FDAという名のアメリカの組織

FDAという組織

新型コロナウィルスの感染拡大が続くアメリカ。インターネット通販の利用が全米で拡大する中、日本の食品や化粧品などを販売する機運が高まっています。ところで、アメリカで食品や化粧品、または医薬品、医療機器などを販売する際に避けて通れないのがFDAです。最近はテレビのニュースなどでも頻繁に耳にするFDAですが、FDAとはそもそもどのような組織なのでしょうか。

FDA(Food and Drug Administration,米国食品医薬品局)は、米国保健福祉省傘下の連邦組織です。その歴史は古く、1906年に設立されています。FDAは、食品、タバコ製品、ダイエタリー・サプリメント、処方箋医薬品、OTC(Over the Counter)医薬品、ワクチン、バイオ医薬品、輸血、医療機器、電磁気放射線医療機器、化粧品、動物用食品、動物用医薬品をそれぞれ管理・監視し、公衆衛生を守り促進することを目的にしています。

FDAのトップは長官(Commissioner)です。長官は議会の承認を経て、大統領が直接指名します。現在の長官は、テキサス州のMDアンダーソンがんセンター最高医療責任者などを歴任したスティーブン・ハーン氏が、2019年12月から務めています。なお、ハーン氏のFDA長官としての報酬は年間16万ドル(約1944万円)で、民間時代の報酬93万ドル(約1億44万円)を大きく下回っているそうです。報酬が5分の1以下になってもやりたいというFDA長官の仕事とは、相当魅力的なのでしょう。

全米に支局、海外に駐在員も

FDAはメリーランド州ホワイトオークに本部を置いています。また全米50州に加え、バージン諸島とプエルトリコに223の支局と13の研究所を置いています。さらに、中国、インド、チリ、ベルギー、イギリスなどにもオフィスを構え、それぞれ駐在員を常駐させています。なお、FDAに勤務する労働者数は1万4824人、年間予算は31億6千万ドル(約3412億円)です。

FDAの本部は「ホワイトオーク・キャンパス」と呼ばれ、710エーカー(約86万9164坪)の巨大な敷地に長官執務施設、規制管理局、医薬品評価研究センター、医療機器・電磁気医療機器センター、バイオ医薬品評価研究センター、動物医療センターなどの各種の施設の本部が置かれています。医薬品や医療機器などの審査、承認といったFDAの重要な業務の多くは、ホワイトオーク・キャンパスにおいて行われています。特に規制管理局(The Office of Regulatory Affairs)はFDAの「目と耳」と呼ばれ、食品、化粧品、医薬品などの監視や管理などの業務を行っています。

違反者を取り締まる犯罪捜査局

FDAの中でも特異な存在なのが犯罪捜査局(The Office of Criminal Investigations)です。犯罪捜査局は1991年に設立され、詐欺的商品や誇大表示商品などの取り締まりを行っています。アメリカでは計画的に食品や医薬品などを使った詐欺行為を大規模に行う人や組織が多いためか、FDAの犯罪捜査局はFBI(米国連邦捜査局)やインターポール(国際刑事警察機構)と協力して捜査を行うこともあるそうです。

日本でも偽りの効果効能を謡ったサプリメントを販売したとして逮捕される人が出ますが、アメリカで同様の犯罪行為をすると、この犯罪捜査局にお世話になる可能性が生じます。犯罪捜査局には捜査権や逮捕権があり、犯罪行為をすると実際に逮捕・起訴されます。詐欺罪はアメリカでは重罪ですので、有罪になると相当長期間刑務所から出られなくなるでしょう。

FDAの対象となる製品の総額は2.4兆ドルにも

ところで、FDAによる管理や監視の対象となる製品の総額は、なんと年間2.4兆ドル(約259兆円)にも達するそうです。これは、アメリカの消費支出全体の25%という巨額です。すべてFDAが管理責任を負うのですが、そうした製品の中には、日本から輸入された食品、化粧品、医薬品、医療機器なども、当然のことながら含まれています。

なお、2011年1月に施行された食品安全強化法(Food Safety Modernization Act)により、FDAによる食品製造施設への査察の範囲が、日本を含む外国へ拡大されました。そのため、アメリカへ輸出される食品を製造、加工、梱包、保管する日本の食品管理施設も、FDAによる査察の対象となっています。実際、FDAによる日本の食品管理施設の査察は行われています。

FDAは、自国民の健康を守るために、その組織と活動範囲を海外にも広げているのですが、その傾向は今後さらに強まる可能性が高いでしょう。アメリカで日本の食品、化粧品、医薬品などの販売を計画している企業は、FDAとFDAが定めるルールを知り、着実に順守する必要があります。ルールを無視してトラブルになった場合、大きなペナルティが待っていることを肝に銘じるべきでしょう。

執筆者

前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(北米統括)

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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