アメリカで注目のFintech企業・Avant(アヴァント)

2020.08.18

Avantという個人向けローン会社

Avant(アヴァント)は2012年設立の、シカゴに拠点を置く個人向けローン会社です。フランス語で「前向き」を意味するAvantは、AIとビッグデータを使った融資審査システムを開発し、2013年から個人向け無担保ローンを提供しています。Avantのアダム・ヒューズ社長によると、Avantは「典型的なミドルクラスのアメリカ人が主要顧客で、クレジットスコア580点以上、最低年収4万ドル程度の顧客層」を対象にローンを提供しているそうです。また、比較的クレジットスコアが低い高リスク層へのローンも得意としており、他社と差別化しています。

Avantへ対するベンチャーキャピタルなどの投資家の評価は高く、同社はこれまでに10回のラウンドのファイナンスで17憶7,900万ドル(約2,010億円)もの資金を調達しています。同社の時価総額は20億ドル(約2120億円)に達し、同社は現在のアメリカを代表する有望Fintech企業の一社として注目を集めています。

Avantのローンの仕組み

Avantのローンの特徴は、融資審査をAIとビッグデータを使って行っている点です。これまでの個人向けローンの融資審査は、借入希望者一人ひとりのクレジットスコアを参照し、融資担当者が個人の経験と勘を元に行っていました。それゆえ、融資担当者のスキルのばらつきが発生し、貸し倒れリスクがある程度の水準で残されていたのです。それをAIとビッグデータを活用することで軽減し、特に貸し倒れリスクと相対する貸出利率とを適正化する事で、安全性と収益の両方を確保する事が可能になったのです。

審査では特にビッグデータをベースにマシンラーニングが行われるため、データが蓄積するほどラーニングの精度が向上します。さらに、融資審査業務から人間を解放した事で労務コストも削減出来るのです。

なお、Avantのローンは貸出金額2,000ドル(約21万2千円)から35,000ドル(約371万円)で、利率9.95%から35.99%、貸出期間2年から5年となっています。融資実行までのスピードは平均2日で、最速で翌日の入金が可能としています。スピーディーな融資実行もAvantの特徴の一つとなっています。

借り換えの利用者が半数を占める

ところで、Avantによりますと、同社の利用者の半数が借り換えで同社のローンを利用しているそうです。いわゆるリファイナンス、つまり他社で借りているローンを借り換える利用者が多いという事は、他社で借りているローンの利率が「最適化」されていない事を物語っています。つまり、AvantがAIとビッグデータを使って審査をした結果、他社のローンの利率よりも低く設定出来るケースが少なくないという事です。他社のローンが利用者のクレジットスコアやリスクよりも高めの利率を設定する傾向があるという事であり、Avantが今後、ビジネスをさらに拡大させられる余地が大きいことを示しています。

また、Avantでは他社と同様、10日以上の返済遅延に25ドルの遅延金を課しています。しかし、Avantが独自に設定した遅延金免除ルールがあり、遅延から3回連続で通常返済すると支払った遅延金がキャッシュバックされます。明らかに蓄積されたビッグデータから得られた情報から生まれた仕組みであることは間違いなく、他社からAvantを差別化する要因のひとつとなっています。

ビジネスローンへ拡大も

Avantによると、Avantはこれまでに80万人の利用者へ融資を行い、貸出総額は65億ドル(約6890憶円)に達しているそうです。利用者の半数が借り換え目的で同社のローンを利用していますが、同社のビジネスモデルは今後、個人向けローンから中小企業向けローンへ拡大してゆく可能性が高いと思われます。

アメリカのビジネスローンと呼ばれる中小企業向けローンは、個人向けローンに仕組みが極めて近いです。いずれもクレジットスコアを参照して安全性とリスクを判断し、融資を行います。貸出金額と利率も安全性とリスクを鑑みて設定されますが、融資担当者個人のスキルと経験に依っている点も同じです。それゆえ、個人向けローンと同様に、「最適な」数字よりも高めの数字が設定される傾向にあるのです。ビジネスローンも数字の「最適化」が進んでいない金融領域のひとつということなのですが、この領域においても最適化へ向けた一連の動きが始まるは間違いないでしょう。

仮にAvantがビジネスローンの領域に進出しないとしても、ビジネスローンの融資審査にAIを活用する機運はどの道高まるでしょう。融資審査にAIが活用され、借り手に最適化された貸し出しがなされる事で、金融の円滑化が一挙に進む可能性もあります。AIに仕事を奪われる金融関係者の方々にはお気の毒ですが、資金の借り手としての中小企業にとっては福音となるでしょう。Avantの利用者は軒並み高い顧客満足度を示していますが、ビジネスローンの利用者もさらに満足する時代が、もうそこまで迫って来ています。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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