欧州事業展開を成功に導く秘訣 ~文化的戦略~

文化の違いに対する理解は、ビジネスの成否を別ける鍵となることがある。
とりわけ、グローバルな舞台では、文化の違いに敏感であることが信頼関係の構築に欠かせない。
本稿では、特に欧州人のビジネスマナーに焦点を当て、異文化コミュニケーションの秘訣を紹介したいと思う。

アイコンタクトの重要性

欧米文化において、アイコンタクトは信頼と誠実さを象徴するものである。
あいさつの際にしっかりと相手の目を見ることは、尊敬と関心を示す行為と考えられており、ビジネスで初めてあいさつするときには、握手をしながら相手の目を見るのが信頼構築の第一歩となる。
日本を含むアジア圏では、直接的なアイコンタクトは控えめ、というよりむしろ、礼儀作法を示すため視線を下に落とすことが多いのではないだろうか。ミャンマーなど仏教文化が色濃い地域では、一般人が僧侶と目を合わせることは失礼な行為だとされているほどだ。

欧米圏とアジア圏ではかくも違いがあるのだが、まずはこうした違いを知ることが最初のステップで、初めてあいさつするときに、握手をしながら、もしくは名刺を交換しながら、相手の目を見るということをぜひ実践していただきたい。

それからもう一つ、初めてのあいさつのときや雑談のときに心掛けていただきたいことがある。
名刺を交換し、おたがいの名前を知った以上、努めて名前で呼びかけながら会話していただきたいのである。
欧州の人々は、たとえ初対面であっても、その瞬間から相手の名前を会話に差し込んでくることが多い。これは幼少期から培われた習慣にほかならない。学校の先生や弁護士、医者などのことを一律に「先生」と呼んだり、友人の両親を「〇〇くんのママ/パパ」と呼んだりすることに馴れ親しんでいる日本人にとってはなかなか難しいことかもしれないが、これもまた、努めて意識していただきたいポイントである。

欧州では、たとえ初対面の相手であっても名前で呼び合い、相手への関心の高さと敬意を示す。別れのあいさつでも、「さようなら、○○さん」といった具合に、必ず名前をつける。呼ばれたほうはいたって心地よく、好印象をもってその場を去ることができるわけだ。

展示会での行動

ところで、ドイツをはじめとする欧州では、ビジネスを始めるにあたり見本市(メッセ)が絶大な役割を果たしている。
筆者はドイツで開催される見本市に出展する日本企業や地方自治体のブーススタッフとして、また、アテンド兼通訳を依頼されて参加することが多いのだが、そうしたなかで気づいた日本人特有のある振る舞いについて述べたい。

他の出展社のブースに立ち寄る際、ブース内のスタッフにあいさつ(声がけ)もせず、アイコンタクトさえせずに立ち入り、シャッター音の出る携帯電話で次から次へと撮影した後、またしても黙ったまま立ち去る日本人をたびたび目にする。見事なまでに終始、「黙して語らず」である。
こうした振る舞いは日本では問題ないのかもしれないが、欧米人の常識からすればまったくもってあり得ない奇行にほかならず、無礼極まりない挙動と言わざるを得ない。
欧米では、出展社のブースに立ち入る際には、必ずスタッフと目を合わせ、あいさつを交わすのが最低限の礼儀であり、常識なのである。

欧米文化をビジネスシーンに利用する

当然のことながら、他の国の企業とビジネスをするためには、信頼関係を構築しなければならない。アイコンタクトはそのための手法の一つに過ぎないが、これほどシンプルで手っ取り早いやり方なら、利用しないなどという選択肢はないであろう。例えば、会食の席にあっては、相手の目を見ながら一人ずつ、グラスを重ねて乾杯をすれば良く、会話やあいさつの中で、そして別れ際に、相手の名前を意識的に呼びさえすれば良いのである。

「郷に入っては郷に従え」というように、異文化の中でビジネスを行うにあたっては、おたがいの文化の違いを理解し、受け入れ、違和感なく行動することが重要である。たんに礼儀正しいというだけでなく、戦略的意味合いを持って振る舞うことで、成功に資することは間違いない。

ある会食でご一緒したドイツ企業の社長が言っていた。
「日本企業は決断が遅く、ビジネスをスタートさせるのに大いに時間がかかる。けれども、いったん信頼関係ができてしまうと、関係は長続きし、大いに価値がある」
欧州においてビジネスを行いたいすべての日本人が成すべきことは、舞台は欧州であることを自覚して襟を正し、謙虚に振る舞い、信頼関係を築き上げることに意を注いでいただきたいと思っている。

執筆者 吉澤 寿子(よしざわ・ひさこ)

CEO, Researching Plus GmbH
株式会社ジェイシーズ マーケティングコンサルタント(ドイツ)

早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員。
2007年渡独。デュッセルドルフ大学現代日本研究所博士課程に在籍し、研究を重ねるかたわらResearching Plus GmbHを設立。日本企業のドイツ進出、市場調査、視察・研修等に携わっている。お茶の水女子大学人間文化研究科修士課程修了。

Researching Plus GmbH: https://researchingplus.com
連絡先:h-yoshizawa@j-seeds.jp

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