学費も高騰?・アメリカの大学へ通うといくらかかるのか?

アメリカ現地時間の2022年8月24日、バイデン大統領が教育ローン利用者に対し一人あたり最大2万ドル(約274万円)を免除すると発表し、大きなニュースになりました。前に「巨額の教育ローンに苦しむアメリカの若者達」という記事にも書きましたが、アメリカでは教育ローンを抱える人が4500万人もいて、一人当たり平均で37,172ドル(約509万2564円)の教育ローン債務を抱えています。アメリカで高等教育を受けるには相応のコストがかかるのですが、実際にアメリカの大学へ通うといくらかかるのでしょうか。

ハーバード大学(Harvard University)

アメリカ最古の大学であり、アメリカを代表するエリート校のハーバード大学。全米のみならず世界中から優秀な学生が集まる、世界の知の集積地としてその名を世界に轟かせています。これまでに8人のアメリカ合衆国大統領、48人のノーベル賞受賞者、48人のピュリッツァー賞受賞者を輩出するなど、世界的にも最高クラスの人材と実績を誇っています。

ハーバード大学の学部生(四年制、Undergraduate)の一年間の学費等コストは以下のようになっています(2022年度から2023年度までの一年間):

・学費 52,659ドル(約721万4283円)
・その他費用 4,602ドル(約63万474円)
・部屋代 12,056ドル(約165万1672円)
・食費 7,446ドル(約102万102円)
 小計 76,763ドル(約1051万6531円)

・教科書代含む小遣い 3,500ドル(約47万9500円)
・交通費 0-4,150ドル(約0円から56万8550円)
 合計 80,263ドルから84,413ドル(約1099万6031円から1156万4581円)

学部を卒業するだけで4千万円以上の費用が必要です。学部卒業後、ビジネススクールなどの大学院へ進学すると、さらに年間1千万円以上のコストが追加で必要になります。仮にスカラーシップ(返済不要の奨学金)などをまったく受けずにすべてを教育ローンでまかなう場合は、大学院卒業時点で6000万円以上の教育ローン債務を抱える計算になります。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)

私立大学の学費が高いのはほぼ世界共通ですが、アメリカの公立大学はどうなっているのでしょうか。ここでは、アメリカ西海岸を代表する名門校の一つ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を見てみましょう(2021年度から2022年度までの一年間)。

・学費 13,225ドル(約181万1825円)
・部屋代および食費 15,816ドル(約216万6792円)
・教科書および備品 1,509ドル(約20万6733円)
・交通費 432ドル(約5万9184円)
・小遣い 1,470ドル(約20万1390円)
・医療保険 2,225ドル(約30万4825円)
・カリフォルニア州非居住者負担金 28,992ドル(約397万1904円)
 合計(カリフォルニア州居住者)34,667ドル(474万9379円)
 合計(カリフォルニア州非居住者)63,669ドル(約872万2653円)

カリフォルニア州居住者であれば、ハーバード大学の半分以下の費用で学位を取得できる計算になります。また、外国人を含むカリフォルニア州非居住者に対しては負担金が別途課されるため、相応に割高になります。いずれにせよ、カリフォルニア州居住者でも四年間で11万5968ドル(約1588万7616円)の費用がかかるわけですが、ハーバード大学を含むアイビーリーグ大学の学費が相応に高騰している中、カリフォルニア州居住者にとって一定のお得感があるのは否めません。

カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校(California State University, Dominguez Hills)

ところで、アメリカの大学で学費が安い大学はないのでしょうか。大学を選ばなければ無いことはありません。アメリカの大学評価ウェブサイトEducationcorner.com は、アメリカで「もっともお得な大学」として、カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校を挙げています。以下に学費等の内訳です(2021年度から2022年度までの一年間):

・学費 5,742ドル(約74万9664円)
・その他費用 1,317ドル(約18万429円)
・教科書および備品 1,100ドル(約15万700円)
・合計(カリフォルニア州居住者)8,159ドル(約111万7783円)

なお、カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校には学生寮がありません。大学は、キャンパス周辺の平均的なアパートの家賃として月に1,700ドル(約23万2900円)から1,800ドル(約24万6600円)程度かかるとしています。それとは別に毎月の食費や水道光熱費などが500ドル(約6万8500円)程度かかるとすると、カリフォルニア州居住者の場合、卒業するまでに138,236ドル(約1893万8332円)かかる計算になります。学費が安い一方で生活コストが相応に高くなるわけですが、ルームシェアリングをするなどして生活コストを下げられれば、学位取得コストを相当削減できそうです。

学部によっては高額の教育ローン債務残高も

なお、当然ながら専攻する学部によっても教育ローンの平均債務残高は違ってきます。特に大学院は学部によって学費が大きく変わるので、学部によっては教育ローンの債務残高は相応に大きくなります。例えば、歯学部292,169ドル(約4002万7153円)、医学部201,490ドル(約2759万1800円)、薬学部149,514ドル(約2048万3418円)、法学部145,500ドル(約1993万3500円)となっており、医学系の学生やロースクールの学生が相応の教育ローン債務を負っています。

アメリカでは教育ローンの利用が年々増加しており、今年2022年度のアメリカの高校卒業生は、一人当たり平均39,500ドル(約541万1500円)の学費を教育ローンで調達すると見込まれています。アメリカでは現在、生活必需品などを中心に値上がりが続いていますが、大学の学費もそのトレンド内にあるのは間違いないようです。アメリカの大学の学費は、今後も上がり続ける可能性が極めて高いでしょう。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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