【2023年度版】アメリカの労働者が次の職場に求める6つのモノとは?

アメリカの市場調査会社のギャラップが、アメリカの労働者が次の職場に求める6つのモノ という記事を報じています。コロナのパンデミックが収束の兆しを見せ始め、アメリカ全体がプレコロナの状況に戻りつつある中、現在転職を考えているアメリカの労働者は、新しい職場に一体何を求めているのでしょうか。

1. 給与およびベネフィットの大幅な増額

転職検討中のアメリカの労働者が次の職場に求める最大のモノが、給与およびベネフィットの大幅な増額です。ギャラップによると、給与およびベネフィットの大幅な増額は、これまでに行ってきた多くの調査で特に「非常に重要」だったそうです。2015年の調査では41%が非常に重要であると答えた一方、今年2022年の調査では64%が非常に重要であると答えています。

進行するインフレと慢性化する人材不足の影響なども相まって、アメリカの労働者市場における賃金相場が上昇傾向にあることなども関係しているようです。特に優秀な人材を採用するためには、相応の額と内容を提示する必要がありそうです。

2. より良いワークライフバランスとウェルビーイング

より良いワークライフバランスとウェルビーイングが非常に重要であると答えた人の割合は、2015年では53%だった一方、今年2022年度の調査では61%に上昇しています。特に長時間労働をするハードワーカーにおいてバーンアウトする「燃え尽き症候群」を感じる労働者が少なくないようです。

イーロン・マスク氏が、買収したTwitter社の社員に週100時間仕事するよう鼓舞したところ、多くの人の反発を食らっていましたが、実際に適切なワークライフバランスとウェルビーイングを求める労働者は多いようです。

3. 自分の能力を活かせる環境

自分の強みやスキルを認識し、それらを活かせる環境が非常に重要であると調査対象者の58%が答えています。特に専門性が高く、代替手段が少ないスキルや知見、ノウハウを持つ労働者が、自分の能力を活かせる環境が重要と考える傾向にあるようです。同時に、今現在自分の能力を活かせる環境にいないと判断されてしまうと、新たな仕事場を探すきっかけになってしまうようです。一方、人材を確保する側にすれば、求めるタレントが十分に能力を発揮できる環境をしっかりと整えることが必要条件になるでしょう。

4. 職場の安定性

調査対象者の53%が、次の職場の安定性が現在の職場のものより良くなることを求めています。職場の安定性の定義は業界や業種などにより千差万別ですが、一般的には給与やベネフィットが約束通り支払われ、さらに解雇などのリスクが少ないことが職場の安定性につながると見られます。特にコロナのパンデミックにより労働環境が激変し、収入減や失業などの困難を体験した労働者にとっては、職場の安定性は非常に大きなファクターになるでしょう。

GAFAM(Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoft)などのIT企業を中心に従業員をレイオフする機運が高まってきており、アメリカの労働者市場全体に少なからぬ影響を与え始めてきているようですが、そうしたトレンドが進む中で、職場の安定性をオファーできれば、タレント採用の可能性を広げることができるかもしれません。

5. 新型コロナウィルスワクチン接種の提供

アメリカにおいては新型コロナウィルスワクチン接種については賛否両論あり、少なくとも民間企業においては、従業員に対して新型コロナウィルスワクチンの接種を義務化していません。しかし、2021年12月時点においては、全労働者の36%が公的機関などのワクチン接種が義務化されている職場で仕事をしており、また同時点のワクチン非接種者の割合は全労働者の25%となっています。

今回のギャラップの調査でも、調査対象者の43%が次の職場でワクチン接種が提供されることを望むと回答しています。ワクチン接種の判断は労働者本人に任せるにしても、ワクチン接種が受けられる環境は用意する必要がありそうです。

6. ダイバースでインクルーシブな組織

今や日本においてもダイバース(Diverse, 多様性)とインクルーシブ(Inclusive, 包摂性)が、企業のヒューマンリソースの現場におけるトレンディワードとして使われ始めています。性別、年齢、人種、国籍、宗教、LGBTQなどを越えた、多用な人材を温かく受け入れる組織というイメージです。

日本よりもはるかにダイバースとインクルーシブが進んでいると思われるアメリカですが、ギャラップの調査対象者の42%がダイバースでインクルーシブな組織が「非常に重要」であると答えています。逆に言うと、42%もの労働者が、現在の職場が「ダイバースでインクルーシブではない」または「ダイバースでインクルーシブの程度が十分ではない」と考えている可能性があります。

アメリカのような人種のるつぼの国ですらこのような状態ですから、現在のアメリカにおいて優秀なタレントを採用する上では、ダイバースとインクルーシブの重要性を十分に理解しておく必要がありそうです。

執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)

上席執行役員、北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアなどで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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