アメリカの医療制度について

2020.08.05

アメリカの医療制度

アメリカで仕事をする日本人にとって最も関心があることのひとつがアメリカの医療制度でしょう。アメリカには、日本のような国民皆医療保険制度がないとよく言われますが、その具体的な内容はどうなっているのでしょうか。

まずアメリカの医療費ですが、米国メディケア・メディケイド・サービスセンターによると、2018年度のアメリカの医療費は総額3.6兆ドル(381兆6千億円)で、国民一人当たり11,172ドル(約118万4232円)、GDPに占める割合17.7%となっています。日本の国民一人当たりの医療費が32万1100円ですので、四倍近い高コストとなっています。

次に医療機関ですが、日本では株式会社などの営利組織による医療機関経営が認められていない一方、アメリカでは全体の21%の医療機関が株式会社などの営利組織によって運営されています。また、全体の48%が非営利組織、21%が公的組織により運営されています。

アメリカの医療保険制度

アメリカの医療保険制度ですが、医療費の64%が公的医療保険から支出されています。アメリカの公的医療保険とは、65歳以上の人が加入するメディケア、低所得者用医療保険のメディケイド、特定の子供が加入する子供健康保険プログラム、退役軍人が加入するベテランズ・ヘルス・アドミニストレーションです。

65歳以下のアメリカ人の大半は勤務先の会社が加入している民間医療保険に加入しています。その数は2017年度時点で1億5千万人とされています。また、医療保険に加入していない無保険者が2750万人も存在します。日本人がアメリカで勤務する場合、ほとんどのケースで会社が加入している医療保険に加入することになるでしょう。

民間医療保険の加入条件や内容は、プランにより千差万別です。一般的な傾向として、中小企業よりも大企業が提供する医療保険の方が条件はいいようです。大企業の中には、優秀な人材を獲得するために福利厚生制度として医療保険を提供しているところもあり、そうしたケースでは月々の保険料が低めに設定されたりします。

また、個人事業主や医療保険に加入していない零細事業などにお勤めの場合は、個人で民間の医療保険に加入することになります。その場合は、生命保険などと同様に各社が提供するプランを比較検討し、自分に合った医療保険を選択することになります。

HMO、PPO、そしてEPO

主に企業が加入する医療保険はHMO、PPO、EPOに大別されます。いずれも医療機関をネットワーク化していますが、HMO(Health Maintenance Organization)の場合、緊急時を除いてネットワーク外の医療機関で受診しても保険金が支払われません。また、通常はかかりつけ医が割り当てられ、受診や治療は原則かかりつけ医が行います。多くの場合、かかりつけ医はゲートキーパーと呼ばれ、患者に安易な入院や治療を受けさせません。

PPO(Preferred Provider Organization)も医療機関をネットワークしている点はHMOと同様ですが、ネットワーク外の医療機関で受診しても保険金が支払われる点が違いです。しかし、通常はネットワーク外の医療機関で受診した場合、自己負担額が増えるケースが多いようです。なお、民間医療保険に加入している人の50%がPPOに加入しています。

EPO(Exclusive Provider Organization)はPPOをより厳格にしたもので、緊急時を除いてネットワーク外での受診に対し保険金が支払われません。HMOとの違いは、HMOと違ってかかりつけ医を割り当てられる必要がない点です。

いずれのケースにおいても、医療機関がネットワーク化されており、ネットワーク外で受診すると保険が支払われないか、自己負担額が大きくなる点が共通しています。一方、最近は医療機関の医師不足が慢性化しており、医療機関の都合で「ネットワーク外」の医師を使い、その費用を患者に負担させるケースが増えてきているそうです。なお、一般的に保険料はHMOが安く、EPO、PPOの保険料はHMOよりも割高になる傾向にあります。

無保険だとどうなる?

ところで、今日現在で2750万人も存在する無保険者ですが、彼彼女らが病気になったらどうなるのでしょうか。新型コロナウィルスの感染拡大が続く中、無保険者がCOVID-19で治療を受けた場合のコストが計算されています。それによると、COVID-19に罹患して人工呼吸器による治療を行い、96時間入院した場合のコストは40,218ドル(約426万円)だそうです。

アメリカ人の70%は1000ドル(約10万6千円)未満の貯金しか持っていないので、支払い不能になるケースが圧倒的でしょう。アメリカで無保険者でいることは、非常に大きなリスクを伴うのです。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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