ヨーロッパにおけるサステイナビリティについて

ここ数年”サステイナビリティ”がブームとなっています。そもそもサステイナビリティとは日本語では「持続可能性」と訳され、「環境・社会・経済などが将来にわたって適切に維持・保全され、発展できること」をさします。このサステイナビリティについては特にここ数年よく耳にするようになりました。ヨーロッパでは企業の規模を問わずビジネスにおいて切り離せないテーマです。今回はヨーロッパのサステイナビリティについて取り上げたいと思います。

サステイナビリティのブーム化

日本でもサステイナビリティを意識する企業は増えてきていると思いますが、国際連合において、Sustainable Development Gaols(SDGs)が2015年に設定され、2030年までに取り組むべき17のアクションが具体的に定義されたのが大きいのではないでしょうか。17の分野には貧困や性別格差の是正、気候変動への対応などがあります。欧州連合(EU)においては2001年頃から議論がなされており、2005年6月に『持続可能な開発のための指針』が制定されるなど積極的に取り組んでいます。SDGsについても2016年にEUとしての対応指針を明確化し、に性差の解消、若い世代のサポート、持続可能なエネルギー開発、気候変動への対応などを中心に、分野横断的な推進力に重点を置いています。CO2の削減など国ごとに具体的な数値目標を設定して取り組んでいるものもあります。

EUにおけるSDGs目標

EUにおけるSDGs目標

ヨーロッパ企業のサステイナビリティ

筆者は大規模見本市・展示会や現地のスタートアップのセミナーなどによく参加しますが、特に今年はサステイナビリティを取り上げるセミナーが増えているように感じています。特にセミナーでSDGsのロゴを記載して、「(17分野の)具体的にどの分野に取り組んでいます」ということをアピールする企業は増えてきています。またEUが分野横断的な対応を推奨していることもあり、CO2削減を意識したモビリティ関係のサービスやスタートアップが活気付いています。ドイツのルフトハンザドイツ航空の子会社でスタートアップの支援を行う、Lufthansa Innovation Hubも二酸化炭素削減を促進するプラットフォームを立ち上げました。また、ドイツのハンブルクを拠点にするフィンテック銀行のTOMORROWはCO2削減を行うことをミッションとするオンライン銀行です。有料会員に関しては信頼できる発展途上国の気候変動プロジェクトへの投資などを、TOMORROWが代行します。

また、「生分解性プラスチック(バイオプラスチック)」の利用を促進する国や企業も少なくありません。生分解性プラスチックは、「生ゴミ」として野菜の切り屑等と一緒に処分することができるため市民にとっても利便性が高いと考えられます(注:ゴミ処理設備が追いついておらず、生ゴミとして処理できない自治体もあるようです)。大手スーパーマーケットやドラッグストアチェーンにおいてもそういう製品に着目して積極的に店頭に並べようとする動きも見られます。またそれ以外でも一般のドラッグストアや格安スーパーマーケットにおいても、環境に配慮した商品やプラスチックを使わないガラスなどの容器を利用する商品も増え始めています。

さらに、サステイナビリティ=自然というイメージもあるため商品の”色”にも影響があります。白やビビッドな緑などではなく、自然に近いベージュやカーキのようなアースカラーがトレンドになりつつあります。日本の伝統的な習字や焼き物のような伝統についても注目が消費財業界では集まっているようです。特に新型コロナウイルス流行の関係もあり、家にいても自然を感じられるような色合いが好まれるようです。

一般のスーパーやドラッグストアにも環境に配慮した製品が増え始めた

一般のスーパーやドラッグストアにも環境に配慮した製品が増え始めた

消費者のサステイナビリティ意識

ヨーロッパではEU、各国および企業の結びつきが強く、官民が一体となってサステイナビリティを推進しているような印象をもたれがちです。それでは一般消費者の意識はどうでしょうか。これについては人によって大きく差があると言わざるを得ません。実際にヨーロッパでは値段よりも「環境に配慮した製品を購入する」と考える人の割合が増えているそうです。また、「サステイナビリティに関する責任を有する企業」から製品を購入することを重視している人も増えています。しかし、巷にはプラスチックがあふれていますし、日常生活においてもゴミの分別も適切になされているとは思えません。見本市・展示会においても、「サステイナビリティよりも価格重視」で取引先と交渉しようとするヨーロッパ企業も少なくはありません。したがってヨーロッパ企業(人)だから高いサステイナブル意識を持っているとは限りません。全体的にサステイナビリティを意識する企業や人は増えていますが、それがすべてではないというのが正解でしょう。ただ、EUや各国の方針や目標は日本のそれよりもずっと厳しいため、よりサステイナビリティを重視する傾向は続いていくでしょう。

今回はヨーロッパのサステイナビリティについて少しお伝えしました。今後も継続的に各国や企業の取り組みなどをご紹介できればと思います。

ジェイシーズではヨーロッパの現地担当者とともに皆さまのヨーロッパビジネスをお手伝いします。ヨーロッパでビジネスを展開したい場合はぜひご連絡ください。企業様、個人事業主様関係なくご相談に応じます。

執筆者 浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

出典
NTTレゾナント株式会社. goo dictionary 持続可能性の意味. (https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%8C%81%E7%B6%9A%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7/)
United Nations Development Programme. Sustainable Development Goals. (https://www.undp.org/content/undp/en/home/sustainable-development-goals.html#:~:text=The%20Sustainable%20Development%20Goals%20)
Europa.eu. Sustainable development – Environment – European Commission. (https://ec.europa.eu/environment/sustainable-development/)
Lufthansa Group. Lufthansa Innovation Hub launches the “Compensaid” sustainability platform and focuses on CO2 neutral aviation fuels. (https://www.lufthansagroup.com/en/newsroom/media-relations-north-america/news-and-releases/lufthansa-innovation-hub-launches-the-compensaid-sustainability-platform-and-focuses-on-co2-neutral-aviation-fuels.html)
Tomorrow. Mobile banking for a better tomorrow. (https://www.tomorrow.one/)
Messe Frankfurt GmbH and Fashion Snoops Inc. Rethinking the Holiday Season. (2020年7月28日開催)
Statista. Willingness to pay more for green products in Germany 2019. (https://www.statista.com/statistics/504122/willingness-to-pay-more-for-green-products-germany/)

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