クラウドキッチンとは何か?
クラウドキッチンをご存知でしょうか。クラウドキッチン(Cloud kitchen)とは、直訳するとクラウド化されたキッチンという意味ですが、クラウド化されたキッチンとは、果たして何でしょうか。
クラウドキッチンは、最近アメリカやインドなどで台頭著しい、飲食業界における新たなビジネスモデルです。クラウドキッチンにはテーブルも椅子もなく、接客スタッフも存在しません。さらにはテイクアウトも受け付けません。注文はインターネットで受け付け、注文を受けるとシェフが調理をし、調理された料理はUber Eatsなどの宅配代行業者によって注文者の家や職場へ配達されます。
決済もUber Eatsで行うので、キャッシュレジスターもクレジットカード決済端末もありません。純粋にキッチンの機能だけに特化した、新しい「飲食店」なのです。
クラウドキッチンのメリット
ところで、クラウドキッチンのメリットですが、何と言ってもコストの安さが第一でしょう。クラウドキッチンは通常のレストランと違い、ロケーションを選びません。通常のレストランが出来るだけ人通りの良いロケーションを選んで出店する一方、クラウドキッチンは逆に、ロケーションが悪く、賃料が安いところを選んで出店します。また、クラウドキッチンは8坪程度の大きさの物件であれば開業できるので、出店コストと毎月の家賃を大きく削減できます。
また、上述したように、クラウドキッチンは純粋に調理に特化しているので、接客スタッフを雇う必要がありません。また、配達スタッフも雇う必要がないので、人件費の負担を大きく削減できます。場合によってはシェフ一人でも立ち上げられるので、通常のレストランよりもオペレーションコストを大幅に削減できます。腕に覚えがあるシェフであれば、身一つで飲食ビジネスを立ち上げられるのがクラウドキッチンの大きなメリットです。
レンタル型クラウドキッチンも
現在アメリカやインドで出店が相次ぐクラウドキッチンの多くは、飲食業者などが自前の「店」として立ち上げています。一方で、飲食業者ではない第三者がクラウドキッチンを開設し、シェフなどに貸し出すレンタル型クラウドキッチンも多く立ち上がっています。
飲食店マッチングサイト大手のZomatoは、4つのキッチンが利用できるクラウドキッチンをシェフに貸し出す事業を展開しています。キッチンにはレンジやシンクなどのインフラに加え、各種の調理器具や鍋、皿、シルバーウェアも用意されていて、シェフは自由に利用できます。Zomatoはまた、廃業したレストランなどから調理機器などを買い取り、インフラコストを大幅に下げ、シェフの負担を抑えているそうです。
レンタル型クラウドキッチン事業を立ち上げた理由についてZomatoは、「飲食業界における開業のハードルを下げるため」と説明しています。通常のレストランの多くがそうであるように、シェフを長期の賃貸借契約で縛るのはなく、気軽に飲食ビジネスを立ち上げてもらい、仮に上手くいかなかったら気軽に撤退してもらうそうです。
シェフからは売上の一定額をもらい、家賃は徴収しません。集客はZomatoが行うので、シェフは集客する必要もありません。Zomatoのレンタル型クラウドキッチン事業は、キッチンというインフラを使った、シェフ達のためのシェアリングエコノミービジネスであるといっていいでしょう。
これから海外で日本食の飲食店開設を検討される際は、クラウドキッチンを検討されるのも手かもしれません。
前田 健二(まえだ・けんじ)
上席執行役員、北米担当コンサルタント
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。