まだまだ安心できない新型コロナウイルス(COVID-19) in ヨーロッパ

6月30日、欧州連合(EU)理事会は7月1日以降のEU加盟国以外からのEUへの入域制限緩和について決定しました。これによると、現在の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行状況などを考慮して、日本を含む15か国がEU外からの入域制限解除対象国となります。なお、EU非加盟国のEEA(スイス、ノルウェー、アイスランド)およびイギリスもこれに従います。これで日本からヨーロッパへの渡航の自由が復活すると考えおられる方もいらっしゃるかもしれませんが、時期尚早です。したがって今回は注意点について述べたいと思います。そのなお記載情報は2020年7月2日時点の情報となりますので、最新情報は各国政府機関などが公表している情報をご確認ください。

入域制限の法的拘束力

EU理事会のホームページにもある通り、この制限緩和について法的拘束力はありません。具体的な入国可否については各国の判断に委ねられています。たとえば、オランダについては日本から問題なく入国できるようですが、デンマークは観光目的の渡航については受け入れずに商用の場合は相手方からの招聘状(メールでも可)などの提示が求められます。ドイツやポーランド、チェコなどは日本からの入国については7月1日以降も受け入れない方向です。また、現時点でどのような対応を取るかはっきりと表明していない国もあります。したがって、各国の公的機関が発表した情報をよく確認する必要があります。この入国制限については2週間単位で見直しが行われることが多いですが、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行状況次第では突然変更することも十分考えられます。

入国後の行動制限

各国への入国が認められた場合であっても、入国後に厳しい検疫・自主隔離、行動報告義務などが課される可能性もあります。イギリスやフランスでは原則日本からの入国者については14日間の自主隔離および行動制限が課されています。出張などによる短期渡航で14日間自由が利かないことは現実的ではないでしょう。長期で滞在する場合も、慣れない外国で食事の手配を行うなどといったことは容易ではありません。こういった措置についても、入国制限と同様に国ごとに2週間単位で見直しが行われます。当然のことながら日本の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行状況が悪化した場合、日本からの入国者に対して突然厳しい措置を課す可能性も否定できません。

徐々にではあるが、第三国からの入国が緩和されるヨーロッパ
徐々にではあるが、第三国からの入国が緩和されるヨーロッパ

航空会社の対応

相手国が日本からの受け入れを許可した場合であっても、航空会社から搭乗拒否されるかもしれないという意外な盲点があります。新型コロナウイルス(COVID-19)が流行した直後の話ですが、ヨーロッパ人の配偶者および長期滞在許可を有している現地在住の日本人が、日本からヨーロッパに戻ろうとした際に航空会社から搭乗を拒否されたというケースがあります。新型コロナウイルス(COVID-19)流行に伴う国境閉鎖後においても、ヨーロッパの多くの国々は長期滞在許可を有する非自国民や非EU市民の入国を認めています。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)流行如何に関わらず、上陸拒否された人を出発地へ送り返すのは航空会社の責任であるため、各航空会社もかなり神経質になっているようです。
また、各国が不要不急の渡航自粛を呼びかけていることもあり、フライトのキャンセルも相次いでいます。日本-ヨーロッパ間のような長距離便の欠航は比較的早めに決まることが多いですが、もしヨーロッパ内で乗り継ぎをする場合は数日前などの直前に決まることもあります。日本へ帰国しようとしていたヨーロッパの駐在員の方が、乗り継ぎ便がキャンセルされたため何度も帰国日程の変更を余儀なくされたという話もあります。

ヨーロッパの多くの企業では在宅勤務が続く
ヨーロッパの多くの企業では在宅勤務が続く

日本帰国後の行動制限

欧州各国以上に海外からの入国者に対して厳しい行動制限を課しているのが、日本です。14日間の自主隔離などが求められていますが、滞在先への公共交通機関やタクシーなどの利用も認められていません。そのため、家族などに自家用車で迎えにきてもらうもしくはレンタカーを借りて滞在先まで移動する必要があります。また、それが難しい人は、自費で空港近くのホテルなどに滞在することが求められます。

上記のことを勘案すると、現在日本からヨーロッパをはじめとした海外に出張することは現実な選択肢ではないでしょう。ヨーロッパの企業は緩和措置後も原則在宅勤務で、極力外部との接触を避けようとする傾向はあります。仮に渡航したとしても相手方との対面での面談は難しいかもしれません。また、現地で急激な感染拡大が突然発生するかもしれません。現時点においては、まずはご自身および従業員の方の安全確保を最優先に、遠隔で進められるビジネスは遠隔で進め、現地に行かなければいけないものについては渡航後に迅速に対応できるような準備を進めていくことが重要なのではないでしょうか。

執筆者

浜田真梨子(はまだ・まりこ)

執行役員
シニアマーケティングコンサルタント(欧州統括)

大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

当社は、海外事業展開をサポートするプロフェッショナルチームです。
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