【アメリカ人の生活】アメリカにもある「一年の計は元旦にあり」
新年明けましておめでとうございます。今年2025年が皆様にとって恵み豊かで祝福された一年となりますよう心よりお祈り申し上げます。本年も株式会社ジェイシーズならびに当コラムをよろしくお願いいたします。
アメリカにもある「一年の計は元旦にあり」
アメリカにお住いの方であれば、年明け1月2日から仕事始めだという方が少なくないでしょう。アメリカの年末年始は日本のように盛り上がることはなく、大晦日に若者などがそろって新年のカウントダウンをしながらパーティーを盛り上げる程度で、新年を盛大に祝おうという感じではないでしょう。アメリカに長くお住いの方などは、日本の年末年始の独特の雰囲気が恋しいという方が少なくないかも知れません。
ところで、日本で年始を迎えるに際して多くの人が掲げるのが「一年の計」です。新年における目標や計画などを年度初めに具体的に明らかにし、その実現を目指すという習わしです。年始に「一年の計」を定める風習は、戦国武将の毛利元就に倣ったとする説が有力で、元就が詠んだ「一年の計は春にあり、一月の計は朔にあり、一日の計は鶏鳴にあり」を由来とするというものです。百戦錬磨の戦国武将が年度計画の策定の重要性を説いているのですから、日頃それぞれの仕事で忙しくしている我々なども多いに習うべきでしょう。
アメリカの「一年の計は元旦にあり」は“New year’s resolution”
そんな「一年の計は元旦にあり」ですが、アメリカにも同様のものが存在します。“New year’s resolution”と言うものです。直訳すると「新年のリゾルーション」となりますが、リゾルーションとは「決意」「意志」「決議」といった意味です。New year’s resolutionとは、「新年に表明する私の決意」といったニュアンスの言葉です。
New year’s resolutionの歴史は比較的古く、メリアム・ウェブスター辞典によると、1671年にスコットランドの議会議員で作家のアン・ハルケット(Anne Halkett)が日記に残した「決意表明」に端を発するとされています。彼女の決意表明は1671年1月2日に記されたもので、聖書の聖句から引用した「私は今後、人を傷つけない」という一文でした。
ハルケットの決意表明から始まったNew year’s resolutionは、19世紀を迎える頃までにはイギリス全土で広まり、イギリスの事実上の姉妹国アメリカにも伝わりました。1813年1月1日発行のボストンの地元紙には、当時のアメリカで新年にNew year’s resolutionを掲げる人が多くいるものの、それらの多くは実現されていないと揶揄する記事が掲載されています。アメリカにおいては、少なくとも今から200年以上前までには、New year’s resolutionがかなり一般的になっていたものと思われます。
アメリカ人のNew year’s resolutionとは具体的にどんなもの?
では、一般定期なアメリカ人が掲げるNew year’s resolutionとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。アメリカの経済雑誌Forbesが行った調査によると、2024年度にアメリカ人が掲げたもっともポピュラーなNew year’s resolutionは以下の通りでした:
・フィットネスの改善(全体の48%が回答、以下同じ)
・経済状況の改善(38%)
・メンタルヘルスの改善(36%)
・減量(34%)
・食生活の改善(32%)
・家族との時間を増やす(25%)
・タバコをやめる(12%)
・新しいスキルの習得(9%)
・趣味の時間を増やす(7%)
・ワークライフバランスの意改善(7%)
・旅行回数を増やす(6%)
・定期的に瞑想する(5%)
・お酒をやめる(3%)
・仕事のパフォーマンスの向上(3%)
「フィットネスの改善」「メンタルヘルスの改善」「減量」「食生活の改善」「タバコをやめる」といった、自らの健康管理に関するResolutionが多いことに気づきます。多くのアメリカ人にとって、健康に関する問題や課題が切実であることの裏返しであると言えるでしょう。
New year’s resolutionは実現できないもの?
なお、多くのアメリカ人にとってNew year’s resolutionとは年始に掲げるものではあるものの、必ずしも実現できるものとは認識されていないようです。上述のボストンの地元紙も、200年前にそのことを指摘しています:
「New year’s resolutionという、12月までに犯したすべての罪を新年に悔い改めるという厳かな風習に、どれほど多くの人が慣れ親しんでしまい、結果的に悔い改めることが無い状態で新たな年を迎えていることに嘆き、驚かざるを得ない」
これは200年前に書かれた記事ですが、現在の新聞記事としても違和感なく読める内容です。国民性や民族の習性というものは、どれだけの時間を経たとしても、そう簡単には変わるものではないのは間違いないでしょう。 アメリカの調査機関ピュー・リサーチセンターの調査によると、2024年度年始にNew year’s resolutionを掲げたアメリカ人は全体の30%に達し、特に18歳から29歳までの若い世代が49%と高い数字を示したそうです。少なくない数のアメリカ人にとってNew year’s resolutionは自身の生活に密着した大切なものであり、文化や風習として継承すべきものとなっているようです。新年にNew year’s resolutionを掲げたアメリカ人にとって、そして日本で元旦の計を掲げた日本人にとって、今年2025年が恵まれた一年となりますように。
前田 健二(まえだ・けんじ)
上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。