ヨーロッパ諸国が打ち出した廃棄物規制のさらなる強化。カーボンニュートラルの実現へ。

ヨーロッパではカーボンニュートラルの実現に向け、EU(欧州連合)を中心にさまざまな施策が実行されようとしています。新たなビジネス機会となることもありますが、廃棄物規制や脱プラスチック施策などが各国で制定・改定され始めており、既に進出している企業も配慮しなければならない点があります。特に生産者自身が遵守すべき法律も多く、現地に拠点がない日系企業には負担となることも少なくありません。今回は環境保護・廃棄物規制について簡単に取り上げます。なお、記載情報は2022年10月27日時点の情報ですので、最新の法令などは各自でご確認ください。

EU指令 ≠ 各国内法

まず前提ですが、よくEU加盟国においては全ての法律が共通というわけではありません。EU規則(Regulation)という形でEU加盟国がすべて遵守すべきものはありますが、指令(Direction)という形で、加盟国に目的にあわせた目標を課し、それぞれの加盟国の裁量で加盟国内にて法として立法化されるものもあります。例えば以前取り上げたCEマーキング(CEマーク)においては、製品ごとにRoHS指令や低電圧指令などさまざまな指令に従う必要があります。

廃棄物規制は廃棄物枠組み指令や特定プラスチック環境影響低減指令、電気電子機器廃棄物指令(WEEE指令)などさまざまな規制があり、かつ各国ごとで規制が異なるため複数のヨーロッパの国で製品を販売している場合は注意が必要です。ご存知の通り、イギリスはEUを離脱しましたので別の規制があります。現在は多くの法律がEU加盟時とほぼ同じような形を取られていますが、2023年度末をめどに多くの法律が改定される可能性があります。

ヨーロッパの環境保護規制はさまざまな側面で厳格化しつつある

ヨーロッパの環境保護規制はさまざまな側面で厳格化しつつある

2022年以降厳しくなり始めた規制

最近ドイツやフランスではこの規制が厳しくなっています。2022年中は移行期間のようですが、2023年からは厳格化するものもあります。ドイツを例に取ると、以下のようなものがあります。

(1) 容器包装廃棄物法(包装法:Verpackungsgesetz)

商品を購入・梱包・発送する際に必要な包装材を減らしたり、リサイクルを促進したりするための法律です。特に2022年7月より厳格化され、包装材を利用する流通業者(製造者、販売者など)に流通・回収の義務が課されるようになりました。生産者はZSVR(Stiftung Zentrale Stelle Verpackungsregister)という財団のホームページに登録してLUCID番号の発給を受ける必要があります。

特にAmazonやeBayなどのeコマースで商品を販売している場合、そういったプラットフォーム事業者からLUCID番号の提供を求められることがあります。それがないと現地での販売が停止される場合もあります。Amazonではこの番号がない場合、現時点で商品の販売はできません。

LUCID番号取得は日本にいる法人・個人でも可能です。ZSVRのホームページから登録を行うことが可能ですが、もしサポートが必要であれば弊社でも可能ですのでお問い合わせください。

(2) 電気電子機器法(Elektro- und Elektronikgerätegesetzes :ElektroG3)

ElektroGはEUのWEEE指令のドイツ国内法です。ドイツ国内で流通するすべての電気および電子機器が対象となります。家電製品やパソコンなどだけではなく、電気または電子部品を含む家具、衣料品、ライフスタイル製品などにも適用されます。本法律は生産者に対してWEEE登録が義務付けられるなどElektroG3を遵守する責任が課されます。適切に登録されていない製品は、販売が許可されなかったり、罰金や警告などの措置を受けたりする可能性があります。

生産者の方が実施すべきこととしては、ドイツでのElektroG3の運営を委託されているEAR財団(Stiftung Elektroaltgeräte Register – EAR)に登録を行い、WEEE 番号の発給を受けることです。電子機器のディーラー、メーカー、および輸入業者は、製品の販売時および請求書に WEEE 番号を記載する必要があります。

上記の包装法と異なり厄介なのが、生産者がドイツに法人や支店がない場合、国内に認定代理人を任命する必要がある点です。この代理人になるためのハードルはかなり高く、安定した財務状況や専門知識などが求められるため、誰でもなれるわけではないようです。ドイツでの販売を販売代理店にお任せしている場合やeコマースのみで販売している場合、生産者の責任でドイツ国内認定代理人を探す必要があります。Amazonに関してはLUCID番号と違い現時点ではこのWEEE番号の登録などは不要なようですが、ある日突然登録がない業者は現地Amazonを通じた販売が停止される恐れがあります。代理人の協力が不可欠な企業様においては、早めの対応が必要をお勧めします。

電化製品については部品に対しても厳しい規制が敷かれることも

電化製品については部品に対しても厳しい規制が敷かれることも

今後注意すべき点

冒頭にも記載しましたが、EU加盟国とはいえ各国で規制は大きく異なります。今回はドイツを例に説明しましたが、フランスは製品カテゴリごとに管轄の役所が異なるようで、複数の製品群を取り扱う企業様はかなり細かい申請作業を行わなければならないようです。スペインにおいても2023年に使い捨てプラスチックに関する税金の取り扱いが変わるようです。各国でもドイツ・フランスの後に続く形で国内法の立法や厳格化があるでしょうし、今後各国行政機関への報告や新たな税金の取り立てなども発生しうると考えています。イギリスはそもそも論としてすべての法規制について要注意です。

こういった規制対応は生産者が主体となって実施しなければならないことも多いので、みなさまが日頃からアンテナを高くして責任をもって対応いただければと思います。

出典など
Agencia Tributaria (2022). Tax Agency:Excise duty on non-reusable plastic packaging. https://sede.agenciatributaria.gob.es/Sede/en_gb/impuestos-especiales-medioambientales/impuesto-especial-sobre-envases-plastico-reutilizables.html.
Amazon.de (n.d.). 拡大生産者責任(EPR)に関する教育.
https://sellercentral.amazon.de/help/hub/reference/external/GYDCAK9ZR6VJH2X3?locale=ja-JP.
stiftung elektro-altgeräte register (n.d.). stiftung elektro-altgeräte register. https://www.ear-system.de/ear-portal/.
Stiftung Zentrale Stelle Verpackungsregister (n.d.). Verpackungsregister. https://www.verpackungsregister.org/.

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

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