日本産食品サブスクビジネスにFDA登録は必要?

日本産のお菓子やスナック、あるいはカップ麺やお茶などを箱に詰め合わせてアメリカの消費者へ国際宅配便で定期的に送る、いわゆる日本産食品サブスクビジネスがちょっとしたブームになっています。日本産のお菓子の美味しさに気づく人が世界的に増加し、ニーズが広がっているようです。ところで、アメリカへ食品を輸出するにはFDAへの登録などが必要とされていますが、日本産食品サブスクビジネスを展開するに際してはFDAへの登録は必要ないのでしょうか。

拡がる「日本産食品サブスクビジネス」

「日本産食品サブスクビジネス」が広がっています。日本産食品サブスクビジネスとは、文字通り日本産の食品をアメリカなどの外国へ国際宅配便で定期的に送るサービスです。利用者は毎月定額のサブスクリプションフィーを支払い、お菓子などが詰め合わされた「ボックス」を受け取ります。サブスクリプションフィーは50ドル(約7300円)から70ドル(約1万220円)程度で、クレジットカードで毎月決済されます。

詰め合わされる食品は毎月違い、利用者はその月ごとに新しい食品アイテムを楽しむことができます。日本産食品のクオリティの高さに気づく人が世界的に増加する中、特にアメリカで日本産食品のサブスクビジネスの利用が拡がっています。日本産食品サブスクビジネスの先駆けとされるある企業に近い人によると、その会社単体で毎月3万ケース、多い月で6万ケースをアメリカへ出荷しているそうです。サブスクリプションフィーを50ドルとすると毎月150万ドルから300万ドル程度は売上げていることになります。

「FDAへの登録」に関する質問に対しては?

食品をアメリカへ「輸出」する際に第一に気になるのがFDAへの施設登録です。アメリカで消費される食品については、製造・加工・包装・保管に関するすべての施設をFDAに登録することが求められています。また、食品のパッケージについても、FDAのレギュレーションに従い、英語でのラベル表記が求められています。日本産食品サブスクビジネスを展開している会社は、以上に対してどのように対応しているのでしょうか。

気になった筆者は、日本産食品サブスクビジネスを展開している「リーディング企業」と目される2社に対し、以上についてメールで質問してみました。しかし、メールを送信してから本記事執筆時点(2023年9月11日)までに2週間が経過しましたが、これまでに両社から回答は来ていません。

日本産食品サブスクビジネスは「グレー」なビジネス?

メールで質問を送付した件とは別に、筆者は日本産食品サブスクビジネスに詳しい、ある物流コンサルタントから話を聞くことができました。彼の説明によると、日本産食品サブスクビジネスを展開している会社のほとんどは、取り扱う食品に関するFDA登録を必ずしもしておらず、またラベルも英語化することなく、あくまでも日本国内で流通している状態のものをそのままの状態で箱に詰め合わせて、国際クーリエ便で送付しているそうです。また、通関についても、インボイス価格を数十ドル程度と記載して、簡易通関でクリアしているそうです。

また、保険についても、インボイス価格が数十ドル程度なので、クーリエ業者が標準で提供している損害保険で十分カバーできるので、別枠で保険をかけていることもないそうです。あくまでも国際クーリエ便の基準に収まる内容にとどめているところがこのビジネスの要諦であるようです。

物流コンサルタント氏の話では、これまでに何十万、何百万という数のサブスクリプションボックスをアメリカへ送ってきたが、通関できなかったことは一度もなく、また何らかの事故が起きたという話もまったく聞いたことがないそうです。一方、話を聞いた筆者の方では、このビジネスモデルに関して、ある種の「グレーさ」と呼ぶべきものを感じざるを得ませんでした。

それでも次々と立ち上がる「日本産食品サブスクビジネス」

筆者の懸念とは裏腹に、「日本産食品サブスクビジネス」は着実に、しかも全国各地で、次々と立ち上がっています。中には、地方産の食品を詰め合わせる「地方産食品サブスクビジネス」や、特定のコンセプトに特化した「コンセプト食品サブスクビジネス」といった亜系ビジネスも立ち上がっています。「日本産食品サブスクビジネス」は、少なくとも日本の食品業界においては、耳にする機会が日増しに増加しているトレンドワードであることは間違いないでしょう。

それでも、筆者においては、「日本産食品サブスクビジネス」が持つ「グレーさ」がどうしても気になります。海外市場展開支援コンサルタントとしては、「まったく問題がないですよ」という太鼓判を押せない気持ちです。「日本産食品サブスクビジネス」をこれから立ち上げようとお考えの方には、「日本産食品サブスクビジネス」には以上のような「グレーな部分」が残されていることを十分にご理解いただいて、自己責任にて立ち上げられることをおすすめいたします。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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