【2024年米大統領選挙】アメリカ大統領選挙の基本を学ぶ

今年2024年はアメリカ大統領選挙が行われる年です。現時点では現職のバイデン大統領とトランプ前大統領の一騎打ちになることが予想されていますが、両者それぞれ複数の不安要素を抱えており、予断をまったく許さない状況です。ところで、アメリカ大統領選挙とは、基本的にどのような仕組みなのでしょうか。本記事では、米政府公式サイトなどから、あらためてアメリカ大統領選挙の基本を学びます。

そもそも「デモクラシー(民主主義)」とは何か?

アメリカ大統領選挙の基本の前に、それがよって立つ「デモクラシー(民主主義)」について定義を確認しておきましょう。そもそも「デモクラシー(民主主義)」とは何でしょうか。出版大手のハーパーコリンズは、デモクラシーを次のように定義しています。

「デモクラシー(民主主義)」とは、その国に住む人民が自らのコミュニティの政治的方向性を決める政治システムのことである」

デモクラシーを国是とするアメリカにおいては、さらに以下の命題を前提にするとしています:

・人民は、みずからの意思と利益を実現する代理人を選挙で選ぶ
・我々の政府は憲法により、立法府、行政府、司法府の三つに分けられる
・いずれの府に対しても、過度の権力を持たせぬためのチェックアンドバランスを行うシステムが求められる

以上を踏まえて、四年に一度アメリカ大統領選挙が行われています。 

アメリカ大統領選挙の仕組み:プライマリーとコーカサス

アメリカ大統領選挙には、35歳以上のアメリカ生まれのアメリカ市民でアメリカに14年以上居住している人であれば誰でも立候補できます。しかし、近年のアメリカ大統領には民主党と共和党の二大政党により指名された候補者しか事実上選ばれていません。よって、アメリカ大統領になるには民主党または共和党から大統領候補者として選出される必要があります。その大統領候補者を選出する最初のプロセスがプライマリー(Primary)とコーカサス(Caucuses)です。なお、日本語ではプライマリーは「予備選挙」、コーカサスは「党員集会」とそれぞれ訳されています。

プライマリーとコーカサスでは、党員による大統領候補者への投票が行われます。通常は大統領選挙の年の1月から各州で行われ、大統領候補に投票できる代議人(デレゲート、delegate)を選出します。代議人は党大会の本選挙で大統領候補に直接投票するので、代議人をもっとも多く獲得した大統領候補者が事実上の各党の勝者になります。

なお、今年の大統領選挙におけるプライマリーとコーカサスはすでに始まっています。共和党は2024年1月15日にアイオワ州で、民主党は同年1月23日にニューハンプシャー州で、プライマリーとコーカサスがそれぞれ始まっています。

全国党大会

プライマリーとコーカサスで大統領候補者の趨勢が見えて来る頃に、民主党・共和党がそれぞれ全国党大会(National convention)を開催し、正式に党の大統領候補者を指名します。正確には、プライマリーとコーカサスで選出された全国の代議人が投票して大統領候補者を決定します。大統領候補者が選出されると、大統領候補者は副大統領候補者を正式に指名します。

なお、民主党は2024年8月19日から22日の四日間の日程でシカゴのユナイテッドセンターで、共和党は同年7月15日から18日の三日間の日程でミルウォーキーのフィサーブ・フォーラムでそれぞれ全国党大会を行う予定です。全国党大会は、大統領を擁する党が対立党よりも遅く開催するのが伝統的習わしとなっていて、今年もそれに倣った形となっています。

本選挙

全国党大会で大統領候補者と副題党候補者がそれぞれ指名されると、いよいよ本選挙です。アメリカ大統領選挙の投票日は、アメリカ連邦法で「11月第一月曜日の翌日火曜日」と決められていて、今年2024年は11月5日火曜日に投票が行われます。

アメリカ大統領選挙は、有権者が大統領候補者へ直接投票する直接選挙ではなく、大統領に投票する選挙人(エレクター、Elector)に投票する間接選挙です。選挙人の数は州ごとに違っており、定期的に実施されるアメリカ国勢調査の結果をもとに配分されます。例えば、人口の少ないアラスカ州の選挙人は3人、人口の多いカリフォルニア州の選挙人は54人となっています。

選挙人の数は合計538人で、過半数以上の270人以上の選挙人を獲得した大統領候補者が勝者となります。なお、48の州とワシントンDCでは、選挙人の「勝者総取り方式」(Winner takes all system)が採用されていて、対抗馬よりも一票でも多く獲得できれば、その州のすべての選挙人を獲得できます。選挙人の数を争うことから、総得票数が対抗馬を上回っていても落選することもあります。2016年の大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン候補が総得票数でドナルド・トランプ氏を上回ったものの、選挙人数では232人しか獲得できず、落選しています。アメリカ大統領になるには270人以上の選挙人の獲得が必要で、270という数字がマジックナンバーということになります。

執筆者

前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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