稼働していない車と利用希望者をマッチングするTUROとは?

自宅の庭や駐車場に駐車されたままの状態になっていて、ほとんど稼働していないという車は少なくないでしょう。そんな不稼働の状態にある車と車の利用希望者とをマッチングする仕組みがアメリカで普及しつつあります。P2Pカーシェアリングと呼ばれる仕組みですが、その最大のプラットフォームを提供しているTUROという会社をご紹介します。

P2PカーシェアリングプラットフォームのTUROとは

TURO(トゥーロー)は、2010年に起業家シェルビー・クラークがボストンで設立したP2Pカーシェアリング会社です。P2P(ピアトゥウピア)カーシェアリングとは、一般の人が所有する車をタイムシェア方式で貸し出す仕組みです。

UberやLyftなどのライドシェアリングは、オーナーがドライバーとなって利用者にライドを提供する仕組みですが、P2Pカーシェアリングは、オーナーが車を利用していない時に利用希望者に車を貸し出す仕組みです。ある調査によると、一般的なアメリカ人が所有する車は、平均で全時間の95%も利用されていない状態にあるそうです。いうなれば多くの車がほとんど使われていない状態にあるのです。

TUROはそれに目をつけ、使われていない不稼働の車を利用したい人にタイムシェアで貸し出す仕組みとして誕生しました。AirBnBが、自宅などの空き部屋を利用したい人にタイムシェアで貸し出すのと同様の仕組みです。シェアリングエコノミーが世界中で台頭する中、TUROは誕生からわずか10年で世界56カ国でサービスを提供するまでに成長しました。

TUROのビジネスモデルはどうなっている?

TUROのビジネスモデルですが、仕組みは極めてシンプルです。まず、自分の車を貸し出したいオーナーがTUROのウェブサイトで登録を行います。登録する情報は、主に①車に関する情報、②自分に関する情報です。車に関する情報では、車種や年式、車の状態に関する情報などの入力が求められます。自分に関する情報は、連絡先、免許証、保険などの情報です。基本的な情報とともに、車の貸し出し可能日時の入力も求められます。TUROはその情報に基づいて利用希望者と車をマッチングします。

利用希望者はTUROのウェブサイトか専用のモバイルアプリで利用を希望するエリアと利用希望日時を入力して検索します。すると検索結果が表示されるので、好きな車を選んで予約をします。予約がオーナーに承認されるとマッチング成立となります。

なお、利用料金はTUROが規定するレートによって定まります。ポルシェやフェラーリといった高級車は高額で、カローラやプリウスなどの一般車は低額に設定されています。また、年式も新しい程高くなります。決済は、利用希望者が登録したクレジットカードで決済されます。決済完了後、TUROの手数料(10%-40%程度)が控除された金額が5営業日以内に振込でオーナーに支払われます。

オーナーはいくらくらい稼げる?

さて、気になるオーナーが稼げる額ですが、車の市場価値、ローン残債額、貸し出し時間、そして貸し出しエリアによって大きく変わります。TUROが公開している目安として、ロサンゼルス圏で市場価格2万ドル(約270万円)の車を月に15日間貸し出すと、オーナーの受取額は541ドル(約7万3035円)となります。これを高いと見るか安いと見るかは人によって違うと思われますが、自分が直接働かず、単にオーナーとして受け取れる額としては悪くないように見えます。

また、自分が普段乗る車とは別に新たな車を用意し、TURO専用車として貸し出すオーナーも増えているそうです。仮に月の稼働時間を限りなく100%に近づけた場合、受取額は倍の1,082ドル(約14万6070円)となります。車両購入費用やメンテナンスコストなどを考慮する必要はありますが、サイドビジネスとして得られる額としては決して悪くないでしょう。

ところで、TUROには最大100万ドル(約1億1千万円)まで補償する損害保険が自動的に付いてきます。TUROの保険を拒否して自ら任意で保険を購入することも可能です。

TUROが直面する課題は?

一方で、当然ながらTUROには課題もあります。TUROには100万ドルまで補償する損害保険が自動的に付いてくると書きましたが、それが問題になるケースが生じています。特にポルシェやフェラーリなどの高級車の場合、問題になるケースが少なくないようです。

あるオーナーはアウディのスーパーカー「アウディR8」をTUROに登録し、貸し出したところ全損の事故を起こされました。事故の報告を受け、TUROに保険請求の手続きを行ったところ、TUROは貸し出した当時のアウディR8の市場価格を12,000ドル(約162万円)と評価したそうです。オーナーによると、オーナーはアウディR8の購入に8万ドル(約1080万円)近くを投じており、その金額では全然足りないと主張しています。

スーパーカーなどの高級車の場合、中古車市場が不安定で査定が難しいという状況が背景にあるようです。TUROでは各種のスーパーカーが人気車種になっており、今後はしっかりとした対応が求められるでしょう。

また、オーナーと利用希望者との連絡が上手くとれないといったトラブルも少なくないようです。利用希望者が車を受け取りにいっても車がなかった、約束の時間にオーナーがいなかった、貸出時の運転免許証確認が不十分だった等々、コンスタントにトラブルが発生しているようです。

いずれにせよ、不稼働の車をタイムシェアで貸し出すという仕組みは今後さらに広がってゆくでしょう。そして、サイドビジネスとしてTUROを、または投資としてTUROを行う人も今後さらに増えてくるでしょう。これまでにアメリカは実に様々なサイドビジネスを生んできましたが、TUROはとりわけユニークです。アメリカ人にとっての新たな稼ぐ手段としてもTUROは今後注目されてゆくでしょう。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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