際にもITの技術的な観点から情報の洗い出しに非常に時間がかかりました。したがって、欧州における市場調査でAIを活用するには法規制への配慮や技術力が求められると考えます。

あくまですべてのツールは使い方次第

あくまですべてのツールは使い方次第

ChatGPTの活用方法

とはいえChatGPTは海外調査において有用なツールとして活用できる可能性があります。ChatGPTは仮説の検証や調査のヒントを得るために活用することは可能です。ChatGPTは多様な情報に基づいて学習しており、広範な知識を持っています。特定のトピックに関連する情報や背景知識を提供し、調査の方向性を示すことができます。ただし、上述の通り、調査トピックに対する正しい仮説や知識を有していることが前提です。

また言語の壁を乗り越える助けとしてのChatGPT は役に立ちます。特に英語や現地語での文章作成において、ChatGPTは言語処理能力を活かして正確で流暢な文章を生成できます。これにより、各機関や専門家に問い合わせを行う際に効率的に質問や要求を伝えることができます。

結論として、AIやChatGPTは海外調査において仮説の検証や調査のヒントを得たり、外国語で文章を作成したりする上で有用なツールとなり得ますが、その活用には制約や限界が存在します。仮にChatGPTから有益な回答が得られたとしても、その正確性については裏取りが欠かせません。ただしうまく活用することで時間の短縮なども可能ですので、上記事項に配慮しながら利用する価値はあると考えます。

なお本文章はChatGPTに以下のキーワードを入れて作成し、その後手直しをしております。

海外調査にあたり、AIやChatGPTは活用できるかというテーマで文章を書いてください。1,500文字程度でお願いします。論点は以下の5つです。

  • ChatGPTはあくまで生成AIであり、オンライン上の公開情報しか取ることができない
  • ChatGPTはの生成情報は2021年9月時点のものであるので、最新情報ではない
  • 欧州については仮にEU加盟国であっても、各国で規制が異なることが多い
  • ただし仮説の検証や調査のヒントを得るために活用することは可能である
  • 各機関や専門家に問い合わせを行う際に、英語や現地語で文章を作成する際にChatGPTは有効


ちなみにChatGPTの回答内容から、自身の経験の補足や欧州議会などの最新情報など、それなりに手直しは必要でした。

出典・参考
ChatGPT.
https://chat.openai.com
BBC News (2023). ChatGPT accessible again in Italy.
https://www.bbc.com/news/technology-65431914.
European Parliament (2023). MEPs ready to negotiate first-ever rules for safe and transparent AI. https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230609IPR96212/meps-ready-to-negotiate-first-ever-rules-for-safe-and-transparent-ai.

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

当社は、海外事業展開をサポートするプロフェッショナルチームです。
ご相談は無料です。お気軽にご連絡ください。

無料ご相談フォームはこちら