アメリカの経済再開の見通しについて

未だに続く新型コロナウィルス感染拡大

 新型コロナウィルスの感染拡大が続くアメリカでは、すべての州で自宅待機命令や不要不急のビジネスの営業中止要請などの規制がかかっています。特にニューヨーク州、ニュージャージー州、イリノイ州、カリフォルニア州などの人口が多い州では、多くの都市でロックダウンが敷かれ、人の移動が厳しく制限されています。

 人との接触時に6フィート(約1.8メートル)以上の距離を空けるソーシャルディスタンシングや、外出時のマスク着用を義務付ける州もあり、新型コロナウィルスがもたらした「新たな日常」が強いられる暮らしは当面続きそうです。

全米の19の州で規制を一部解除

 一方で、ロックダウンや自宅待機命令などによりビジネスができなくなった人たちが経済の再開を求め、各地でデモを行っています。特に飲食店や小売店などのオーナーにとって事態は深刻で、中には売り上げがゼロになってしまい、家賃や人件費が払えないというケースが急増しています。

 そうした人たちの声を受けて、一部の州では今週初めより規制の一部解除を始めています。本記事執筆時点(2020年5月7日)までに、アラバマ州、アラスカ州、コロラド州、フロリダ州、ジョージア州、アイダホ州、インディアナ州、カンザス州、メイン州、ミシシッピ州、ミズーリ州、モンタナ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州、テネシー州、テキサス州、ユタ州、ウェストバージニア州、ワイオミング州の、19の州で規制の一部が解除され、ほとんどの店舗での営業が再開されています。

 しかし、規制の一部が解除されたとはいえ、すべての州でソーシャルディスタンシングを保つことや、飲食店の入場制限、マスクの着用などが未だに求められています。また、営業を再開したものの、客足は以前と比べて大分少なく、ビジネスの完全復活には程遠い状態が続いているようです。

完全な「経済再開」までには相当の時間が

 ニューヨーク州やカリフォルニア州などの州では未だに自宅待機命令が出され、人の移動が厳しく制限されています。一部の州では飲食店にテイクアウトとデリバリーによる営業を認めていますが、営業の完全再開の見通しは今のところたっていません。一方で、食料品や医薬品の販売、銀行などのエッセンシャルビジネスについては、通常通りの営業がなされています。

 ニューヨーク州は、現時点で今月末までの規制期限の延期を決めており、期限到来前までに規制を解除するか検討するとしています。しかし、経済の完全な再開はなされないとする見方が多数です。専門家の多くは、規制が解除されたとしても飲食店や小売店への入場制限や、消毒の徹底などの感染防止策の実施が求められると予想しており、「コロナ前」の状態へ戻ることはあり得ないとしています。

先が見えない入国制限解除

未だに新型コロナウィルスとの戦いの只中にあるアメリカですが、現在敷かれている入国制限は、そもそも解除されるのでしょうか。

 現時点で、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、日本の感染症危険情報度合をレベル3、つまり渡航中止勧告としています。そのため、日本からアメリカへ入国する人は、入国から14日間、ホテルなどでの待機を命じられます。待機期間中、対象者は健康状態を観察し、周囲と距離を置く自己隔離が求められます。日本からアメリカへ入国できることはできるのですが、通常よりも多くの時間とコストが必要になります。

 アメリカの新型コロナウィルス感染拡大に収束の兆しが見えない限り、アメリカの入国制限は当分の間解除されないと見ておいた方がいいでしょう。

メール、SNS、Skype、Zoomなどを活用してビジネスを

 では、アメリカでロックダウンなどが続く間、さらにはアメリカの入国制限が解除される見通しが立たない中、日本企業はアメリカでビジネスがまったくできないのでしょうか。

 答えはノーです。別の記事にも書きましたが、Amazonは通常通り営業しており、パンデミックの影響から業績がむしろ上向いています。Amazonは日本から出品も出来るので、メーカーや販社などであれば、Amazonを使ってビジネスをすることが可能です。

 アメリカの代理店や卸業者などの発掘についても、メールやSNSなどを使えば十分に行うことが可能です。メールやFacebookなどでアポがとれたら、SkypeやZoomなどでビデオ会議をすることも可能です。実際に、現在のアメリカの多くのビジネスマンはテレワークを余儀なくされていて、しかも対面でのミーティングも避けるよう要請されているため、SkypeやZoomなどを使うケースが非常に増えてきているのです。SkypeやZoomによるビデオ会議であれば、アメリカへの渡航費や宿泊費を払う必要もなく、極めてローコストで行うことができます。

「新たな日常」で出来ることをする

 新型コロナウィルスは、世界中の人々の生活を一変させました。パンデミックが完全に収束するまでにはまだまだ相当の時間がかかるでしょう。新型コロナウィルスがもたらした「新たな日常」において、出来ることをやってゆく他ありません。新型コロナウィルスがもたらしたピンチをチャンスに変えるべく、ブレークスルーされることを切に願っています。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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