海外ビジネスにおけるコミュニケーション

ビジネスに限らず人間関係の基本はコミュニケーションがすべて、といって過言ではないでしょう。海外ビジネスにおいては日本語以外でコミュニケーションをとる方がほとんどかと思います。しかし母語以外の言語でのコミュニケーションは、通常時以上に時間がかかったり、理解の齟齬などが生まれたりしがちです。海外ビジネスにおけるコミュニケーションについて、今回はお話しできればと思います。

身構えずにまずは第1歩を踏み出そう

急に英語などの外国語でコミュニケーションをとるとなると、身構えてしまう方が多いのではないでしょうか。私自身も最初に海外の企業とメールでやり取りする際は緊張しました。しかし先輩から「間違っても良いから、やりとりしていると慣れてくるよ」と言われ、勇気を持ってメールの送信ボタンを押したことを覚えています。最初は読み直したり時間がかかったりすることも多いと思いますが、最初の一歩を踏み出すことができればスムーズに進むことが多いです。

また、相手から返信があった場合、どうしても外国語でのやりとりになると後回しにしがちです。海外の場合はNo news is bad newsが多いので、一旦は何らかのリアクションをしておいた方がよいかと思います。仮にすぐに回答できない場合であっても、「来週の会議で話し合ってから回答する」「返信にはちょっと時間をもらえませんか」と回答しておくのも良いでしょう。反対に相手方から返信がない場合は、あまりビジネスの進捗が期待できないかもしれません(長期休暇中という場合もありますが)。

最初の一歩が肝心ですので、勇気を持って!

最初の一歩が肝心ですので、勇気を持って!

問題なのは語学力ではないことも

最近ではグーグル翻訳のように無料で利用できる翻訳ソフトの精度も上がってきましたので、メールでのやり取りについては、それらを活用することで、ある程度語学力をカバーできるようになりました。しかし、コミュニケーションの課題は語学力に起因する訳ではないこともあります。

アメリカの文化人類学者のエドワード・T・ホールは世界の文化をハイ・コンテクスト、ロー・コンテクストに分類しました。前者は主にアジアや中東に見られ、言葉にしたこと以外の背景や文化的な共通認識などを重視します。後者はドイツ語圏のヨーロッパやアメリカなどで強く見られ、言葉にしたことがすべてのいわゆる「空気を読まない」文化です。メールや打ち合わせなどでは細かい点についても議論しますし、契約書などの記載内容も日本語のそれと比較にならないくらい多いです。

したがって海外とやり取りする際は、語学だけではなく内容を重視して、細かい点についてもきちんと相互理解ができているかを確認する必要があります。仮に同じアジア圏の場合は文化的に近いため何となくやりとりできているような気がしますが、そもそもの前提や認識が異なる場合も少なくありません。お互いの認識にずれがないかについて、気を配った方が良いでしょう。具体的には、重要なことはメールや書面に残す(打合せの議事録を作成する)、スケジュールや役割分担などは明確に決める、などです。きちんと相手方にも約束をさせる、基本的なルールは最初に決めておくなど、普段の業務以上に配慮しましょう。

なおローコンテクスト文化の方々でもメールでこちらの書いた内容をよく読んでくれているのか怪しかったり、返信がやたら短かったりということもよくあります。その場合でもわからないことはそのままにせず、きちんと説明してもらうように相手方に促した方がよいです。特に彼らの文化では、聞き手ではなく話し手に責任がありますので、臆することなく質問してみましょう。

語学力だけではなく、文化の違いも重要

語学力だけではなく、文化の違いも重要

自分以外の人に語学サポートを依頼する場合の注意点

企業様によってはプロの通訳・翻訳に委託する場合もあれば、社内の語学が堪能な方にコミュニケーション全般を依頼している場合もあろうかと思います。いずれも企業様の戦略や予算に応じた対応になろうかと思いますが、いくつか注意した方が良い点があります。例えば「依頼内容のスコープが明確になっているのか」「その依頼した通訳・翻訳、もしくは社員の方の語学力やビジネススキルの妥当性をきちんと検証できているのか」という点です。

(1) 依頼内容のスコープが明確になっているのか

特にプロの方に外注する場合ですが、依頼する場合の期待値をきちんと合わせておく必要があります。「単に言われたことそのまま訳して伝える」ことを期待するのか、「事前にビジネス背景などをきちんと理解して文脈を理解した上で配慮してくれる」ことを期待するのか、などです。よくあるのが後者を期待していたのに、相手方はそのような理解ではなかったという点です。「責任を取りたくないので、そこまでしたくありません」という通訳・翻訳家の方も正直、少なくはありません。後者を期待する場合はコンサル的な要素が強くなるので、語学力よりもビジネス経験などの経歴や実績も踏まえた上で通訳・翻訳家を選定する必要があります。

(2) 依頼者の語学力とビジネススキルの妥当性の検証

語学力については、語学が苦手な人から見たら「語学ができる人は何でもわかってくれる」と過大評価しがちです。しかし、私たちが日本語でコミュニケーションをする場合でも、意思疎通の行き違いがよく起こっていることを想像してみてください。これらは言葉の問題ではなく、内容や背景に関する理解の不足や説明不足などが理由であることが多いと思います。したがって、通訳・翻訳を担ってくれる方が本当にすべて理解しているのかについては、過信しない方がよいでしょう。外注、社内問わず彼らにビジネス上の責任まで負わせることは難しいと思います。
語学力とビジネススキルは比例するものではないため、仮に語学が堪能な場合であってもビジネスに対して理解が不足していることは起こり得ます。しかし、その語学力などについて検証できないなどといった場合は第三者にセカンドオピニオンをもらう、ということも一つの手になろうかと思います(手前味噌ですが、弊社でもスポット対応は可能です)。

いかがでしたか。相手方も人間ですし、日本以上に失敗には寛容な国や地域は多いです。重要な商談や契約書などについては専門家のサポートが必要になると思いますが、最終的なゴールはあくまでビジネスの成功ですので、「間違ったら訂正すれば良い」という精神で臨んでみてください。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ビジネスニーズに合わせた現地語に堪能なスタッフや弁護士などの専門家のご紹介だけではなく、貴社の外国語教育も支援いたします。お気軽にお問い合わせください。

参考URL
海外駐在20年のプロフェッショナルが語る③「言語を学ぶということ」
https://www.smarthabit.net/enterprise/blog/jinzaiglobal0014
ヨーロッパ人の英語力
https://j-seeds.jp/column/europe-english

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

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