ヨーロッパの新型コロナウイルス(COVID-19)の現状(その2)

前回に引き続き、ヨーロッパからは新型コロナウイルス(COVID-19)の現状についてお伝えしたいと思います。日本では先日緊急事態宣言が日本全土で解除されましたが、ヨーロッパでも各国で徐々に緩和措置が進んでいます。ドイツでは5月4日から一部の学校や役所業務が再開しました。各国の状況は異なりますが、約2週間経って街の様子がどのように変わっているのかをお伝えしたいと思います。なお記載情報は2020年5月26日時点の情報となりますので、最新情報は各国政府機関などが公表している情報をご確認ください。

新型コロナウイルス(COVID-19)制限に関する緩和措置

ヨーロッパ諸国の新型コロナウイルス(COVID-19)緩和措置は、ヨーロッパの中でも比較的封じ込めに成功したと言えるドイツが筆頭になって始まりました。学校や公共施設、役所業務を一斉に再開するというものではなく、学校はまずは日本の小中学校における最終学年のみ開始する、役所業務についても極力接触を避けるような形態をとるといった様子を見ながら再開となりました。レストランやカフェについても「テーブル間を1.5メートル開ける」などといった州ごとに定められた規定を満たした店舗は再開できますが、それ以外の店舗については再開できません。日本以上に厳しい開店時間に対する制限もあります。在宅勤務が難しい業種・職種を除いては可能な限り在宅勤務が奨励されています。したがって外に出る人は例年よりも決して多くはなく、行動制限が緩和されて数週間経った後もオフィス街や観光地は閑散としています。

閑散としているベルリンの観光地 チェックポイント・チャーリー

閑散としているベルリンの観光地 チェックポイント・チャーリー

新型コロナウイルス(COVID-19)流行前はいつも満員だったカフェ(緩和措置後に撮影)

新型コロナウイルス(COVID-19)流行前はいつも満員だったカフェ(緩和措置後に撮影)

自治体ごとに段階的に進む緩和措置

ドイツにおいては緩和措置に関する全体方針は2週間に1回ドイツの連邦首相(アンゲラ・メルケル氏)と全16州の知事とで連絡会議を行い、その時の国内の状況を鑑みて緩和措置を進めるかについて決定します。その緩和措置は国で全体方針を定めるものの、詳細な運用は各州に委ねられています。ドイツは16の州から成る連邦制をとっているので各州の状況はかなり異なります。したがってドイツとビジネスを行っている企業の方はドイツ全体だけではなく、その取引先企業や工場のある土地の州の施策をあわせて確認する必要があります。さらに取引先の事業所や工場がドイツにあったとしても、本社が別の国にある場合は本社所在地の施策に影響を受けることもあります。したがって、ドイツ国内やその州で大幅な緩和措置が進んでいたとしても必ずしもその企業や工場が営業しているとは限りません。

自治体ごとに緩和施策の状況が異なるのはフランスやイギリスも同様です。フランスの場合は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染や病院の受け入れ可否などの状況を都市・地域ごとに分け、状況が安定しているエリアとそうでないエリアとで制限緩和施策が異なります。イギリスは、先日イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドそれぞれで今後の出口戦略を発表しました。したがって、ヨーロッパやそれぞれの国で一括りにはせずに現地の詳細な状況をよく調べる必要があります。

緩和措置後のビジネスへの影響

前回も述べた通り、各国ともウイルスの封じ込めに成功して手放しで緩和措置を取っているわけではありません。新型コロナウイルス(COVID-19)との戦いは長いものになることを想定して、自重しながら一歩一歩進んでいるのが現状です。ある飲食店関係者は「むしろ緩和措置からが勝負」と述べています。デリバーリーメニューの充実や店舗の改装を行ったとしても、長引く自粛・外出制限解除後にこれまでのお客さんが戻ってくるとは限りません。店舗営業を再開したものの仕事にならず、数日後にまた自主閉店する店舗も少なくありません。もし従業員に新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が出た場合、その企業や店舗、工場を長期間閉鎖せざるをえない国・地域も多く、経営者は慎重にならざるを得ません。

しかし、各国政府は慎重になりながらも新型コロナウイルス(COVID-19)前の状況に少しでも近づける努力を始めています。特にその国の経済に影響を及ぼす主要産業や人間の生活に関わる優先順位の高いビジネスについてはその傾向が見られます。観光業への依存度が高い国々は夏休みシーズンを前に、現在は閉じられている国境管理の緩和に向けた努力と交渉を行っています。ベルリン州などではこれまで行っている国外からの入国者に対する14日間の検疫措置について5月19日よりEU/EEA/UKからの入国者については対象外とするという緩和措置を発表しました。このような流れは各国・地域で進むと考えられます。

徐々に乗客が増え始めたベルリン=フリードリヒ通り駅

徐々に乗客が増え始めたベルリン=フリードリヒ通り駅

今後の予測

日本と同様ヨーロッパ各国では新型コロナウイルス(COVID-19)の緩和措置が進んでいくでしょう。ただ、ヨーロッパ大陸は陸続きであり、人の往来も多いことから各国政府は日本以上に慎重にならざるを得ないところがあります。しかし国境開放ももう間も無くなのではないかと感じています。日本の新型コロナウイルス(COVID-19)状況が安定していれば、日本人の入国制限は比較的に早期に認められる可能性は高いと私たちは考えています。皆さまの健康と安全が第一ですがそれ自体が海外ビジネスへも大きく影響することを理解いただき、お気をつけてお過ごしください。

新型コロナウイルス(COVID-19)下でヨーロッパのビジネスを行っている方や、お困りの方はいらっしゃいませんか。ジェイシーズでは現地担当者ともに皆さまのご相談に応じますので、お気軽にお問い合わせください。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

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