アメリカで注目のスタートアップ企業・Nuro

2020.10.28

無人宅配自動運転車開発のNuro

シリコンバレーにNuro(ニューロ)というスタートアップ企業があります。NuroはGoogleの自動運転車開発プロジェクトの中心メンバーだったデーブ・ファーガソン氏とジアジュン・シュー氏が2016年に設立した、小型の無人宅配自動運転車を開発している会社です。同社はシリーズA投資でバニヤン・キャピタル、グレイロック・パートナーズのベンチャーキャピタル2社から9,200万ドル(約10憶1,200万円)の資金を調達し、話題を集めました。

配送センターなどのハブから家庭や職場までの物流の最終区間をラストマイル・ロジスティクス(Last Mile Logistics)と呼びますが、このラストマイル・ロジスティクスに照準を当てたベンチャー企業がアメリカで最近多く誕生しています。Nuroもまさにそうした一社ですが、同社が開発している無人宅配自動運転車は、運輸業者などの物流関係者から大いに注目されています。ラストマイル・ロジスティクスでは物流全体のコストの30%から50%が使われるとされ、Nuroの無人宅配自動運転車が人件費などのコストを削減すると期待されているのです。

無人宅配自動運転車「R2」とは?

では、Nuroが開発している無人宅配自動運転車「R2」を見てみましょう。R2は日本の軽自動車の半分くらいの大きさの四輪電気自動車で、荷物を搭載するスペースが前後に二か所用意されています。LiDAR、レーダー、各種のセンサーを搭載し、完全自動運転を行います。収容スペースにオプションでロッカー、ドライクリーニングラック、冷蔵コンテナーなどを搭載することも可能で、一般的なサイズのショッピングバッグであれば10個程度搭載可能です。また、ピンパッドと呼ばれる操作用画面が搭載されていて、R2の操作や受け取り時の認証などが行えるようになっています。

R2は、一般にサイドウォーク・ロボットと呼ばれている宅配ロボットではありません。現在アメリカでは複数のベンチャー企業がピザなどを宅配する宅配ロボットを開発していますが、R2はあくまでも自動運転車です。宅配できる距離はサイドウォーク・ロボットよりもはるかに長いのですが、R2は一般道路での利用が想定されていて、高速道路は走れません。

生鮮食料品の宅配からスタート

なお、R2の利用につき、Nuroは現在複数の企業と協議をしています。当初はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどからの生鮮食料品の宅配での利用が想定されていますが、それ以外にも用途はかなり広いと思われます。例えば、Uberはレストランから家庭や職場へ注文品を配達するUberイーツというサービスを提供していますが、R2がそれをリプレースする可能性は低くないでしょう。宅配以外にもクリーニング用衣類のピックアップ、返品の受け取り、修理やメンテナンスの品の引き取り等々、利用シーンはいくらでも考えられます。

ある専門家は、人間を載せて走る自動運転車の実現よりも、R2のような人間を載せない自動運転車の実現の方が早く、現実的だと指摘しています。人間を載せて走る自動運転車はクリアすべき技術的課題や、法律などを含む社会システムの整備の問題が伴いますが、人間を載せない自動運転車は、そうした課題や問題がより少ないからです。人間を載せて走る自動運転車の実現にはまだ10年程度かかると言われていますが、R2はそれよりも早く商用での利用が開始される可能性が高いとされています。

将来的にはAmazonと提携も

ところで、ラストマイル・ロジスティクスについては、Amazonもいくつか興味深いプロジェクトを立ち上げています。そのシンボリックな例として、ドローンを使った宅配サービスAmazonプライムエアの実証実験が挙げられます。

Amazonプライムエアは、ドローンを使って注文受付から30分以内に商品を届けるというもので、実現するとラストマイル・ロジスティクスを大きく変えると言われています。一方、ドローンでは輸送する荷物の重量や数量などに制限があり、あらゆるものを輸送できるわけではありません。一方、R2は一般的なサイズのショッピングバッグであれば最大10個まで輸送できるので、ドローンで運べないものを輸送する際の代替手段になり得ます。

また、Amazonは、買収したホールフーズ・マーケットの無料宅配サービスの実証実験も開始しています。ホールフーズの営業時間中に品物を2時間以内に届けるというサービスですが、これにもR2がフィットします。コスト的な問題がクリアされれば、R2が適役になる可能性が高いでしょう。

ところで、Nuroは現在のところ、R2の価格や運用コストなどについての情報を公開していません。R2が未だにテストフェーズにあることと、マネタイズ方法などを含めたビジネスモデルが確立できていないのが理由でしょう。宅配ロボットの領域では、これまでにビジネスモデルを確立し、順調に普及させているケースが出てきていますが、R2がそうしたフェーズに到達するにはもう少し時間がかかるかもしれません。いずれにせよ、R2が正式にリリースされ、物流の世界のゲームチェンジャーとなる日が待ち遠しいです。なお、Nuroには日本のソフトバンクグループも出資しています。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

連絡先:k-maeda@j-seeds.jp

ジェイシーズは、御社のアメリカでの事業展開をお手伝いしています。ご相談は無料ですので、お気軽にご相談下さい。

無料ご相談フォームはこちら