アメリカで日本語表示の化粧品が流通している理由とは?

アメリカで流通している日本語表示の化粧品

 先日、自社の化粧品をアメリカで販売する計画をお持ちのメーカーさんから、次のような質問をいただきました。

「今、現地調査のためにニューヨークに滞在しているが、現地の日本人が利用する日系スーパーに日本語表示の化粧品が陳列され、売られているのを見つけた。FDAは、化粧品の表示に厳格なルールを定めており、英語以外の表示は原則認めていないと聞いているが、なぜ、日本語表示の化粧品が販売されているのだろうか」

 確かに、カリフォルニア州やニューヨーク州などには多くの日本人が住んでおり、日本人が利用するスーパーマーケットも多数存在しています。そうした日系スーパーマーケットなどでは、日本製の食品や化粧品などが陳列され、実際に販売されています。なぜ、そのような商品が販売されているのでしょうか。

日本語表示の化粧品のほとんどは日系企業や日本人が持ち込み

 まず、アメリカで販売されている日本語表示の化粧品のほとんどは、日系企業または日本人が日本から持ち込んだものです。それらはアメリカで暮らす日本人に販売されるもので、いうなれば日本人コミュニティの中で取引が完結するものです。つまり、最初からアメリカの消費者を視野に入れていないのです。

 日本でも、中華街などへ行くと似たようなケースに遭遇します。中華街で販売されている中国人向けの商品も、中国語のみ表示されているものが少なくありません。それらの多くは地元の中国人に対して販売され、中国人コミュニティの中で取引が完結します。アメリカの日本人コミュニティにおける日本人同士の取引とまったく同じです。

 しかし、いずれにせよ、たとえ取引が日本人コミュニティにおいて完結するにせよ、日本語表示の化粧品をアメリカで販売するのは違法行為です。

FDAの限界

 そもそも、アメリカで流通している化粧品の数は膨大です。ドラッグストアやスーパーマーケットなどの物流に加え、最近ではAmazonなどでも多くの化粧品が販売されています。そして、Amazonで販売されている化粧品の中でも、日本語でのみ表示されたものが販売されています。そうしたものの多くは、日本人コミュニティで取引されている日本語表示の化粧品と違い、最初からアメリカ人をターゲットに販売されています。

 実際、Amazonではそうした日本語表示の化粧品が多数販売され、それなりに売上を上げているようです。中には有名メーカーの製品もあり、Amazonはそうした日本語表示の製品が溢れる一種の「無法地帯」となっています。

 では、なぜそのような状態が放置されているのでしょうか。答えは、FDAの監視活動には限界があり、すべての製品をモニタリングできないからです。FDAは、化粧品などのラベル表示について非常に厳しいルールを定めていますが、それらはメーカーが自主的に順守すべきものであり、FDAがすべてを監督するという前提にはなっていないのです。メーカーは、メーカーの自己責任においてFDAのルールを守り、製品を流通させてゆくことが求められているのです。

それでもFDAのルールは守るべき

 越境ECブームなどもあり、最近は日本からアメリカのAmazonを通じて日本製の化粧品を販売しようという機運が高まっています。そして、多くの企業が日本製の化粧品を、日本語表示のみで販売しています。改めて言及するまでもありませんが、アメリカで日本製の化粧品を日本語表示のみで販売することは違法です。

 多くのケースではAmazonのFBA(Fulfillment by Amazon)が使われており、多くがアメリカの税関をスルーしてAmazonの倉庫へ納入されています。一方、最近は日本語表示の化粧品などが税関で留め置かれたり、通関できないケースも増えてきているようです。

 筆者は、アメリカの税関およびAmazonは、今後日本から送られてくる化粧品などの監視を強化してくると予想しています。いまのところ、FDAによるペナルティが課せられたといった類の情報は入ってきていませんが、今後生じる可能性はゼロではありません。筆者としては、アメリカで化粧品を販売する際には、FDAのルールを守るべきだとお伝えするほかありません。ルールを守り、正しく気持ちよくビジネスを展開していただきたいと思います。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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