【2021年7月7日更新】アメリカのコロナワクチン接種状況

7月4日の建国記念日を迎えたアメリカで、新型コロナウィルスのワクチン接種が進んでいます。建国記念日までに成人人口の70%にワクチン接種を目指すとしていた当座の目標は達成できなかったものの、複数の州でワクチン完全接種率が70%を超えています。一方、州により接種率に相応のばらつきがあるようです。アメリカ最新のコロナワクチン接種状況をお伝えします。

アメリカ全体のコロナワクチン接種状況

本記事執筆時点(アメリカ現地時間2021年7月6日)のアメリカ全体のコロナワクチン接種状況は、接種率(接種1回を終えた人、および接種1回で済むワクチンを接種した人の合計の割合)55.0%、完全接種率(接種2回を終えた人、および接種1回で済むワクチンを接種した人の合計の割合)47.5%となっています。

18歳以上の成人人口では、接種率67.1%、完全接種率58.3%となっています。バイデン政権は、アメリカ建国記念日(7月4日)までに成人人口の完全接種率70%を目指していましたが、残念ながら達成できませんでした。

州によっては成人人口の完全接種率70%超えの州も

一方、州によっては成人人口の完全接種率70%超えの州も出てきています。現時点では、バーモント州の完全接種率がアメリカで最も高く、接種率85.5%、完全接種率76.4%となっています。マサチューセッツ州がそれに続き、接種率82.6%、完全接種率72.9%となっています。他にも、コネチカット州(接種率79.6%、完全接種率72.7%)、メーン州(接種率77.8%、完全接種率72.5%)、ロードアイランド(接種率76.2%、完全接種率70.1%)において成人人口の完全接種率が70%を超えています。

なお、人口が多い州では、ニューヨーク州(接種率72.7%、完全接種率66.1%)、カリフォルニア州(接種率75.2%、完全接種率61.5%)、イリノイ州(接種率72.3%、完全接種率57.0%)、テキサス州(接種率61.6%、完全接種率52.9%)となっています。

ワクチン接種が進まない州も

一方、州によってはワクチン接種が進んでいません。具体的には、ミシシッピ州(接種率46.3%、完全接種率38.4%)、アラバマ州(接種率50.5%、完全接種率41.6%)、米バージン諸島(接種率49.2%、完全接種率42.3%)、ワイオミング州(接種率50.2%、完全接種率44.7%)、アーカンソー州(接種率53.2%、完全接種率43.6%)、ウェストバージニア州(接種率52.5%、完全接種率45.2%)などです。

アメリカでは、民主党支持者が多い州をブルーステート(Blue State)、共和党支持者が多い州をレッドステート(Red State)と呼びますが、ざっと俯瞰するに、多くのブルーステートにおいてコロナワクチンの接種が進んでおり、多くのレッドステートで進んでいない状況が見て取れます。

レッドステートでワクチン接種が進まない理由

では、なぜ多くのレッドステートでコロナワクチンの接種が進んでいないのでしょうか。ウェストバージニア州などは、ワクチン接種した人に無料奨学金や無料フィッシングライセンスや無料ハンティングライセンスが当たる宝くじまで提供しているにも関わらずです。

ワシントンポストとABCニュースが共同で実施した世論調査によると、これまでにコロナワクチンを接種したことがないアメリカ市民の74%が、今後もワクチン接種を受けるつもりがないと回答しています。支持政党別では、民主党支持者の6%がワクチン接種を受けるつもりがないと回答している一方で、共和党支持者の47%がワクチン接種を受けるつもりがないと回答しています。

テキサスA&M大学が実施した別の調査によると、ワクチン接種を受けるつもりがないと答えた人の約半数が、ワクチンの安全性と効果について信頼または期待できないと答えています。また、ワクチン接種拒否者の多くはトランプ前大統領の支持者であるとも見られており、トランプ政権が当初主張していた「新型コロナウィルスは風邪のようなもの」といった考え方の影響を受けているとされています。

アメリカは「二つのアメリカ」になってしまうのか

現在のアメリカでは、デルタ型と呼ばれる新型コロナウィルスの変異型が流行の兆しを見せつつあります。そして、そのデルタ型ウィルスが、ワクチン未接種者を中心に蔓延するリスクが指摘されています。

大統領の医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士は、「(デルタ型ウィルスが)全国的に広がることは恐らくないだろう。アメリカの多くの地域ではワクチン接種が順調に進んでいるからだ。しかし、一部の地域においては感染が広がる可能性がある。つまり、コロナの感染拡大が抑えられているアメリカと、感染拡大が抑えられていないアメリカという「二つのアメリカ」を目にすることになる可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。

実際のところ、ファウチ博士が予言する「二つのアメリカ」は、すでにその姿を見せ始めているようにも見えます。ワクチン接種が世界的に進むにつれて、日米間の往来が再開される日が近づくと思われますが、仮に往来が再開されたとしても、「普通に訪問できるアメリカ」と「普通に訪問出来ないアメリカ」の二つに分断される可能性はゼロではないかもしれません。ワクチン接種を頑なに拒むレッドステートの人々の考えが変わることを願うばかりです。

※株式会社ジェイシーズでは、引き続きアメリカの新型コロナウィルス感染状況やワクチン接種に関する情報を収集し、随時アップデートしてゆきます。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

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