アメリカで注目のFintech企業・SoFi

SoFiは教育ローン、住宅ローンなどのリファイナンスに特化したローン会社です。スタンフォード大学ビジネススクールの学生が立ち上げた同社は、高額の教育ローンを抱える学生や社会人にリファイナンスを提供しています。SoFiの仕組みやファイナンスモデルを、アメリカの教育ローン問題とともに解説します。

SoFiというFintech企業

 SoFiは、2011年にスタンフォード大学ビジネススクールの四人の学生が立ち上げた会社です。SoFi(ソーファイと発音)とはSocial Financeの略語で、文字通りソーシャルファイナンスを行う事を事業目的にしています。

 SoFiの主な商品の一つに教育ローンのリファイナンスがありますが、これは創業者四人が等しく教育ローンの問題を抱えていた事が直接関係しています。今日、アメリカの学生や社会人が抱える教育ローンの残高は1兆4,500憶ドル(約164兆円)という天文学的数字に達し、アメリカの社会問題のひとつとなっています。

 SoFiは当初、創業者らの母校のスタンフォード大学でパイロットプログラムを実施することでスタートしました。パイロットプログラムにはスタンフォード大学の卒業生40名が参加し、1人5万ドルを出資して200万ドル(約2憶2,600万円)のファンドが組成されました。それを原資に100名の学生がリファイナンスを受けました。以後、そのファンド組成スキームが成長し、SoFiは今日までに120憶ドル(約1兆3,560億円)の資金を調達するまでに拡大しました。

SoFiのビジネスモデル

 SoFiのビジネスモデルはシンプルです。SoFiは大学卒業生らによる出資でファンドを組成し、それを原資に学生にリファイナンス資金を提供しいます。アメリカでは公的、私的な教育ローンが多数存在し、ファイナンスの条件も多種多様です。連邦政府からの教育ローンなどは比較的条件が良いものが多いのですが、民間の教育ローンの中には利率が高く、返済期間も短いなど条件が厳しいものが少なくありません。SoFIは主に、そのような条件が良くない教育ローンを抱える学生などに対してリファイナンスを行っています。

 また、学生や社会人が複数の教育ローンを抱えているケースでは、日本のおまとめローンのような形で資金を提供しています。基本的には、返済条件が厳しいケースに対してリファイナンスし、利率や返済条件を緩和して返済猶予を持たせるのです。SoFiでリファイナンスすると、利用者は通常6か月間の元本返済据え置きが認められるので、返済に余裕を持たせる事が可能になるのです。

SoFiのリファイナンスで利率が下がる理由

 SoFiのリファイナンスで利率が下がる理由ですが、SoFiによると「効率」がその答えだといいます。SoFiのオペレーションはネットで完結し、固定費がかかる店舗を持ちません。借入の申し込みも紙ではなくすべてオンラインで行われ、オペレーションを効率化しています。カスタマーサービスも、ランニングコストが高いカリフォルニア州などを避けてコストの安い地方の州で行っています。

 また、リファイナンスで返済条件を緩和することで、結果的にSoFiの融資の焦げ付き率は他社のものよりも低くなっているそうです。さらには借り手が失業した際には一時的に返済を猶予し、再就職を支援するといったサービスも提供しています。利用者が再就職に成功し、収入が得られるようになったら改めて弁済を再開させるのです。

 SoFiはあくまでも利用者の立場に立ち、無理のない返済条件を課すことで返済を確実にし、結果的に同社のオペレーションコストと収益の両方にプラスの効果を与えています。

SoFiは教育ローン返済に苦しむ学生や社会人の助けとなるか?

 教育ローンのリファイナンスから始まったSoFiの事業は、現在までに住宅ローン、個人向けローン、親子ローンなどにも対象を広げています。

 ところで、SoFiのリファイナンス事業については、経済誌Forbsが懐疑的な記事を配信しています。それによると、SoFiのリファイナンスによってメリットを得られる人の数は、実際にはそれほど多くないというのです。多くの人はSoFiの審査を通過出来ず、SoFiのリファイナンスを受けられないとしています。また、現在までに連邦政府の教育ローン利率と民間の教育ローンの利率の格差が狭まってきており、リファイナンスの経済効果が以前ほどはなくなって来ているそうです。例えば、2013年までに実行された連邦政府の教育ローンの利率は6%から8%の固定金利です。最近の低金利のトレンドで民間の教育ローン事業者の調達利率が下がり、ほぼゼロで調達する事が可能になっています。よって、最近の一部の民間の教育ローンの利率は、3.5%から5%程度にまで下がっているそうです。

 一説によると、SoFiのリファイナンスの利用者の平均借入残高は10万ドル(約1,130万円)を超えており、残高の高さ故SoFiでリファイナンスするメリットが大きいそうです。逆に言えば、借入残高がそれほど多くないケースにおいては、SoFiでリファイナンスしても得られるメリットは大きくないかもしれません。

 それでも、SoFiでリファイナンスする意味はあるでしょう。失業した際の返済猶予や、リファイナンス後の返済据え置きなどは他の業者が提供していないものです。また、何よりも学生の側に立つスタンスが立派と言えるでしょう。アメリカの教育ローン事業者の中には、ほとんど高利貸のようなところもありますが、少なくともSoFiはそうではないことは間違いありません。教育ローンに苦しむアメリカの学生や社会人にとっては、SoFIの存在は大きいというべきでしょう。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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