ヨーロッパの新型コロナウイルスの現状(2020年12月編)
前回のアメリカに引き続き、ヨーロッパの新型コロナウイルス(COVID-19)の現状についてお伝えしたいと思います。もうこのトピックを取り上げたくはなかったのですが、ヨーロッパの新型コロナウイルス(COVID-19)の状況は思わしくありません。クリスマスや年末年始に向けてどのような状況であるかも含めてお伝えしたいと思います。なお記載情報は2020年12月7日時点の情報となりますので、最新情報は各国政府機関などが公表している情報をご確認ください。
ヨーロッパの新型コロナウイルス(COVID-19)流行状況
ヨーロッパはまさに新型コロナウイルス(COVID-19)第2波真っ只中です。日本でも北海道や大阪を中心に新型コロナウイルス(COVID-19)の流行状況はよろしくはありませんが、ヨーロッパに住む私の目から見るとずいぶん落ち着いているなと感じています。ドイツ(人口8,000万人)では昨日の新規感染者数は12,000人を超えており、ここ7日間での人口10万人あたりの感染者数は150人を超えています。ちなみにイギリス、フランス(ともに人口約6,700万人)の新規感染者数はそれぞれ17,000人、11,000人です。各国ともに第1波のときよりも数字上では悪化しています。人口10万人あたりの感染者数で見ると、ヨーロッパの中でも比較的医療水準が低いと思われる東欧諸国の深刻さがめだちます。
課される行動制限
各国でその行動制限の種類は異なりますが、ドイツでは3月-4月の行動制限よりもだいぶ緩和はされています。前回は学校も休校になりましたが、条件をつけながら開校しています。薬局やスーパーマーケットなどの日用必需品を扱う店以外はすべて閉店されていましたが、今回はそうではありません。たとえばZaraやユニクロなどの小売店は今回は営業しています。ただ人の集まりは必要最低限に制限され、現時点で一同に会することができるのは2世帯5人以下までです。これらは10月末より始まりましたが、状況は一向に良くならないため少しずつではありますが行動制限が厳しくなっています。またフランスは一時期より少し落ち着きつつあるため、内外から賛否があるものの行動制限が緩和されています。
もうすぐクリスマスを迎えるため、年末年始の行動制限をどうするかということが各国首脳陣の悩みの種です。ドイツでは12月23日から1月1日は行動制限を若干緩和し、家族や親しい友人との集まりを最大10人まで認めるとしています。反対にイタリアは仕事などの特別な理由を除いて、クリスマス期間中の州をまたぐ移動を禁止するようです。各国ともに年明けの状況を見てこの制限の見直しを行うのでしょうが、私は個人的に厳しいものになるのではないかと推測しています。EU/EEA加盟国はイギリスを含めて他国で就労している人もかなりいます。クリスマスは母国の家族で過ごしたいという人は少なくありません。そのため、新型コロナウイルス(COVID-19)流行期間中であれ、かなりの人の動きがあるのではないかと推測します。
ワクチンの接種開始
日本でも大きく報道されたようですが、イギリスがファイザー/BioNTechの新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンを初めて承認し、接種が開始されます。高齢者福祉スタッフ、高齢者、医療従事者などが優先となるようです。ドイツ、フランスでも年内に認可をめざすとしています。自国民からの不安の声も聞かれますが、ロシアでもワクチン接種が始まりました。しかし、全世界で流行している状況を鑑みると、行き渡るまでに時間がかかるでしょう。クリスマス休暇という1年でもっとも人が動く時期とぶつかるため、決して安心はできないと考えています。その根底にあるのはヨーロッパ人の衛生概念と行動様式です。彼らの衛生概念は日本人のそれと比較してかなり低いです。たとえば日本人はマスクを使ったら翌日は新しいものを使うと思います。ヨーロッパの多くの国でも公共の場でのマスク着用は必須になりましたので、多くの人がマスクをしていますが、一体何日同じマスクを使っているのだろうと思えるような人はたくさん見かけます。またクリスマスでは多くの人の気が緩むので、その後の安心はできません。クリスマスから年末にかけて羽目を外す人も少なくはありません。乾燥しがちな冬の気候の影響もあり、年明けの感染拡大があるのではないかと私は心配です。
今後の予測
ワクチン接種開始という吉報はありますが、クリスマスや冬の気候、ヨーロッパ人の衛生概念と行動形式を考慮すると決して安心はできないでしょう。ただ、各国ともに新型コロナウイルス(COVID-19)関連の出費に頭を抱えていると思います。多くのヨーロッパの国々でロックダウン期間中などに休業補償など手厚い補償をしてきました。これ以上サポートするのは難しい国がほとんどです。したがって、日本同様なるべくロックダウンは避けて通常の状態に戻していきたいというのが各国首脳陣の本音ではないかと思います。しかしいろいろなことが流動的で遅れる傾向が見られます。ヨーロッパビジネスを行っているみなさまにおかれましては、ご自身の健康管理を第一に、いつも以上にスケジュールに余裕を持って活動された方がよろしいかと存じます。
出典
BBC (2020). Covid: First batch of vaccines arrives in the UK. BBC News. (https://www.bbc.com/news/uk-55181665).
BBC (2020). Covid: Russia begins vaccinations in Moscow. BBC News. (https://www.bbc.com/news/world-europe-55198166)
Berliner Morgenpost (2020). Coronavirus: Interaktive Karte zeigt aktuelle Zahl der Corona-Infektionen in Deutschland, Europa und weltweit. (https://interaktiv.morgenpost.de/corona-virus-karte-infektionen-deutschland-weltweit/).
Chadwick, L. (2020). Italy bans Christmas travel after record daily deaths. euronews. (https://www.euronews.com/2020/12/03/europe-not-in-a-stable-situation-says-who-as-cases-rise-in-serbia-and-croatia).
Deutsche Welle (www.dw.com) (2020). German coronavirus aid can’t last indefinitely, Angela Merkel warns | DW | 05.12.2020. (https://www.dw.com/en/german-coronavirus-aid-cant-last-indefinitely-angela-merkel-warns/a-55832152).
在ドイツ日本国大使館 (2020). 新型コロナウイルスに関する最新情報(ドイツ). (https://www.de.emb-japan.go.jp/itpr_ja/konsular_coronavirus200313-1.html).
浜田真梨子(はまだ・まりこ)
執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(欧州統括)
大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。