バーチャル見本市(展示会)とはどんなもの?

弊社では見本市(展示会)の出展支援も数多く行っておりますが、今年は新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行の影響で見本市の開催については多くの影響が出ています。特に最近では見本市大国のヨーロッパの感染拡大が深刻です。ドイツでは9月から見本市を再開しましたがその後の状況悪化を受けて多くの見本市が中止、延期もしくはバーチャルでの開催を行っています。このバーチャル見本市とは一体どのようなものでしょうか。先日バーチャル版Bar Convent Berlin (BCB)2020に参加しましたので、そのレポートと合わせてお知らせします。

有名な医療見本市MEDICAも今年はバーチャル開催を決定した
有名な医療見本市MEDICAも今年はバーチャル開催を決定した

Bar Convent Berlin(BCB)とは

Bar Convent Berlin(BCB)とはアルコール飲料、バー業界をターゲットとした見本市(展示会)です。2007年以降ドイツ・ベルリンで開催され、ニューヨーク、サンパウロでも同様のイベントが行われています。BCBはアルコール飲料やシェイカー等のバー用品を扱う専門見本市としては、世界で最も重要な催しと言われています。昨年開催されたBCB2019では、日本からは泡盛などを取り扱う沖縄企業や高級カクテルシェイカーを扱う豊田市の企業などの出展が見られました。
BCBでは最新のアルコール飲料のテイスティングや流通経路の開拓だけではなく、業界リーダーによる講演等も開催されており、バーテンダーなどのバー関係者のための勉強会という側面も有しています。その内容については単なる業界動向や、今年であれば新型コロナウイルスの影響といったビジネスに関するものに止まりません。多様性(ダイバーシティ)や持続可能性(サステイナビリティ)といったトピックをとりあげ、本業界の社会的責任をについて関係者への意識づけを行っています。

BCB2019の開催風景
BCB2019の開催風景

バーチャル版Bar Convent Berlin(BCB)

このBCB2020ですが新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けて、バーチャル形式で開催されました。参加者は事前登録制でアルコール飲料やバー業界関係者、マーケティング関係の専門家などに限られます。参加者のみがアクセスできるダッシュボードが与えられ、参加したいセミナーに申し込みます。内容としては「(ラムや焼酎といった)特定のアルコール飲料の楽しみ方」や「お酒にあうスナックの紹介」といった業界に特化したものもあれば、「サステイナビリティを本業界に導入するには」、「人種問題を考える」という内容のものもありました。Zoomなどを使って生放送で複数の関係者が意見を交わすものもあれば、すでに録画していると思われるセミナーもあります。いずれもオンデマンドとして、見逃したものやもう一度聞きたいものについてはアクセスが可能です。また、BCB自体がもともと有していた参加者同士のマッチング機能自体はバーチャル版にも引き継がれており、参加者のプロフィールを作成するSNSの機能を有しています。商談を進めたい場合はそのSNSを使って別の参加者にコンタクトをして、商談を進めることが可能です。

BCB2020(バーチャル見本市)のダッシュボード
BCB2020(バーチャル見本市)のダッシュボード

バーチャル見本市(展示会)のメリット・デメリット

多くの国や地域から人が集まることが難しいということで苦肉の策として開催されているこのバーチャル見本市(展示会)ですが、メリットもあります。さまざまな見本市(展示会)にリモートで簡単に参加できるという点です。特に講演形式の場合は物理的に集まることと、オンラインで開催されることの差はあまり感じられません。資料もダウンロード可能であったり、後から主催者から送られてきたりすることもあります。したがって、気軽に参加できるということは最大のメリットでしょう。また多くの講演は後日オンデマンドでウェブサイトからアクセス可能であることが多いので、時差や別の仕事との関係で参加できないといった場合であっても時間があるときに参加できます。

反対にデメリットとしては、商品を手に取ることができないということがあります。BCBも「テイスティングボックス」と称して、希望者に試飲用のアルコール飲料を配達するサービスを行っていましたが、気軽にブースを訪れるということはできません。また、そこで出会った人たちの会話を通じての学びやビジネスなども生まれにくいため、バーチャル見本市(展示会)からもたらす出展者への経済効果については今時点では懐疑的にならざるを得ません。

バーチャル見本市(展示会)への出展・参加について

それでは新型コロナウイルス(COVID-19)がおさまるまで、見本市(展示会)への出展・参加は見合わせた方が良いのでしょうか。私は決してそうではないと考えています。例えばBCBの主催者のペトラ・ラサーン氏は「BCBはその場にいることに意義があるコミュニティだ。参加者はこの場を通じて、本業界における人脈や知見を得ることができる」と、述べています。コロナ禍における見本市出展でもご紹介しましたが、見本市は継続参加することが望ましいです。したがって、できる限り毎年出展・参加して関係者とコネクションを維持することが重要でしょう。新型コロナウイルス(COVID-19)流行下においても出展・参加しているということは、業績が安定しておりその業界に太いパイプを有した有望な取引先候補になりうるということでもあります。まだまだ不安定な状況で新しいことに挑戦するのも難しいかもしれませんが、もしいつも出展・参加している見本市がバーチャル開催となった場合であっても、継続して出展・参加してみてください。また、バーチャルであるからこそ参加しやすい側面もあると思いますので、気軽に参加されてはいかがでしょうか。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ヨーロッパでバーチャル見本市(展示会)に興味がある、見本市(展示会)以外の販路開拓を検討したいなどのご要望がありましたらお気軽にお問い合わせください。

出典
Harald Kötter, AUMA Ausstellungs- und Messe-Ausschuss der Deutschen Wirtschaft e.V. (2020) “Coronavirus: Aktuelle Informationen.”, www.auma.de/de/medien/meldungen/corona-virus.

Messe Düsseldorf GmbH. (2020) “MEDICA.” www.medica-tradefair.com.

Reed Exhibitions Deutschland GmbH. (2020) “Bar Convent Berlin – BCB Pouring Digital 2020.” www.barconvent.com.

執筆者

浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(欧州統括)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

当社は、海外事業展開をサポートするプロフェッショナルチームです。
ご相談は無料です。お気軽にご連絡ください。

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